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12匹目 地響きとともに現れたるは

 ニックネーム決めは埒が明かなかったので、保留の一言でひとまず済ませた。保留という名の試行なのですよ、ふっふっふ。色々言ってみて、しっくりくるのを定着させようかと。


 何はともあれ、一歩は進んだ訳だ。今後ともよろしくお願いします。

 ランドキングビーさんの鉤爪の鋭くない部位を、両手で握って上下に振る。



「グルル」



 え?何をしているかって?これは握手と言って、私の種族では友愛や好意を表したりする動作なんだよ。挨拶や約束事の場にも使われたりするよ。

 そう説明すると、ランドキングビーさんは繋がっている部分を凝視していた。あれっ?ひょっとして、握手が嫌だったのかな。ゴルゴ1〇か。まぁ、嫌なら振り払うなりするよね。

 調子に乗ってぶんぶん腕を振り回す私を、ランドキングビーさんは咎めない。鉤爪を捕まえさせてくれている上、されるがままになってくれているのは、それだけ私に心を許してくれてるんだと解釈してもいいんだろうか。

 …えへへ。そうだったらいいのにな。

 仲良し計画もこの調子でトントン拍子に進んでいきたいもんだ────。



 ズドドドドドドドド…。



 遠くから少しずつ近づいてくる地響きに、私とランドキングビーさんの動きが止まった。正確にはランドキングビーさんの方が少し早かったけども。



 ズドドドドドドドド…。


 何かが近付いている、のは私でも分かるぞ。

 それも複数、いや、これは大群なんじゃなかろうか。

 どうしようかとランドキングビーさんを窺うと、盛んに頭部を回らせ、辺りの様子を捉えようとしていた。警戒しているんだろう、切迫した空気が伝わってくる。そして目が合うと、私の腕を引き、視界が追い付かないスピードで跳ねて空中に上がる。あまりのスピードに頭の中身が揺さ振られ、くらりと眩暈がして、意識が飛びそうになった。

 な、なんて早さなの…!そりゃトップクラスだとは聞いてたけど、ジェットコースターなんて目じゃない速度だったぞ!

 力が入らず、ランドキングビーさんにぐったり身体を委ねる。…あれ?鉤爪痛くない。代わりに腹部の圧迫感がある。───肩に担がれて飛んでいるじゃないですか。

 えー、ただいま推定高度5、6メートル。

 私が鉤爪を痛がってたことを理解してくれた…というより、偶然なのかな。どちらにせよ、ありがたや、ありがたや。

 南無南無と拝んでいたらランドキングビーさんから冷静な視線が流されて、授業中先生に内職(別授業の課題)を見つかった時みたいに、居たたまれない気分になった。ご、ごめんなさい。

 すかさず手を下ろして、地表の方へ目を向ける。地響きは既に目前から聞こえていた。かなりの移動速度である。



 ズドドドドドドドド!



 ────あれは…?

 地面を埋め尽くす赤。獣の大群のようだ。背中しか見えないため細かく言えないが、見た目は赤くて固そうな皮膚のサイで、首まわりにライオンのような(たてがみ)があり、大変派手ななりをしている。鼻の先に象牙色の角があるのと無いのがいるんだけど、雌雄の差なのかな。



「グルルル」



「おおっ、『ホットライノーセラス』!カッコいい名前だなぁ!ビースト系なの?」



「グル…グルルルルル」



「ほうほう、なるほどなるほど」



 地響きの正体はホットライノーセラスさんの大群でした。ビースト系で、群をなすモンスターなんだそうです。体温が日射のように高く、赤皮に赤い鬣が特徴らしい。

 そう言われてみれば徐々に蒸し暑さが増して、森がサウナ状態になってきましたよ。すごい体温だな、このモンスター。



「………グルル…」



 おや、本来はこのような緑土の森に居ないモンスターなの?火山地帯や乾燥地帯…ってこの大陸は火山まであるのか。地殻運動があるとなると、その他にも地球と重なる部分が多く見つかりそうだな。にわか知識が役にたつ日はくるのだろうか。

 眼の間に皺を寄せ、難しい顔をして考え込むランドキングビーさん。初めて表情らしい表情を見れた気がして嬉しくなるが、ここはからかったりせず、手をウチワ代用にして送風送風。私考えるの苦手だし、モンスターのことみたいなので任せます。頼りにしてますよ、旦那。




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