11匹目 仲良し第一歩
────ふぅ。泣いたらスッキリしたのなんの。晴れやかな気持ちです。
よっしゃー!私復活!
気持ちよく伸びをする私に反して、ランドキングビーさんは胡坐をかきながら疲れたように項垂れている。フハハハハ、いい気味だぜ。
手綱が離されている。今のうちにトイレ済ませておこうと、こそっと木陰に隠れた。ごそごそ。えーーーと、拭くもの拭くもの、っと……この包帯代わりの糸でいっか。ちょっとしか血は付いてないし、他に拭けそうな草とかないしね。本音を言えばここで手を洗いたいところだけど、贅沢言ってられない。などと自分に言い訳しながら適当に処理を終え、ランドキングビーさんの所へ戻る。
ありゃりゃ、まだ項垂れてるよ。ちょっと…いじめすぎちゃったのかな。
失念してしまっていたけど、ランドキングビーさんにも世の理だとか常識とか考えがきちんとあって、その中で今まで生きてきたんだよね。
私と同じように、ランドキングビーさんも私との距離を測りかねているんだろうか。対応に困って、手探りしたりしているんだろうか。
………だとしたら、ああ、私ったらホントにバカだよなぁ。独り相撲してて。相手も同じなのに、なんでこんな簡単なこと見落としてたんだろう。
「…ランドキングビーさん」
そうだなぁ、難しいことはよく分からないけど。種族が違うからという理由で、歩み寄って、理解し合うことが悪いことだとは思わないよ。
だから、頭がよくないくせに、ああだのこうだの余計な事考えて雁字搦めになるんじゃなくて───もういっそ、仲良くなっちまえばいいんだよ。それで何か不都合があったら、その時考えりゃいいじゃない。それが一番私らしい。
「ランドキングビーさん」
二度目に声を大きくしたら、やっと頭部を上げてくれた。複眼に私の笑顔が映る。プププ、泣いたあとは目蓋が腫れて放送事故もんだな、こりゃ。お岩さんだお岩さん。
「ニックネームを付け合おうよ!」
で、作戦名はそのまま「友情育み大作戦」!とでもしましょうか。
仲良くなるには、意外とニックネームって便利だよね。一気に親しみやすくなるし。
さあ何にしようかなと腕を組みながら考えていると、ランドキングビーさんから唸り声が。
「…グルルル」
……わからないとな。人間社会特有のものなんだろうかねぇ。うん、じゃあ「ニックネームとは何か」から始めようか。
薄暗い森の中、苔の座布団の上に私とランドキングビーさんは座って相対す。
ニックネームとは〜、かくがくしかじか。割愛しますが、ランドキングビーさんったら真面目に聞いてくれるから、話し甲斐があるってもんよ。
………何やってんだよお前ら、というツッコミは無しの方向でお願いします。
■
「ホーネット、ドローン、キラー・ビー、ハニー、クラウン、ゴールド、イエロー、鎌…鎌ってなんて言うんだっけ?シザー?ランドキングビーさんの外見で連想されるのはこれくらいかなぁ」
「グル?」
「うーん…私的には可愛い系でいきたいなぁ。ホーちゃんとか、ネットちゃんとか、ビーちゃんとか、ランちゃんとか」
「グルルル」
「もっと威厳のある…って難しい注文だなぁ。ちゃん付けはダメ?」
「グルル」
「論外だ。真面目にやれ」と。真面目にやってこれなんだけどなぁ、どうすりゃいいのクスン。
わたしは花子の「ハナ」で割とすぐ決まったんだけど、ランドキングビーの旦那がよ、なかなか決まらないんだなコレが。愛称に威厳なんているのかよ。
「王さん」
「グル」
「………………」
案を数々出してみたけどどれも怒ってはないようだから、もう色々好きに呼ぼうと思うよ。うん。




