9匹目 ランドキングビーさんとピーちゃんの類似点
結局分からなかったので、素直に分からないことを伝えたら、ランドキングビーさんは言葉を返さず、諦めたように触覚をショボンと垂れ下がらせた。
……!!す、すいません!自分ってばちょっと可愛いなんて思ってしまいました、親分!!
鉤爪から実を手のひらに落とされた。ようやく食べる権利が与えられたようです。ニコニコしながら感謝を言う。
「ありがとう、ランドキングビーさん!」
そしたら何故か、ランドキングビーさんは固まった。
どうしたんだろうかとモグモグ食べながら心配していると、いきなり目にも止まらぬ早さで飛び立ち、枝を刈り取りだして、勢い落とさずガリガリガリガリと皮も削って───今度はとても食べきれない量の実の山をドッサリ渡されたのだった。胸を張って誇らしげに、「グルルル」もっと食えと。
??????
もう、何がなんだか。 ともかく礼を言って、これを食べれるだけ腹に詰めておこうと、私は腕まくりをして奮い立った。
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ふーーっ。お腹いっぱい大満足、幸せです。甘酸っぱくて大変美味だった。笑顔になりっぱなし。
「グルルル」
「え?ありがとうございます。でも、もうお腹いっぱいです。十分ですよ、へへへ。ごちそうさまでした、ランドキングビーさん」
───そう言ったはずなのに。
ランドキングビーさんはその言葉を無視して、新たに別の木の実を山ほど持ってくるではありませんか。慌てて私はもう食べきれないんだと訴えながら首を横に振るが、ランドキングビーさんはまた無視して、木の実を持ってくる。
これは、デジャブだ。
ピーちゃん。私はランドキングビーさんに、飼い犬のピーちゃんの面影を見た。
ピーちゃんとは、私が生まれた年から我が家で飼っていたプードル犬。ついでに、二年前に天寿を全うした。
ピーちゃんは拾い物が好きで、何でも家のなかの落とし物を拾って家族に渡してきた。
いつだったか、私が無くして困ってたものを偶然渡されたことがある。その時私は嬉しくて嬉しくて、ピーちゃんを毛がぐしゃぐしゃになるくらい滅茶苦茶に撫で回して、そりゃあもうべた褒めしまくった。ピーちゃんも大層嬉しそうで、尻尾はタービンのような勢いだった。
それからというもの、ピーちゃんの拾い物は私に渡され続けるようになってしまったのだ。
もっと褒めろ褒めろと、尻尾が千切れるんじゃないかってくらいブンブン振り回しながら、何度も拾い物を渡してきたピーちゃん。───そして、ランドキングビーさんの行動。
褒めてはないけど、ありがとうは言ったよね。うーん。もしかして、ありがとうが嬉しかったからだとか、気分が良かったから…?
犬とは違うんだと分かってはいるよ。けれど───鉤爪の滑らかな曲線部で頬をツンツンいじられている、今のこの状況。ツンツンツンツン。そんなにツンツンされても、何も面白い返しはできませんよ、私。
そういえば感謝の言葉に笑顔のバーゲンセールだったなぁ、と振り返ってみる訳ですよ。笑ったことと、何か繋がりがありそうだとは思いませぬか。
…………だとしたらこのモンスターは私が思っている以上に感情豊かで、可愛いのかもしれないなぁと、胸がくすぐったくなった。へへへ。
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えー、ほのぼのした雰囲気はどこへやら……いや、そもそもほのぼのしていたのか疑問ではありますが。
何がランドキングビーさんを突き動かしているのか、突如としてただいま私、糸のハーネスを付けられ、散歩をさせて頂いております。やっぱり糸は使えたよ。口からシューって出してた。
さて、と。森の様子でもお伝えしてみましょうかな。
色の濃い緑の葉が密集して上の方にぶわっと広がっているから、まるで緑の空を見てるようです。
さっきの果実とは違う果実が木々にあるけれど、木自体は同じ種なのか、非常によく似たものが集まっている。一見、異様に葉の多いヤシ。でもヤシのように繊維の付いた幹でありながら、杉やヒノキのように直線的で、葉のつき方がまさに広葉樹のそれ。そして、かなりの高さがある。10メートルはあるんじゃなかろうか。
異常とも言える葉の多さと幹の長さで地面にはあまり光が届かず、森は全体的に薄暗くなっている。
だからか地面は背のある草がなく、苔ばかりの平地だ。
杉・ヒノキとヤシが交配して新種ができるようなことになったら、こんな木になるのかなぁ。亜熱帯とも温帯ともつかない、不思議な景色です。
この一つ一つもモンスターなのかな?と思って木に話し掛けてみたら、それを見ていたランドキングビーさんに鼻で笑われてしまった。どうやら植物とプラント系は別のものなのだそうで。
プラント系は植物に擬態した動物だという認識で合ってるんだろうか。でも動物は自分で養分を作ったりしないし…………ああ、動植物か!
そういや中学生のときの理科で微生物を習ったなぁ、ミドリムシとか。