人を傷つける為だけに存在するモノ
少女は自分の出自など知らなかったし、知った所でなにも変わらないから興味も無かった。
少女は幼い頃に、ある宗教の神子として選ばれ、それに従い他人と自分の願いや、それに見合う対価を捧げてきた。
対価は人の不幸で、それは全て自分以外だと決まっている。
自分は神子なのだから、対価になることはない・対価などにしてはいけないと、特別意識を持ちながら大きくなった。
大きくなるにつれて、このクロツチ信仰という神頼みが、【願いには対価を要求すること】、【願いだけを叶える・対価だけを捧げることができること】、【願いは他人と重ならないこと】、【神子は自分の他に何人かいること】を知り、何かの仕組みに近いなと感じた。
それでも、願いを叶えるという魔法を自分が使えることに、腕力が無くとも頭脳が無くとも、大人と対等以上に渡り合えることが、誇らしかった。
少女は芸能人になりたかった。
ただ見えているだけの上辺に憧れ、華やかなステージで持て囃されたかった。
どんな生贄を捧げてでも。
しかし、【芸能人になりたい】この願いを叶えた者が生きている間は、同じ願いは受け付けられなかった。
少女は高校で出会った先生と、一緒になりたかった。
若くてみんなから人気のある先生という、誰でも憧れるような男性から愛されたかった。
どんな生贄を捧げてでも。
しかし、【男から愛されたい】という、一度叶えた願いは、願いをかけた相手が生きている間は受け付けられなかった。
そして、願いをかけた相手には、もう追加の願いをかけることも受け付けられなかった。
少女は大人の女性になり、時を経て、今ではオバさんになった。
昔、大人になった彼女は、年を取ることをヤメたかった。
自分の家族を捧げてでも。
しかし、【死にたくない】という願いを叶えた彼女にとって、同義の願いは受け付けられなかった。
大きなお願い・魅力的なお願いは、何も残っていなかった。
(私に何が出来るんだろう?)
大金持ちになることも叶わず、出来ることを職にして生きた。
美人になることも、尊敬を集めることも叶わず、占いや旦那の月給を頼りに生きている。
イライラをそこら中にぶつけても、やましさなんて微塵も持たずに年を取ってきた。
責任は全て信仰に負わせ、対価は人に負わせた。
全ての対価は、家族でも他人でも好きに選んできた。自分でなければ、どうでも良かった。
悪意をバラまくために選ばれた少女も年を取り、地方都市で小さくそれなりに生きてきて、人生の終末期を迎えようとしている。
しかし、もう飽きた。
何度、叶えようと捧げようと満たされない。
それに、それに、このつまらん輪廻にも飽き飽きしている。
あぁ、飽きたんだ。
こんなに好き勝手に人を傷つけることに・・・
ーーーソイツらはクロツチさまが始まって、早い方の神子だった。【年を取りたくない】【生贄に選ばれても生きていたい】これを叶えたことにより、それ以降の神子はこの願いが永遠に叶わなくなった。
この神子あたりから、自由にならぬ願いに業を煮やすのか、悪意を持ったモノたちが増えていったと思われる。
しかし、一応の対価としてなのか、1人は死ぬたびにアタマが悪くなり、1人は死ぬたびに世間から注目されなくなった。
===ボクは今の神子の孫に生まれ変わったけど、今の神子も悪い方の神子だから、孫のボクを生贄にした!そんなことある?
でも、神子は神子に手を出せないのは、長い歴史で出来たルールだ。いや、はずだ。
だから、じゃないけどボクは今の神子に手を出せない。いや、おばあちゃんだしね。
まあ、僕が色々と願いを叶えて生きているから、後の神子に迷惑を掛けているんだけど・・・でも、確かもう1人いるんだよ、僕と今の神子ともう1人。僕より前の神子。ミコ?
僕だってたまには人の穢れ?とか魂とか?を奪ってクロさまに捧げてるんだ。
別に魂なんて無くても生きていられるし。
あ、ボクも無いよ。
それで、僕のことをバカって言うヤツは許さない(キリッ)
いや、おばあちゃんの事じゃないよ?
あーあぁ〜、それにしても、ボクってずっとこうなのかなあ・・そろそろ飽きたんだけど・・・
ちゃんと【飽きたらヤメます】ってお願いしとけば良かったなあ・・・
あーあぁ・・・
人を傷つけるのも飽きたなあ・・・
︙︙︙今回もあの男神子と女神子が、ヤイのヤイのと周りを巻き込んで、クロツチに穢れを運び込んでは取り出してをやっている。
実際、あのクロツチに関係して輪廻しているのは、私を含めた神子たちと、あの村で暮らして信仰に生きた50人程度だ。
その50人が穢れを生み出し対価となりを繰り返しながら、延々と我々とクロツチは共存共栄を続けている。
手札の数は決まっているんだから、クロツチのエネルギーが増長するにも縮小するにも、だいたいの限度は決まっている。
あのバカ2人は、何でそれが分からないんだろう?いつまでも膨らんだり、萎んだりするとでも思ってるのだろうか?
それならドコまで膨れるか・萎むか試しにヤッてみればいいのに、そんなオモシロさも持ち合わせていない。
もう、何回こんな輪廻を繰り返すんだろう。
まあ、いつも高みから見下ろして嘲る位置にいて、そんなに悪くはないけれど、私もいい加減に同じことの繰り返しに飽きている。
傷つけ合うのを見ることも、それを見ながら嘲り笑うのも、もう飽きた・・・




