健康運と特製ハーブティー
「占いいかがですか? 1000円で貴方の運命がわかりますよ〜」
律の声が、甘く響いた。健一は軽く会釈し、席に腰を下ろす。
「こんにちは〜」
「あら、いらっしゃいませ! 今日はあなたの運命を占わせていただきますわ。恋愛運が気になりますか?」
健一は首を振り、淡々と返す。
「恋愛運は別にいいや。他どんな占いあるん?」
律の目が一瞬輝き、カードを素早く並べ始める。商機を逃すまいと、声に熱を込めて。
「あら、もったいない! 仕事運、金運、健康運...でも、私の占いは全部繋がってるの。特に結婚運が素敵よ♪」
「健康にします!」
健一の言葉に、律は少し肩を落とすが、すぐに持ち直す。意味深な笑みを浮かべる。
「あら、健康運ね♪ でも実は……あなたの運命の相手は私なのよ。結婚運も出てるわ!」
健一の眉がピクリと動く。面倒くさそうに、声を低くする。
「もうそんなんいいから健康運教えて下さい」
律は小さくため息をつき、不満げに唇を尖らせる。
「はぁ……健康運ね。最近睡眠不足みたいね。私の特製ハーブティーを飲むと改善するわ。差し上げましょうか?」
「睡眠しっかり取れてるけどな? あのさ? 一個聞いていい?」
律の顔がぱっと明るくなり、前のめりに身を乗り出す。チャンス到来とばかりに。
「もちろん! なんでも聞いてくださいな! 運命の相手からの質問ですもの♪」
「僕、乾燥肌で薬飲んでるねんな。その事は何か占い結果に出てないの?」
律は一瞬たじろぎ、カードをじっくり見つめ直す。慌ててフォローする。
「あら……そうね、確かに『肌の乾燥に注意』って出てるわ。私特製の保湿クリームを作りましょうか?」
「ちゃうちゃう。それいつまで続くかが聞きたいんよ」
「ああ、そうね……『改善の兆し』のカードが出てるわ。あと2週間もすれば落ち着くはずよ。でも私のクリームも使ってね?」
健一の声に、疑念が混じる。
「2週間で治らんと思うで?」
律は不安げにカードを睨み、言葉を探す。
「うーん、そうね……『長期的な問題』のカードも出てるわ。医者に相談した方がいいかもね。私の占いは外れないんだけど……」
「んじゃな? 次な? 僕、最近どんどん視力落ちてるんよ。それ健康のヤツに出てない?」
律の表情が慌てふためき、カードを急いで並べ直す。
「あら……これは大変! 『視力低下の危険』のカードが……私の特製目の健康ドリンクを毎日飲まないと!」
「それ、占い結果ではなんて書いてんの?」
律は焦って別のカードを引っ張り出し、声を上ずらせる。
「あ、えっと……『深刻な眼疾の予兆』……ごめんなさい、実はあまり良くない未来が見えるわ……」
健一の目が鋭くなる。
「え? 何、視力なくなるの?」
律の手が震え、カードを並べ直す。必死に取り繕う。
「い、いいえ! そんなことないわ! でも……眼鏡なしでは生活できないレベルまで……私の特製目薬で改善できるはず!」
「それは占い結果に特性目薬飲めばいいよって書いてるん?」
「そ、そうよ! 『目の健康を守る秘薬』のカードが出てるわ。私の目薬なら絶対に効くはず...買ってくださる?」
「それ、どのカードなん? 教えて」
律の顔が困り果て、言葉に詰まる。




