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舞白の糾弾

地球温暖化による熱波が続いた酷暑の夏をやっと追いやり迎えた今年の冬は冬で寒さ厳しく年越しを過ぎた頃から冷え込みは一段と増してきた。


今日から新宿で新しい派遣の仕事が始まる。舞白は、いつもよりちょっぴり時給の良いこの仕事に期待していた。大量募集で一緒に始める仲間に会えることにもワクワクしていた。

ビル街の一角にある建物の11階のオフィスは綺麗で整然としていた。大きく息を吸い込み次の仕事への意欲が湧いてくる。


大勢の仲間たち、研修が始まると、思わず周りを見回した。舞白は生来、生真面目な性格で研修にも高い理想を持って臨んだ。

集中、集中と自分に言い聞かせ講師の一言一句も聞き漏らさないよう注意を怠らず、ノートはびっしりと書き込まれている。


舞白が周りを見回した時、異様な光景に気を取られてしまった。皆が研修に意欲的に参加している中、一人の年上らしき女性が眠気と戦っていた。いや、戦っているといより、寝ていた。眠っていた。

「みんな同じ時給なのにあの人許せない。」

舞白は全くやる気のなさ気なその女性に腹が立って仕方がなかった。


研修が終わり、仕事本番、その女性は何故か仕事をやっていた。研修中ほとんど寝ていたのに何故できるの?誰かにノートを見せてもらったの?マニュアルだけでできるの?

しかしその女性の仕事はかなりのスローペースで、一日に1件ほどしかしてないんじゃない?SVをよく呼んでいるが、SVはなぜかこの人にいつも優しく対応している。「やっぱりこの人、不公平、ズルい。」


舞白は怒りに震えていたが、そこは舞白ももう大人で様々な仕事の経験があったので、ここはひとまず自分の仕事に集中することで、問題は後回しにすることにした。

だが、仕事をしながら、ふと、あるこの女性への対策を思いついた。

「まずは友だちになってみよう。」


休憩時間に、舞白は得意の明るい笑顔をその女性、穂乃果に向け、話しかけた。穂乃果は年上だというのに、自分の声かけがとても嬉しかった様子で、無邪気にお礼を言って名乗った。舞白は「お昼はどうしてるの?」一緒にどうかと誘うとまた嬉しそう。

私たちはすぐに友だちになり、連絡先の交換をし、期間限定のその仕事が終わった日にはもう一人の友だち、美月と三人で打ち上げをした。


打ち上げの日、舞白は普段からヘアースタイルにはこだわっていて美容院通いには手を抜くことがなく、その日もパーマをかけたばかりだった。舞白は小柄ではあるが名前の通り色白で肌が透けるように綺麗で話も上手なので、友だちはたくさんいた。

その打ち上げの帰り、三人は少しお酒が入っていて穂乃果は酔っていたのかもしれない、だが、舞白にとってはとても信じ難い言動をしたのだった。

「舞白さん、可愛い!」と叫び、通りの真ん中で万歳をした。

なんともおぞましいその様子に目を覆いたくなった。

思わず口から出た言葉、「やめてよ。」

舞白にとっては絶対許せない人である。皆と同じお給料で怠け倒したズルい人である。そんな人に可愛いと叫ばれたことがとても不快であった。同性ではあったがセクハラのように感じた。


その後、舞白は穂乃果とライン交換を続け、穂乃果が勤め始めた他の仕事を聞いて、その仕事に応募した。

そこは、門前仲町にある事務センター。

穂乃果は、舞白とまた同僚になれたことに、また喜びを隠せないようだった。

そして、舞白の穂乃果対策がこの時からいよいよ始まる。

「舞白さん、また一緒でよかった。」と懐いてくる穂乃果に、舞白は、「美容院はどこへ行ってるの?」

穂乃果は自分の住む街の美容院の名前をすぐ

に言った。「どのくらいの間隔で行ってる?」

「美容院は間隔空かないように気を付けたほうがいいよ。」

穂乃果は、お金がないからあまり頻繁には行けないと言ったが、舞白は追い打ちをかけるように「行ったほうがいいよ。行くべきだよ。」

舞白は思っていた。散々給料泥棒してきたお金を何に使ってお金がないのよ。私の思うように使わせてやる。


そして、穂乃果はなんだかんだ言いながらも、言う通りにした。美容院に行く日をラインしてきたりした。

舞白は、自分もその美容院に行くことにした。そして、行く日を穂乃果に教えた。

その日、穂乃果から電話があった。近くだからランチでもするかと。

忌々しい思いを隠し承諾したが、まだまだ罰が足りないという思いだった。

ランチを終えて、舞白は言った。「本屋さんはあるかな。本が買いたいんだけど。」

近くにあるよという返事で、早速、本を買いに本屋へ行く。穂乃果に「本は買わないの?」と言ってみる。「本は図書館で借りるからいい。」だが、舞白は引き下がらず、「本は買わないの?」「本は買わないの?」を繰り返す。

穂乃果はかなり抵抗していたが、とうとう面倒くさくなったらしく、1冊本を買った。

やった!と、舞白は祝杯を上げたい気分だったが、いや、しかし、まだ足りない。。


やがて、穂乃果はその事務センターを更新の期限が満了になる前に、自ら辞めていった。

「ああ、せいせいした。」と思っていたのも束の間、三ヶ月後、また穂乃果が現れたのだ。

その時には、舞白はもう我慢の限界だった。

穂乃果が入ってきた初日に、思いのたけをぶちまけた。

「よく戻ってこれたもんだね。みんな怒ってるよ。自分から辞めたのにまた戻ってくるなん自分勝手過ぎだよね。」

穂乃果は、悲しそうに、だが、低姿勢を作り

「舞白さんのように仕事ができて若くて他にいくらでも仕事ある人はいいけど、私にはもう他に行くところがないの。許してほしい。」

もう、職場で出会っても、会話をかわすことはなくなった。


他に行くところがないと言っていた穂乃果だが、その後2か月もしないうちにまた自己都合退職をした。


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