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「さっさと消えろよ」


 明確な敵意を持った男の声が店内に響いた。


「あんただよ、あんた。自分でも分かってんだろ」


 敵意の先が自分である事に気付いたのは二言目が放たれてからだった。


「そうだ。あんたしかいねぇだろ」


 顔を向けるとビール瓶をぐいっと煽る五十代から六十代ぐらいの男がいた。鋭い視線をこちらに向けていたかと思うと、男は自分の隣に無遠慮に腰掛けてきた。

 勘弁してくれ。こんな僻地で飯屋が見つからずたまたま入った居酒屋ですら面倒に巻き込まれるのか。


「一発で分かるよ。あんたがどんな目にあってきたのか。全部うまくいかねぇんだろ。変な廃墟に行ってから」

「え」


 思わず声が漏れた。男から出た言葉はまるで予想もしていなかったものだったが、私が何よりも期待していたものだった。

  

「どうして……」

「分かるのかって? 分からない奴の方がおかしいだろ」


 そこで初めて男が笑った。憂うような憐れむような、少なからず私の苦しみを理解したような切なげな表情だった。


「姉ちゃん。ちょっとだけ時間くれるか」


 男の視線が一瞬だけ上がり、またすぐに戻った。

 

「あんた、ずいぶん苦労してきたな」


 ようやく本当の理解者が現れたかもしれない。

 私の目からは自然と涙が零れ落ちた。


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