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ファンタジー世界で銃器を出す場合の問題点

まず定義を。言葉、単語の定義をきちんとしておかなければ思考がすれ違うことはよくあることだから。


ファンタジーとはまあこの界隈でよく見る、一般的な剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーとする。まあ異世界ものと言っていい。その世界がたとえ何故かゲーム的なステータスが表示されレベルの概念があるものでも。


銃器は、銃器である。ここに定義のぶれはあまりないだろう。その中でも火縄銃以前のものは除くとする。すなわち、施条銃(ライフル)以降の銃、特に機関銃(マシンガン)のこととする。

理由は火縄銃自体は中世ファンタジー世界でも十分に有り得る科学技術の産物だから。中世に生まれたものだから剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーにあってもおかしくはない。実際剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーの古いゲームシステムにでも銃器がルール化されていることもある。


また現実 (というか写実的なもの)に於ける銃の威力とフィクション(特にゲーム)に於ける表現の違いを認識しておいたほうがいいだろう。

例えばだいたいのゲームにおいて銃で撃たれたらHPが減るだけである。そしてそのHPも安易な方法で完治することが出来る。しかし現実では当たりどころによっては即死し、死ななくても当たった部位は動かすこともできなくなるレベルである。しかも弾丸が貫通していればいいが体内に残ってしまうといろいろとやっかいだ。

こういった面を考えてもファンタジーで銃器を出すのはリスクが大きいというのが分かると思う。全てが単純化されたゲームでのみ、許される表現であるとも言えると思う。小説やアニメ、映画でゲームと同じ表現をすると違和感を感じることになるだろう。



さて。


いちいち説明していると(すでにそうなっているかもしれないが)膨大でつまらない文章となってしまうので、発生する問題点を箇条書きにしていこうと思う。


1-0

 その銃は誰でも使えるレベルで普及しているものなのだろうか? もし誰でも何処でも手に入れことができるレベルであるなら、その作品はもはや剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーとは言えなくなり、定義外となる。


 1-1

  銃器を持つ軍人と、一般的な戦士を戦わせてみよう。特殊な条件下 (接敵距離が1m以内である、とか、剣技なる魔法的な技が使えるとか)以外では銃器を持つ軍人が圧勝するだろう。ならばなぜこの剣と魔法の世界ソードアンドソーサリー世界では未だに剣を使う戦士が存在するのだろう?という問題が発生してしまう。


 1-2

  同じく銃器を持つ軍人と、一般的な魔法使いを戦わせてみよう。これは魔法がどんな存在でどんなものかは世界(作品)によって違うので一概には言えなくなる。が、殺傷による勝敗であれば銃器を持つ軍人が勝つと思われる。なぜなら銃器のストッピングパワーは高いが、魔法のストッピングパワーが高いなどあまり聞いたことがないためだ。また発射速度、攻撃回数なども銃器が圧倒し、さらにいえば、銃器を操る軍人と、そんな軍人と戦える魔法使い、どちらが簡単に育成できると思うか、だ。

魔法には別の使い方があるだろうから魔法使いがいらない、とはならないが、少なくとも一兵士としての魔法使いはいらなくなる。魔法使いは砲兵や機動戦力、戦術的攻撃用となっていくと思うし、そういう作品はあると思う。だけどそれは定義からもれる。


 1-3

  現実がそうであるように銃器があふれると剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーの重要な片翼である剣が無用になるのだ。銃がメインウェポンとなった現代戦で剣を持った戦士がなんの役に立つだろうか?を想像できるならお分かりだろう。



2-0

 その銃はどうやって生産したのだろうか? また弾丸は? 火縄銃レベルであれば、それなりの技術力があれば生産できないこともないし、事実中世ヨーロッパでも生産はされていた。弾丸も手工業で作られたが、機関銃(マシンガン)で使うような量を手工業では生産できないだろう。工場が必須になってくる。が工場という概念が発生するのは中世より後なのだ。すなわち多くの剣と魔法の世界ソードアンドソーサリーでの世界観の元となっている中世ヨーロッパでは概念的に不可能なのだ。


 2-1

  でもそれは世界観を変えればいいのでは? というのは間違ってはいない。しかし工場という概念を持ち込むと、中世ヨーロッパの世界観を維持することはできなくなるのだ。現実でもそうであったように。工場という概念を成立させるには、市民という概念も必須となってくる。工場を継続的に稼働させるには、農民でもなく、職人でもない、サラリーを得て、それで都市で生活する市民がいる。現代では市民は普通の存在なのであまり考慮されることもないが、中世ヨーロッパに市民は少なかったのだ。


 2-2

  市民がたくさんいるということは、その世界では食料生産に寄与しない大量の市民を食べさせられる余剰の食料を生産できていて、それを地方から都市へ腐らせずに運搬することができる、ということになる。


 2-3

  さらにいえば、銃本体や弾丸の材料の確保が出来るのか、の問題もある。これのせいでファンタジーにありきたりな、特殊な素材があるから楽にできる、が使えないのだ。例えば火薬の代わりになるハジケ草なるものがあったとして、なぜそれが今まで兵器に使われていなかったのか? そんな便利なものをなぜ銃にわざわざ加工しなければならないのか、の問題にぶつかってしまう。



3-0

 ここまでして苦労して登場させた銃、どれほど役に立つものだろうか? そもそも銃はドラゴンやトロールに対してどれほど有効なのだろうか? マシンガンを撃たれて耐えられる個人などSFの世界までいくか「葬送のフリーレン」世界みたいな防御魔法がある世界となる、そうなると今度は銃はただの選択肢にすぎなくなる。ジレンマが多く発生し、大量の設定が必要になってきてしまうのだ。



実はかなりの部分を省略化 (長くなるのと理解が難しいため)しているのだが、それでもここまで考えなくてはいけない、それなのに、それでも銃を出したいか?となる。もちろん困難なものだが、もしちゃんと問題をクリア出来るのなら、きっとビリーバビリティ(もっともらしさ)の優れた作品になるだろう、面白くなるかどうかは保証できないが。

前回も今回も、何かを見ていて「かちん」と来たために書いたものです。

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