ロマンとビリーバビリティ
一応念の為最初に表明しておくと、私はロマンを否定しているわけではない。私もロマンを求めて行われる創作は大好きだ。ただそれを「リアル」だの言うのに違和感を覚えてるだけである。どこがリアルやねん! ビリーバビリティは認めるが、決してそれはリアルではない、ということがたくさんある。これが分解できているか否かでもある。
今回は特にロボットアニメでのそれを騙っていこうと思う。
結構最近の話だけど、ロボットアニメとかでよくある、いわゆる「ローラーダッシュ」という機構。これにはビリーバビリティはあるものの、リアリティなどこれっぽっちもないことに気づいてしまったのだ。
もちろん「ローラーダッシュ」は「装甲騎兵ボトムズ」が初出であり、そのボトムズは40年以上も前の作品であるので、コレに対して文句をいう気はない。もともとは作画節約のための設定だったと聞くし、当時としては十分にビリーバビリティもあった。
けどそれを良いことに、最近の作品でもさも当たり前の顔をして、ローラーダッシュを採用し、あまつさえそんなロボットを「リアル」だというのは違うのではないか?と思う。
元々が作画節約の設定であるため、ボトムズのロボット(AT)は足を動かさず機動する。たまにスケートのような物理法則が働いたりはするが。ただよく考えてほしい。あんな小さな足についている車輪だけであんな高い重心を持つ重量物を反動なしに動かせるパワーはどこから来ているのか? ATなどはそもそもエンジンすらないロボットである(その分小さいし軽いが)。
足にエンジンを付けているのだろうか? となるとかなり足が肥大化し、それを足でやるより一体化し、車の下半身のケンタウロスにした方がましなのではないだろうか? 人型にしなければならないというアニメ作品のロボットデザインの難しさである。
もしローラーダッシュがついている足にそんなパワーのある小さなエンジンを搭載できるのであれば、さぞかしそのエンジンはお安いのだろう。どう考えても本体を動かすエンジンより、ローラーダッシュで使うエンジンのほうが馬力がいるからだ。その上小型で軽量、ということは本体用のものもそうでなければおかしいし、そんなものを2つ足につけられるのであればお安くなければならない。ただ既存の科学では機動用のエンジンなどはその機体でもっとも重くお高いパーツであることが多いのだが。
本体用のエンジンパワーを足に?! そんなことができるなら、近接用にチェーンソーを装備するといいと思うよ。凄まじい馬力でなんでも切ってしまえるのでは? 歯が持たない? 歯でなく突起物さえ残ればすごい威力になると思うよ。
と実際に理屈を考えてみるとローラーダッシュはありえない。これを採用しているものがリアルだなんて言わないでくれ、というのが私の本心だ。もちろんそれをリアルと言わずロマンだ、と言うなら納得する。ロマンだよな。
コレと同じ理屈として「変形合体」がある。特に変形。
あのような重量物が1秒足らずで変形、それどころか合体するとか構造上ありえないからだ。おもちゃやプラモデルで再現している? それはそれが軽くて小さいからだ。大きく重くなればその分ギミック部分に強い加圧がかかるものだ。おそらく現代の金属でそれに耐えうるものは作れないだろう。よしんば作れたとしても超高コストな上、とても壊れやすく、少なくとも攻撃を受ける可能性のある兵器に採用するのはどうなのだろうか?
現実においては可変翼、程度の変形ギミックですら高コストで長く使われることもなく、変形によって得られる効果も低かった、というかもっと他の要素で十分補えたので、現実における変形機構、可変翼はなくなっていったのだ。(一応まだ可能性は残されているし現役のものあるにはある)
足に無限軌道をつけて気安く変形して両得を得ようとしたりしているものがあったりするが、逆に余計なギミックの装備によるメンテナンス性の悪化、非必要時のデッドウェイトを一切考慮に入れていない机上の空論である。少なくともそんなものはお安くは作れない。
また戦闘機が人型に変形するものも論外である。もちろん作品としてのビリーバビリティは確保しているし、一応の理屈もあるけど、少なくとも現代科学を基準におくなら耐弾性が低すぎるし、変形失敗もしくは故障のリスクが強すぎる。あれはかっこいいけど、少なくともリアルではない。
さらに言えば俯角、仰角を考えていない兵器のマウント位置のものには失笑してしまう。姿勢制御でしかそれらを変更できない見た目をしているのに、むやみに高い位置にあったりして、これはいったい何を撃つつもりなのだ? というものである。
戦車砲などは砲塔自らが射角を変えるためのギミックがついているのである程度自由に撃てるのだが、それを理解していない、もしくは理解はしているのだが、つい忘れてしまったのだろう。
デザインは難しい。特に存在しないロボット兵器のデザインなど困難を極めることは分かっている。けどだからこそ、ロマンであるのだ。ロマンを求めるのにはなんの問題もない。けど、これがリアルで考えられていますよ、と言うのは違うのではないか、というだけの話。
あまりに歪んだ、間違った知識、解釈で作られたゲームで「歴史考証をしっかりとやっている」とか言い出すのと同じなのである。そんなことを言い出さなければ、ただの「おばかげー」で済んだのだ。
言い訳をしてはいけない、という見本である。
ただ本稿はSNSなどで一度書いてしまっていて満足したものの、また外部刺激により引っかかってしまい、そういえばこれも分解だよな、と思って急遽書いたものである。そういったものがまだあるかもしれない。それに気づくことがあればまた早めに書けるかも(と書いたら、書けないのあるある)