第22章:来るべきものの姿
尾根は時の谷へと続き、そこでは空が薄暗いキャンバスのように、世界の皮膚にできた古傷の上に薄く引き伸ばされているようだった。
アルカードのブーツはひび割れた大地を踏みしめ、足元の土は長く忘れ去られた災厄の囁き、石と土に刻まれた傷跡を伝えていた。
ここでは、世界はほころびていた。
木々は、焼け焦げた骨のように高く黒く、土を必死に引っ掻く根が絡み合った地形の上に傾いていた――黒曜石の柱に絡みつく根だ。
これらの柱は、記憶以前の時代のモノリスであり、その意味が神話に薄れてしまったほど古いルーンを刻んでいた。
苔と霧が、幽霊のような脈のようにその彫刻を絡みつき、知覚の端で震える力でかすかに脈動していた。
アルカードは目的を持って前に進んだ。その足取りには何の躊躇もなく、ただ他の者には見えない糸を追う者の確信があった。彼の心は、思考と幻影の荒れ狂う嵐のようだったが、彼だけが解かなければならないと感じるパズルの断片に固くしがみついていた。
これは単なる廃墟ではない。彼の思考は静かにこだました。これはメッセージ――石と影に書かれた警告だ。
ルシアンは不安そうに慎重に後に続いた。彼の目は不安で大きく見開かれ、声は圧迫的な静寂の中でほとんど消えそうだった。
「これはノクティス・レグナムへの道ではない」と彼は静かに言った。
「ああ」とアルカードは同意し、目の前のねじれた形を見つめた。
「忘れられるべき場所だ。世界が隠そうとする傷跡だ。」
空気は濃く、重く、肩にのしかかるような緊張感があった。
沈黙は不自然に感じられた――まるで鳥さえも恐れて逃げ出し、風自体が動くのをためらっているかのようだった。
ここでは、時間が歪み、瞬間が伸び、折りたたまれる。葉はそよ風に逆らって宙に吊るされ、重力と論理を無視していた。
影は、空っぽの空の下に不自然にたまり、暗く、形がなく、まるでインクが大地にこぼれたかのようだった。
アルカードの視線は、開けた場所の中心に落ちた。
壊れた石が螺旋を形成し、何世紀にもわたる緩やかな浸食によってひび割れ、風化していた。
円の中へと足を踏み入れ、彼はひざまずき、地面に深く刻まれたシンボルをなぞった――意識的には認識できないシンボルだが、彼の魂の奥深くに埋もれている何かに語りかけるものだった。
まるでルーンが彼を覚えているかのようだった。
私が学んだからではない、と彼は思った。だが、それらは私以前の時代を覚えている。私が越えていった時代を。
ルシアンは不安そうに近くに立ち、その声は張り詰めた空気の中で囁きだった。
「これは聖域か?」
「いや」とアルカードは答えた。声は低く、畏敬の念を込めていた。
「これは傷だ。決して癒えることのない傷だ。」
手のひらを中央のグリフに当てると、彼らの足元の地面をかすかなハミングが伝わり、次第に大きくなっていった。
その場所の休眠していた魔法が動き出し、眠っていた獣が目覚めたかのように彼の触れに反応した。
空気は力で揺らめき、光の糸が現実の織物を通して絡み合い、より深いものと絡み合った――表面下の何かだ。
彼の心の中で、システムの聞き慣れたハミングが生命を吹き返した――世界のコードに組み込まれた秘密のインターフェースだ。
論理の線と光るパターンが彼の視界に咲き乱れた。ルシアンには見えないが、アルカードには呼吸と同じくらい現実的だった。ベールはここでは薄く、ほとんど透明で、世界の表面下の機構を垣間見せていた。
ベールは単なる世界間のカーテンではない、と彼は心の中で思った。それは存在そのものの構造だ。
番人であり、裁き人であり、織り手でもある。
彼の心眼にメッセージが点滅した:
[システムアラート:ベールアンカーを認識しました]
[読み込み中:主要異常座標]
[警告:安定性違反レベル2 – 介入が必要]
[監視プロトコルを再初期化しますか?はい/いいえ]
アルカードはためらうことなく確認した。
「はい」と彼は囁いた。
グリフが生命を宿し、きらめくエネルギーの球体が外へと脈動し、谷を洗い流した。ルシアンは、魔法が空気そのものを変え、現実の輪郭を鮮明にするのを見て目を覆った。光が薄れると、世界はかすかに変化して見えた――より鮮明に、より正確に、しかしより脆くもなっていた。
「何をしたんだ?」ルシアンは畏敬と恐怖が混じり合った声で尋ねた。
アルカードは彼の視線に応えたが、単純な答えは与えなかった。代わりに、彼は言った。
「この場所は…見張られていたのだ。神々や人よりも古い何かに監視されていた。」
ルシアンは眉をひそめた。
「意志のことか?」
「違う。」アルカードの目は暗くなった。
「意志は混沌、絶望を餌にする。だが、ベールは現実そのものを司る。それは牢番でもあり、囚人でもある。ベールが揺らぐと、時間、記憶、空間、他のすべてが崩壊するのだ。ほつれた糸のように解け始める。」
ルシアンの表情がこわばった。
「では、これらすべての異常――グリッチ、こだま――は兆候なのか?」
「システムの故障の症状だ。」アルカードの声は厳しかった。
「何度もつぎはぎされ、脆い契約と古の魔法でしか保たれていない世界だ。」
彼は螺旋から離れ、背筋に悪寒が走るのを感じてコートをきつく引き締めた――寒さからではなく、悟りの重みからだった。
上空の空は不自然なエネルギーで渦巻いていた。
雲は生き物のように身悶え、影は見えない緊張でちらついていた。
世界は目に見えない障壁に抗い、それは彼にしか見えなかった。
「別の場所について話していたな」とルシアンはためらいがちに言った。
「アティラックスの遺跡のことか?」
アルカードは頷いた。
「次の傷だ。より深い亀裂。そしてより危険なものだ。」
彼は言葉を止め、遠くを見る目だった。
「私は一人で行く。」
ルシアンの驚きはすぐに現れた。
「なぜだ?」
「私が向かう場所には、ルールがない。
仲間もいない。
ただベールと、忘却の淵があるだけだ。」彼の声は安定していたが、冷たかった。
「誰にもあの闇についてくるよう頼むことはできない。」
ルシアンの顔が硬くなった。
「助けが必要だ。私たち全員が。」
アルカードは首を振った。その決意の下に、かすかな悲しみが揺らめいていた。
「君はまだ秩序を信じている。システムを。だが、私はもうその世界の一部ではない。」
ルシアンの目が細められた。
「では、今のあなたは誰なんだ?」
アルカードの笑顔は、かつて温かかったものの幽霊のようだった。
「私はフェイルセーフだ。運命の喉元に突きつけられたナイフだ。そして、もし世界が再構築されなければならないのなら、たとえそれが私を壊したとしても、私がそれをまとめ上げる者となるだろう。」
何も言わず、彼は霧の中へ足を踏み入れた。彼の後ろのグリフは薄れ、谷は再び静寂に包まれた。
ベールが彼らの上空で脈動した――恐ろしいと同時に必要な何かの始まりを静かに見守っていた。