第10章:エリシアの台頭
魔界はアルカードが予想していたものとは違っていた。魔都ノクティス・レグナムに到着すると、彼は圧倒的な秩序、力、そして野心を感じ取った。
ここは混沌とした魔界ではなかった。長年の戦争の後、自らを再建した王国であり、今やエリシアという一人の女王の支配の下で繁栄していた。
アルカードは宮殿の中庭に立ち、その深紅の目で黒い石と魔法のガラスでできたそびえ立つ壁を見回した。
魔法が空中で揺らめき、建物そのものに結界や防御呪文を重ねていた。
まるでこの街の隅々までが、戦争の猛威に耐えるだけでなく、平和な時代に繁栄するために細心の注意を払って作られたかのようだった。
しかし、彼を惹きつけたのは平和だけではなかった。
エリシアの突然で不可解な台頭は、悪魔たち自身にも気づかれないことはなかった。
噂が囁かれていた――彼女がどこからともなく現れたこと、わずか数週間で分裂した悪魔の派閥を団結させたことの物語。彼女の力は否定できず、噂は野火のように広がった。
彼女が貴族の生まれだと主張する者もいれば、全く過去がないと言う者もいた。物語がどうであれ、彼女の統治は悪魔たちを一つにし、何世紀にもわたる内紛と混沌に終止符を打った。
アルカードの心は、彼が遭遇した深淵の怪獣――彼らの世界の外から来た、これまでに見たことのない生物――のことで駆け巡っていた。
その出現はエリシアの台頭と同時期だった。タイミングが偶然にしてはあまりにも正確に感じられた。
その怪獣の出現は、エリシア自身と同じくらい突然で謎めいていた。それは村々を荒らし、無数の命を貪り食い、来たときと同じくらい早く姿を消した。
それがどこから来たのか誰も知らなかったが、その存在は大地に不安の波紋を広げた。魔界の最果てに亀裂が開き、その亀裂から怪獣が現れたのだ。
アルカードは怪獣の出現について様々な話を聞いていたが、一つだけ明らかだった――それはこの世界の者ではなかった。その姿は理解を超え、その目は無限の闇の虚無だった。
それは肉から生まれた存在ではなく、はるかに古く、自然の法則では説明できない何かから生まれた存在だった。
それなのに、恐ろしい力にもかかわらず、それは消え去った。痕跡もなく。悪魔たちは、最初は恐怖に襲われたが、すぐに日常生活に戻った。
危険の感覚は残っていなかった。しかしアルカードには、何かがしっくりこなかった。
彼の思考はエリシアに向けられた。彼女の力、この都市に対する彼女の支配、そして彼女と亀裂との間の謎めいた繋がりは、すべて無視するにはあまりにも大きすぎた。
彼は答えが必要であり、女王が好むと好まざるとにかかわらず、それらを見つけるつもりだった。