師匠
その後父さんについて行くと少し大きめの扉の前に着いた。
「ここにお前の先生となる人がいる、俺の知っている中でも最強に最も近い男だ、少し前に矢傷をのせいで一線から退いたが、それでもまだそんじょそこらの一兵卒が勝てるもんじゃない、さぁ入って挨拶をしてこい、俺はもう業務に戻るからな、じゃあ頑張れよ!」
父さんよりも強い?そんな人の稽古なんて絶対に厳しいじゃん。
俺、大丈夫かなぁ。
――部屋に入るとそこには少し白髪が混じっている男が座っていた。
その男の手元にはビールが置かれていた。
すると男はこちらに気づくやいなや、駆け寄ってきた。
「お前が大将の息子か?」
「はい、アルベルトですご指導のほどよろしくお願いします」
すると男は少し驚いた顔を見せた。
「おお、10歳と聞いていたがなかなかに礼儀正しいな、大将よりも礼儀正しいんじゃないか?」
確かにあの父親は礼儀の欠片も無さそうだが部下にも言われるなんて、よっぽどだな…
「しかしな若様、将来の部下となる人間に対して礼儀正しくしなくてもいいんだぞ?人によっては舐められかねん」
確かにそれも一理有る、ここはこいつの言う通りにしてみるか。
「分かった、宜しく頼む。
あと若様なんて呼ばないでくれ慣れない」
「おう、了解した。
俺はバルボ、よろしくなアルベルト!」
こうやって訓練は始まった。
しかし…
「よし、じゃあ打ってこい!」
何かしら説明が有るかと思ったが…いきなり打ってこいとは…
「何をしているんだ、さっさと打ってこい。
実際に打ち合わなくては、何も分からんだろう?」
確かにその通りだが、打ち込めったってどうすれば、でも考えてもどうせ勝てないなら、とりあえず力一杯打ち込む。
「せ、せぇいや〜」
そんな腑抜けた声と共に放たれた斬撃なんてたかが知れており、軽々と弾かれると猛烈な手の痺れと同時に木刀が宙に舞った。
バルボはまたもや驚いた顔をしていたが先程とは全くもって違う理由だろう。
「こ、これは…また大したものだな…」
その後1日中稽古をしたあとに父さんが迎えに来た。
「どうだバルボ、俺の息子は?」
そう言われると、バルボは言葉に詰まりながら…
「まぁ、伸びしろはありますな…」
「そ、そうか…」
そうして、この空間に重い空気が流れた。
「ま、まだ10歳だしな大丈夫だ、さぁアルベルト早く帰りなさい」
「え?大将、一人で帰らせるんですか?
まだ10歳の息子を?」
「仕方がだろう俺はまだ帰れないし、そんなに言うならお前が護衛してやれよ、どうせならそのまま、うちの家でアルベルトの家庭教師をしてくれないか?」
「まぁ、大将がそう言うなら」
「え?ちょとまっ…」
「良かったな!アルベルト、バルボ先生が家に行くことに成ったぞ!これでお前も、もっと強くなれるぞ!」