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15 わたしの魔術が気になるみたいです!


【リア視点】


 相変わらずの滅茶苦茶な動きをするエメさん……。


 私は呆れつつ、その姿を眺めていました。


 ですが、一つ気になることがあります。


 それを確かめる為、彼女が消え去った後の窓際に近づきます。


 砕け散った岩の残骸。


 物質である岩石と魔力が織り交ざった魔法……。


 その魔法を展開した本人にお尋ねします。


「セシルさん。貴女、この魔法は本気ではなかったのかしら?」


 ぎょっとした様子でこちらを見てくるセシルさん。


 ……なぜでしょう。


 ただお尋ねしただけだと言いますのに、異様な距離感を感じます。


「……岩の橋(ストーンブリッジ)は、防御魔法でも一番強度が低い……。でも、展開に関しては問題ない、構成も普段通り」


「つまり、()()()()で打ち破られた、と……?」


「そ、そう……」


 驚きと戸惑いを感じさせる表情。


 その意味をセシルさんも理解しているご様子。


 本来、魔法とは魔術の上位に値する技。


 魔法は魔力でこの世の理に干渉し現象を起こす、それに対して魔術は魔力で人間の身体機能に変化を及ぼす程度のモノ。


 そもそも技としてのスケールが違い過ぎるのです。


 だから魔法士は魔法を鍛えていく。


 人間の身体機能を遥か上回る魔族を相手にするのに、魔術など意味を成さないからです。


 だというのに、エメさんは魔法を打ち破った。


 それも、ステラであるセシルさんの防御魔法を。


「これではっきりしましたわね」


 適性検査の際に私の魔法を反らし、今回は魔法を破壊したエメさんの魔術には、何かカラクリがある。


 ただの魔術ではない何かが。


 ですが、それが何かまではまだ分かりません。


 知っているとすれば……。


 私は後ろを振り返り、金髪の少女に目を配ります。


「……ふん」


 目が合ったのは一秒にも満たない刹那。


 シャルロッテさんは鼻を鳴らすようにして目を逸らすのでした。


「あの調子では教えてくれそうにありませんね」


 だとしたら、本人にお尋ねするのが一番でしょう。


 さて、その身に何を隠し持っているのか。


 その真実を知るのが楽しみでもあり、恐ろしくもあります。


 彼女は魔法士としての常識を打ち破る存在かもしれないのですから。


        ◇◇◇


【エメ視点】


「ふぅ……危ないところでした」


 ギルバート君と鉢合わせし、ミミアさんが目が奪われている隙を突いてわたしは加速アクセラレーションでその場から脱出するのでした。


 明らかにミミアさんの笑顔はわたしと向けているものとは別ものでした。


 その違和感に気付かなければミミアさんに心許してしまう所です。


 もしかしたら本当に良い方なのかもしれませんが、まだ分かりません。


 慎重に判断しましょう。


「それはいいとして、結局どこでご飯食べましょう?」


 一人落ち着ける場所と言えば、屋上でしょうか。


 そうですね、そうと決まれば早速向かいましょう。


 ――ズキッ


「あ、いたっ……」


 歩き出そうとして、眼の奥に痛みが走ります。


 魔術の使い過ぎです。


 わたしの魔術は無駄が多いので、あまり短時間で頻回に使うと痛みが出やすいです。


 魔力の消費も大きいため、すぐにガス欠になっちゃいますし……。


 午後は実技ですから、しっかり休んで回復に専念しましょう。





 午後の授業では、“ガーデン”と呼ばれる場所に集合となりました。


 ここは校舎から少し離れた広大な土地。


 視界には山や森林、草原といった自然が広がります。


 ここだけ見ると、どこかの田舎に来てしまったのではないかと錯覚してしまいそうになります。


 この土地全てを学園で管理しているのですから驚きです。


 初めての屋外での実技練習ですので、期待が膨らみます!


「じゃあ今日はね、魔石回収の実技をします」


 ヘルマン先生が今日の課題を告げます。


 魔石回収……?


 これはまた初めての実技ですね。


「皆もこの前に使ったから知っていると思うけど。魔石とは魔力を司った鉱物のことです。効果は様々で、魔力を吸収するものもあれば、魔力を注ぎ込むことでその属性にあった力を発揮する武器にもなります」


 戦場でも魔石は重宝されていると聞いたことがあります。


 そして、基本的には消費されるモノなので常に不足しているとも。


「君たちがこの学園を卒業し魔法士見習いになった後は、よほど優秀じゃない限りしばらくはこの魔石回収をすることが主な仕事になるでしょう。今日はその練習です」


 このガーデンと呼ばれる森林にはまだかなりの魔石が眠っているとのことです。


 毎年、一学年はこの魔石を集めるのが通例となっているそうです。


「あ、それとあんまり奥深くには行かないようにね。結界が張ってるから行けないようにはなってるけど。1年生の内は第1エリアまでっていう決まりだから」


 結界に関しては見れば分かるし、無理に通ろうとしても弾かれるとの事でした。


 それなら安心ですね。


「先生、魔石を見つける秘訣みたいなのってありますかー?」


 マルコ君が先生に質問しています。


「根気じゃない?」


 意外に体育会系です……。


 全員がそんな地道な作業なのかと息を呑みます。


「冗談だよ、半分は本当だけどね。魔石は魔力を有しているからその魔力の反応を辿るといいよ」


「それってかなり難しくないですか……?」


「うん、魔石の魔力は微々たるものだからね。よっぽどセンスがないと感じ取るのは難しいと思うよ」


「けっこう地味な作業になりそうですね」


「だから言ったでしょ、“根気”だって。ノルマは一人一個ね、見つけた人から戻ってきていいよ」


 あ、なんかその発言怖い所ありますね……。


「見つからなかった人は?」


「下校時間まで森の中だね」


「……それでも見つからない人は?」


「補習だね」


 皆の空気が凍り付きます。


 魔石回収の作業が大事なことはよく分かっていますが、アルマン魔法学園に入学した生徒達の目指す場所はそこではありません。


「ヘルマン先生も魔法士見習いの際はその作業をやっていたんですか?」


「いや、僕はすぐ戦場に駆り出されたよ」


 あ、なんかちょっと自慢話っぽいですね。


 ですが教員になられた魔法士なのですから、優秀なのは当然ですよね。


「流石は先生!優秀だったんですねっ!」


「いや、アレは最悪だったなぁ……。同期は皆で和気あいあいと魔石を集めしてるのに、僕は先輩に怒鳴られながら魔族と戦うんだよ。もちろん覚悟はしてたけど、ちょっとあの待遇の差は気になったなぁ……」


 あ、先生が遠い目をしています。


 過去のトラウマみたいなものを開けてしまったのかもしれません。


 エリートにはエリートの悩みがあるんですね……。


「あ、そんな話はいいんだよ。それじゃあ今回は好きなように動いていいよ、一人一個あればそれでいいから」


 そうして魔石探しがスタートするのでした。





「……ま、わたしが一人になることは分かっていましたけどね」


 森の中にわたしは一人彷徨うことになるのでした。


 寂しいものですね。


 ですが、みなさん意外に思われるでしょうけど。


 わたしこの課題、多分速攻で終わっちゃうんですよねぇ。


駆動ドライブ


 魔力を通すのは()です。


 それだけで今回は十分です。


 それに、この力はあまり人には知られたくないので一人は好都合です。


 ――ガサガサ


 と思ったら茂みから物音がっ!?


 動物、動物ですかっ!?


「……あら、エメさん。こんな所にいらしたのね?」


「え、あれ、リアさん……?」


 茂みから現れたのはリアさんでした。


 わたしは魔術を一旦、解除します。


「奇遇ですね。お一人ですか?」


「え、ええ……そうなんです」


 悲しいことに、ぼっちですから。


「あら、それでしたら私と一緒に魔石をお探しにならない?」


「え?わたしがリアさんと……?」


 リアさんは上品に笑いながら、わたしにそんな提案をしてきたのです。


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