表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

09.妻を守るために(サイモン視点)

昨日は更新できず、すみません。

いつも「いいね」や「お気に入り登録」ありがとうございます!

とても励みになってます!


 敵を威嚇する猫の気持ちがわかる。


 現実逃避をしたくて、思考をあさっての方向へ向けようとしたがクリスが許してくれなかった。


「影からの報告だってハインツが楽しそうに教えてくれたよ」

「……あの腹黒王子」


 ハインツ王太子殿下は一見温厚そうで穏やかな性格に見えるが、中身は真っ黒。使えない人間は容赦なく切り捨てるような残忍さを持つ人だ。そして使えるものはとことん利用する。


 きっと今回も何か魂胆があって、クリスへこの話を持ちかけたのだろう。


 ……まぁ、そういうところがクリスと気が合うんだろうな。


「で、俺にどうしろと?言っておくが、トリシャと別れろとか言った日には王家に明日はないと思えよ?」


 鋭い視線をクリスに送れば、クリスはすぐさま両手を顔の横でチラつかせながら態とらしく王子スマイルを向けてきた。


「そんな物騒なことしないよ。安心して、俺もハインツもそこまで非道じゃないし、バカでもない。冗談でもフォレスト前公爵と前公爵夫人もお気に入りの奥さんを引き離そうなんて言ったら、本気で王家がなくなりそうだからね」


 ケラケラ笑うクリス。

 俺だけじゃなく、温厚な父と母をも敵に回すと取り返しのつかない事態になるとわかっているのだろう。


 フォレスト公爵家は代々武力に秀でた血筋だ。


 周辺国と和平を結び、戦争と程遠い世の中になってからはなりを潜めているが。


 特に母は、無敵だと言われた騎士団長時代の父を負かした女傑。

 その強さに父が惚れ込み、熱心に口説いたという話は有名だ。

 怒らせたら誰にも止められない。

 現役を退いたとはいえ、本気になった母と対等にやり合える人は父ぐらいだろう。

 俺も無理だ。


「わかっているならいい。それで、ハインツ王太子殿下は何を望んでいるんだ?」

「ジュリアスとヤツを支持する勢力を表舞台から引きずり下ろしたいらしい」


 ハインツ王太子殿下が立太子されて数年。

 妃も迎え、国民からの期待も高い彼は着実に王太子としての基盤を固めつつある。


 しかし少数ではあるが、ジュリアスを王太子としたい勢力がいるらしい。

 ジュリアスは国の未来を担える王の器ではないと、誰の目から見ても明らかなのにだ。

 どうやら短絡的で後先を考えないジュリアスを傀儡として、政権を掌握したいと考える輩が彼を王太子へと推しているという。


「ハインツ王太子殿下はすでに立太子されていますし、国民の人気も高い。そこまでジュリアスを気にされなくてもよいのでは?」

「実は先日、アマーリエが何者かに襲われた」


 背筋を嫌な汗が伝った。

 ハインツ王太子殿下の最愛の姫、アマーリエ王太子妃殿下に手を出すなんて……とんだ命知らずだ。

 彼を本気で怒らせたら、当人はおろか一族郎党この世から抹殺される。

 しかしジュリアスを推す勢力は、彼を王太子とするために手段は選ばないらしい。


「幸い護衛が撃退したが、襲撃者が自害したために誰からの指示か明らかにできなかった。そしてこれはまだ公式な発表はしていないが、アマーリエが懐妊した」

「それは……ハインツ王太子殿下としては不安因子はすべて潰しておきたいでしょうね」


 ただでさえ妊娠期間はデリケートになる。

 安心して御子を産める環境を整えるためにも、ジュリアスとその周辺の不穏な輩を徹底的に排除したい。

 その気持ちは十分に理解できる。


「しかし、それがレティア妃殿下の行動とどう関係するんです?」

「ジュリアスはポンコツだが、やつを背後で操る人物はなかなか隙のないやつらしくてな。あのハインツが苦労している。しかしレティアはバカなのか策略なのかわからないが、突拍子もない行動に出るタイプだ。黒幕とどの程度関わり合いがあるのかわからないが、彼女を突破口にしてジュリアス勢力を一網打尽にしたい、というのがハインツの考えだ」

「……それで俺にはレティア妃殿下の動向を探れと?」

「さすがサイモン、話が早い。おそらくあの女の方からサイモンに近づいてくるはずだ。ちょうど再来月にシャーロットの婚約披露パーティーが行われる。サイモンはレティアから情報を引き出せ」


 ……隣国に恩を売るためにも俺が一肌脱がなくてはならないことはわかる。

 わかるのだが……


「これはお前の奥さんを守るためでもある」

「どういう意味だ?」

「はっきり言ってレティア妃殿下がどのような行動をするのか、誰にも予測できない。それほどネジのぶっ飛んだ女だ、アレは」

「……まぁ、そうだな」


 レティの隣国での振る舞いは、ネジが飛んでると言われても仕方ないレベルだ。


「その女がサイモンのところへ戻りたいと言っている。そんな彼女の障害はなんだ?」


 クリスの言葉を聞いて青褪めた。

 俺にはトリシャという、大切でかけがえのない妻がいる。

 レティが俺に近寄る……となると、トリシャの存在が邪魔になる。

 しかし半分血を分けた異母妹だぞ?!

 ……という言葉が出かかったが、レティがどのような出方をするのかわからない今、希望的観測はすべきでない。


 トリシャ……。


 愛しい妻の名を心の中で呟いた俺は決心した。

 俺は何があってもトリシャを守る。

 そして、そのためには何でもすると。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ