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冬の朝に見る霞はどこまでも美しくて  作者: 森菜香ぱるむ
3/5

いつもの昼休み

 午前中の授業はほどなくして終わり、昼食の時間になる。

「は~るきっ!」

 後ろからそう言って来たのは香茂実だった。

 振り返ると香茂実がお昼のお弁当を持ってやって来ていた。

「お昼食べよ?」

 付き合ってからお昼は、香茂実の作ったお弁当を二人で食べるというのが通例だった。

「うん。行こうか」

 そうして二人で中庭へと向かう。

 霞ヶ丘高校はコの字型の構造をしており、校舎に囲まれた中庭には建物の影が降りて程よく日差しが指す。

 その暖かな環境が心地良くて、いつもここでお昼を食べる事になっている。

「はぁ~っ!やっぱここは気持ちいね!今日ちょっと暑いけどここは暖かいって感じ!」

 香茂実は伸びをしながら疲れを振り払うように言った。

「そうだな~、あぁ~腹減った。授業で頭使いすぎたかな?」

「頭を使うって悠貴、二時間目と三時間目寝てて先生に怒られてたじゃん」

 朝が苦手な俺にとって午前中の授業と言うのは眠気を煽る物でしかなかった。その為午前中の授業は眠気に負けてよく寝てしまう。

「俺は寝てたんじゃない。睡眠学習をしてたんだよ」

 とりあえずのテキトーな言い訳をしてみる。

「睡眠学習って勉強した後に寝ると、みたいな事じゃなかったっけ?」

「ま、まぁそうとも言うな」

「あはは!」

 そうやってふざけ合って笑った後に香茂実は、持ってきた二つのお弁当の内一つを渡してくれる。

 渡された青い布に包まれたそれを解いて弁当箱が露わになる。

「おぉ!今日は何が入ってるんだ?」

「今日はね~卵焼きとミートボール、それとキンピラごぼう!ご飯はのりたまかけて食べてね!」

「マジか。本当にいつもありがとな」

 毎日のように自分の為にお弁当を作ってくれている事に、心の底から感謝する。

 元々お昼は自分で用意していたのだが、香茂実が作りたいと言い始めたのが始まりだった。最初は数日の事だろうと思い快く引き受けたが、今日にいたるまで毎日作ってきてくれている。そんな香茂実に若干の負い目を感じているが、『もう作らなくていいよ』とも言えない。

 俺に出来る事は毎回、誠心誠意感謝を伝える事だけだった。

「えへへ」

 毎回感謝を伝えると香茂実はこうしてにへらと笑顔を見せてくれる。せめて喜んでほしくて感謝を伝えているのに、その表情を見ているとこっちも嬉しくなるのはなんだか不思議な気分だ。

 そうして弁当箱を開けると、彩鮮やかで美味しそうなおかずが敷き詰められている。そして二段構造になっている下段の蓋を開けると白く輝く白米があった。

「めっちゃ美味そう。いただきます!」

「私も、いただきま~す!」

 こうしていつもの様にお昼ご飯を二人で食べる。

 程よい暖かな日差しの暖かみを感じながら、爽やかなそよ風が吹き抜ける。

 そんな心地よい環境で大好きな人と食べるお弁当と言うのは至上の喜びであり、これ以上ない程格別に感じていた。俺はこんな毎日が愛おしいと強く感じるのだった。


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