表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/38

五之巻:脱ぐでござる

 数日後、殿下よりお手紙が届けられたとのことで、親父殿の書斎に呼び出された。


「殿下がシルヴィアを王宮での舞踏会に誘ってきた」


 上質そうな紙を片手に親父殿が言う。

 ちなみに婚約の件だが、実は聖女はそのお役目のうちはとつげぬらしい。ただまあ、殿下に婚約を申し込まれているというのがおおやけになっている以上、他家との婚約は進められぬ。

 つばつけられたというものでござろうか。


「ふむ、光栄な話にござるな?」


「そうだね。お受けしないと。衣装は仕立てているのを急がせよう」


 某は礼を取り、部屋に戻る。


「旦那様は何と?」


 カチューシャが尋ねた。元々、某には何人ものメイドが交代で仕えていたが、最近は彼女が専任となっている。

 某は今の親父殿からの話を伝えた。


「聖女としての力量をしっかり見せねばな」


「……舞踏会ぶとうかいですよね?」


「うむ、武闘会ぶとうかいと言っていたでござる」


 某たちは互いに首を傾げる。


「舞踏会とはダンス、踊りをするのですよ」


 なん……だと……。

 彼女は心配そうに続ける。


「お嬢様、ダンスは覚えておられますか?」


 踊りか。どれ。某は手を前に出して構える。


 それ、パンパンパン。パパンがパーン。ちゃっちゃらーっ、ちゃっちゃちゃーちゃー、ちゃっちゃらーちゃらー、ほいほい。


「お嬢様、何ですその珍妙な動きは」


「盆踊りにござる」


「王宮でそれやったら死刑ですね」


「それほどにござるか!?」


 こいつはヤベぇという表情のカチューシャ。

 むむむ。


「お主は踊れるでござるか?」


つたないものであれば……」


 カチューシャはわるつの基本のすてっぷとやらを踊ってみせた。成る程……。


「カチューシャ。脱ぐでござる」


「!?」


 スカートを脱がせて今のをもう一度踊らせる。

 一曲終わり、恨めしそうにこちらを見る彼女の前で某は叫ぶ。


「忍法、猿真似さるまねの術!」


 某が全く同じ動きをするのを見て、彼女が瞠目する。


「これなら何とかなりそうですね!でもなぜ脱がせたのですか」


「うむ、スカートをはかれていると足捌きが分からぬ故」


 スパァン!


「なぜ叩く」


「それならズボンをはいても良かったでしょう!」


 ……おお。


「旦那様と奥様にきちんと踊って貰いましょう」


 王宮での舞踏会で粗相があってはいけないと某が不安がっているという旨を、カチューシャは親父殿とお袋殿に伝え、翌日は舞踏会での所作からダンスと一通りやって貰ったのである。

 親父殿とお袋殿はとても良い雰囲気になっておった。これは年の離れた弟でもできるやもしれんでござるな!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i521206
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです(゜∇^d)!!続きが凄く楽しみです( ・`ω・´)
[一言] 元の体の記憶にダンスはなかったか。
[一言] >スカートを脱がせて今のをもう一度踊らせる。 その辺の描写詳しく( ˘ω˘ ) >これは年の離れた弟でもできるやもしれんでござるな! おねえたま(うるうるおめめ)。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ