表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/38

三十五之巻:お初にお目に掛かる、魔王殿

「良くぞここまで来た。聖女シルヴィア、そして小石惣二郎よ」


 謁見の間の最奥、高くなった場所に置かれた玉座に座る男が声を放つ。

 壮年の、白髪混じりの黒髪を伸ばした男。その顔立ちは平たく、身の丈もハルトビッヒ殿下などと比して低い。

 某は頷くように軽く頭を下げる。


「お初にお目に掛かる、魔王殿。お主やはり某と同郷の者、そして忍びにござるか」


 その顔立ち、体つき。某の名の正確な発音、そして毘沙門天という部下の名や奴の使った忍法。


「ああ、俺はある日突然この世界へと転移したのだ。

 だがお前はそうではないようだな。惣二郎という男の名でありながら、お前の身体は完全にこの世界の女のものだ」


「うむ、某は魂のみがこの世界の聖女、シルヴィアの身体に宿ったものよ」


 なるほど。と魔王は頷き玉座より立ち上がった。それだけで威圧感に膝をつきたくなる。


「惣二郎、忍びとしての名を名乗れ」


「五里飛余助」


「ごりとび、聞いたこともないかばねよ。どこの田舎忍びかあるいは抜け忍かは知らぬが、此方での活躍を見るに大した腕前のようだ」


「お褒めに預かり光栄にござるな。田舎忍者と馬鹿にするくらいなら、魔王殿は高名な里の忍びでござるか?」


 伊賀か甲賀かあるいは御庭番衆おにわばんしゅうの者か。


服部半蔵はっとりはんぞう


 なん……だと……。


――おいしそうさん、そんなにすごい人なんですかあの魔王!?

 ……高名な忍びの長の一人にござるよ。


「俺、服部半蔵は伊賀者いがものを束ね、八千石の大身旗本たいしんはたもととして身を立てても渇望が満たされることはなかった」


 服部半蔵は自らの手を眺め、それを力強く握りしめる。溢れる闇の力。


「そう、それはこの異界に俺の半身があったからよ。魔王として封じられていた魂を取り込んだ時、俺は完全となった」


 魔王の魂を取り込んだ服部半蔵……。


「今の俺はそう、全なる一に至った者。魔王・服部一蔵!」


「まおうはっとりいちぞう……」


 何と恐ろしい存在にござろうか!


「同郷のよしみとして聞いてやろう。惣二郎よ。俺に仕える気はないか?

 我ら忍びが将軍やら大名に使い捨てにされることもなく、力ばかりの武士どもに馬鹿にされることもない。有能な者が相応の地位につく世界を俺たちなら作れる」


 …………。

――おいしそうさん!


「断る」


「何故」


「女神の力と魔の力は相容れぬ。いずれお主は某を殺すであろう。

 それにな、お主は偉大な王となるであろう。だが、お主の子孫がそうあり続けることはあり得ぬ。人は自らの力でその世を作らねばならんのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i521206
― 新着の感想 ―
[一言] 大物キターーー!!!!www なまどりのゼウスといい、なまこさんの作品のラスボスが出てきた時の「キターーー!!!!」感はパない( ˘ω˘ )
[一言] まさかの正体に驚きですのΣ(・□・;)
[一言] やはり忍者の敵役はこの方ですなあ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ