表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/38

二之巻:某の忍びとしての名は

「どこからどうみてもシルヴィアお嬢様なのに、その言動は明らかに違う。

 そして、お嬢様が聖女としての力不足に嘆いておられたのは事実……」


 カチューシャはっと顔を上げる。


「お嬢様のお心は無事なのですか!」


「判らぬ。かの魂は口寄せの際に失われたのか、深く眠っているのか」


 カチューシャは服の裾を皺になるほど握り締め、何かをこらえるようにして考え絞り出すように言った。


「……お嬢様があなたを求めたならあなたに仕えましょう。

 お嬢様のお心について分かったらすぐに教えて下さい」


 ふむ、忠義の部下であるな。某は頷いた。


「承知した」


「では、あなたの名は?」


「うむ。某の忍びとしての名は……」


「忍びとしての名!?」


 む、忍びが分からぬか。


蘭学らんがくで言うところのニンジャ・ネームは……」


「ニンジャ・ネーム!?」


「うむ、ニンジャ・ネームは五里飛ごりとび余助よすけ


「ごりとび!?」


「本名は小石おいし惣二郎そうじろう


「おいしそうじろう!?」


 ……なぜいちいち叫ぶのか。


「……呼び名を変えても混乱するだけです。お嬢様と呼びますので、あなたもごりとびやら、おいしそうと名乗らぬように」


「おいしそうでは無く、おいし・そうじろうでござる」


「どちらでも構いません。名乗らぬように。

 旦那様と奥様にはそれとなく誤魔化します」


「隠し通せるものか?」


「旦那様と奥様は細かいことを気になさらぬ性質なので……お嬢様も不自然な言動を取らぬようご注意ください」


 大丈夫なのであろうか。とりあえず朝餉あさげの時間とのことで、早速、カチューシャを従え食堂へと向かう。

 廊下の隅を歩こうとしたら、肩を掴まれ、真ん中に移動させられたでござる。


 食堂に入ると親父殿とお袋殿がもう席につかれていた。

 座布団では無く腰掛けている。南蛮の文化か。


「おはよう、シルヴィア」


「ふふ、今朝はちょっと慌ただしかったわね、悪い夢でも見たかしら?」


 と声をかけられる。


「おはようにござる。親父殿、お袋殿」


 スパァン!


 後頭部が引っぱたかれる。

 このメイド、某に避けられぬ速度で頭をはたくだと!?


「……おはようございます。オトウサマ、オカアサマ」


 某はシルヴィアの記憶を思い起こし言い直した。


 実際、親父殿もお袋殿も細かいことを気にせぬ様であった。

 カチューシャはシルヴィアが女神より神託を賜り、その影響で言動が珍妙になったという説明をし、親父殿とお袋殿はそれを受け入れたのである。


「まあ、ステキなことね!さ、食事にしましょう!」


 驚きの流され方(スルー)であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i521206
― 新着の感想 ―
[一言] 初手からw 何度でも読んでしまうでござる。 これは…懸想?
[良い点] ごりとびよすけ! 猿飛佐助の親戚ですかい! いいネーミング!
[良い点] 2話目にして既に面白いです! [一言] はじまりましたね! カチューシャ素敵ですっ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ