一之巻:某が長い眠りから目を覚ますと少女であった。
ξ˚⊿˚)ξ <各話1000文字。本日3話更新、明日以降は毎日1話更新予定です!
某が長い眠りから目を覚ますと少女であった。しかも金髪の南蛮人である。
「解せぬ……」
某は白魚のような指でさらりと流れる金の髪をつまみ、染み1つない手を見ながら呟いた。
その手で胸を揉む。
「柔い」
その時、扉を叩く音が。
「!」
某は慌てて周囲を見渡し身を隠した。
ガチャリと引き戸ではない扉を押し開けて入ってきたのは栗色の髪の女。女中の類か。
「失礼いたします。お嬢様、お早うございま……お嬢様がいない!」
騒ぎになったでござる。
そしてしばらくして天井に張り付いているところが見つかり、さらに騒ぎとなりもうした。むう。
「いいですか、お嬢様。天井に張り付いてはいけません」
女中の女、脳内にメイドのカチューシャという言葉が浮かぶ。
火中車か?面妖な名である。
「カチューシャ」
「はい」
合っているようだ。
「むむむ、しかしいざというときに天井に張り付けなくては如何にする」
「如何にもしません。それよりお嬢様が天井に張り付くような力があるとは知らずびっくりしました」
聖女の力なのかしら……と小さく呟かれる。ふむ、聖女とな。知らぬ言葉であるが覚えておこう。
「うむ、某は忍びであるからな」
「それがし?しのび?」
メイドのカチューシャはそう言う間にもてきぱきと某の朝の支度をする。顔を布で拭い、口をすすがせ、柔らかい綿の寝間着を脱がせると、白い裸身が露わになった。
傷一つなく、柔らかい身体である。
確かに、某が忍びの術を使えるにしてもこの身体でどうやって天井に張り付けたというのか。新入りのくノ一、女忍者にすら劣る。
そこに聖女の力とやらが関わっているのか。
青く、華美な服をきせられる。着付けをされるなど姫君かと思わんでもないが、南蛮の服の構造など分からぬしな。助かっているとも言えようか。
「できました、お嬢様。……ところであなたはどなたです?」
カチューシャが某に尋ねる。真剣な眼差しだ。
むう。
某が答えに窮していると彼女は続けた。
「お嬢様は天井に張り付かないし、自分のことをそれがしとも言わない。服を不思議そうに見たりもしない」
「さもありなん」
この身のことを思うと、ふと浮かぶ名がある。
「シルヴィア」
カチューシャはびくりと身を揺らした。
浮かんだことをつらつらと言う。
「そがこの身の名か。かの娘が自らの無力に悩んで力を望み、死したる某の魂をこの身に宿らせたようだ」
何のことは無い。巫女の使う口寄せの術か。某の魂がそれに呼び寄せられたのであろう。
ξ˚⊿˚)ξ <短編版もよろしくお願いいたします!
3話までを1000文字に圧縮して書いているので見比べてみるのもおもしろいかと思いますの!
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