パンツは大切
僕にしか見えないものは、一体何を基準に現れているのか。
少し予想がたったけどしっくりこない僕は次の日、太ももと一緒に登校した。
「おはよう」
朝、万実音の親友の柴崎えりかに話しかけられた。
柴崎えりかは僕の秘密を一つ知っている。
万実音も知っていることだけど。一番最初に知ったのは柴崎だ。
「ぬいぐるみ作りは、順調?」
「まあ、昨日はあんまりできなかったけど、もうすぐ出来上がるかな」
柴崎に訊かれた僕は小さめの声で答えた。
実は僕は昔からぬいぐるみが好きだ。しかし、おそらくこれは男子にしては珍しく、あまり受け入れてもらえないだろう。
というわけで黙っていた。
しかし、小学生の時、ぬいぐるみを持ってきたのを柴崎に見つかってしまったのだ。
それから、万実音にもあっさり知られて、柴崎と万実音はもともとぬいぐるみ好き女の子だったから、僕たちは時折、ぬいぐるみの話で盛り上がる。
でも今日は、僕は万実音に相談したいことがあった。
「あの、ちょっと聞いたら変態だ思うかもしれないから頑張って聞いて欲しいんだけど」
「え、なにその前置きは」
「万実音ってさ、実はパンツを大切にしてたりするの?」
「パンツ……?」
柴崎が小さい声で驚いたように言って、周りを見回した。
「そう、パンツ……」
「知らないっていうか、そもそもパンツは割と大切だよね。ないと困るし」
柴崎は顔を少し赤くして、真面目な感じを出して言った。
たしかにそうか。パンツがないとそれはノーパンということになり。それは困る。たしかにかなり重要なものという扱いでも普通なのかもしれない。
僕が考えているのは、渡したものと同じくらい大切なものが見えるということだ。
つまり、日焼け止めクリームとイヤホン、定期券と財布、消しゴムと付箋、校章バッジと上履き。これらはきっと万実音にとって同じくらい大切なものの組み合わせなのではないかってことだ。
個人的には校章バッジをもう少し大切にして欲しいところだけど、それよりも、この法則で僕にしか見えないものが現れてるとしたら。
万実音はお気に入りのジンベエザメのぬいぐるみと同じくらい水色の縞パンを大切にしていることになる。
それだと万実音がパンツ大好き変態になってしまうのでやばいと思っていたけど、柴崎の話を聞いてそこまででもないかもと思った。
如何なる人にとっても、パンツは大切だということだね。
お読みいただきありがとうございます。
パンツは大切ですね。