ぬいぐるみ展に行こう
「わかる? つまりは、町原は、小学校の思い出をいいものと思ってないってことなんだよ」
「ふーん。で?」
「いや、なんかそうなのかもなあって思っただけ」
その日の昼休み。
僕と万実音と柴崎は、お弁当を食べながら話していた。
「でも逆の可能性もありそうだよね」
柴崎が言った。万実音と違って話に乗ってきてくれる。優しい。
「どういうこと?」
「その消しゴムが大切な消しゴムって可能性もあるかもって思って。ほら、ぬいぐるみでもぼろぼろのぬいぐるみほど大切なぬいぐるみでしょ」
確かに、それはありえるのか。つまりは町原にはなんらかの理由であの消しゴムに強い思い入れがあるということ。
しかし町原とそんなに親しいわけでもないし見当もつかない。
まあ転校した疎遠になった親友から借りっぱなしだった消しゴムだったりするのだろうか。
僕はそこまで考えて……というかほとんど考えが進湯でないけど、弁当を食べることに集中した。
少したって
「あ、そーそー」
さっきは興味なさそうな態度だった万実音が話を振ってきた。
「どうした?」
「今日えりかと一緒にぬいぐるみ展行くけど来る?」
「あー、行こうかな。行こう。でも見つからないかな……」
「心配しなくていいと思うよ。ぬいぐるみが好きなことは、恥ずかしいことではないよ」
柴崎まじで優しいなあ。感動。
「まーそれはそうだけどね。でも真斗みたいな雰囲気の人がぬいぐるみにすりすりしてたらちょっと引くかも」
万実音容赦ないなあ。辛い。
しかし、実際そうだから、まあぬいぐるみ展で可愛いぬいぐるみ発見したり、お土産で可愛いぬいぐるみ買ったりしても、あんまり興奮しないようにしよう。
そう自分の中で決意して、なんだかんだで楽しみだなあ、と考えた。
ぬいぐるみ展は、電車で五駅くらい行ったところにあるらしいので、万実音と柴崎と僕は放課後すぐに向かった。
電車の中。僕は立ってて、二人は座っている。
電車がやたらうるさいのであんまり会話が聞こえない。
だけど割と距離が短めの五駅なのでそんな無理して会話するほどの長さではない。
実際、外を眺めてたらついた。
「はい、降りるよ。切符落としてない? だいじょーぶ?」
おい、なんで子供扱いする煽りを始めんだよ万実音は。実はパンツ好きなくせに。