女騎士はアヘらない
アヘール王国において女騎士になることは、女子なら一度は夢見るものである。『大人になったらなりたい職業』ランキングでは常にトップであり、その地位は揺るぐことが無い。
ここにも一人、夢にまで見た女騎士になりたての女の子が居る。
彼女の名は【雨宮アテネ】
憧れの女騎士になった彼女は、配属先が決まるのをウキウキと待ち焦がれていた。オーク討伐にドラゴン退治。これから始まる女騎士ライフに胸を高鳴らせ、アテネの目は爛々と輝いていた。
「―――雨宮アテネ! 貴殿を女騎士隊第十部隊所属とする!」
ただ、彼女はちょっと配属先に恵まれなかった―――
「アテネ! この三つの書類1000枚コピーして丁合して仕分けてホッチキスしとけ!」
「は、はいぃぃぃぃ……!!!!」
「アテネ! 調理担当がアヘったから代わりに1000人分の食器洗っとけ!」
「はいぃぃぃ……!!!!」
「アテネ! スケベドラゴン退治が終わったから残骸処理に行くぞ!」
「は……はいぃぃ…………!!」
「アテネ! 捕虜オークの世話に行くぞ! 絶対にアヘるなよ!?」
「はぃ………………!」
「アテネ!! この三つの書類がアヘッタから代わりに1000人分のドラゴン退治が捕虜オークだぞ!?」
「……………………」
女騎士隊第十部隊は、縁の下の力持ちと言えば聞こえは良いが、その実ただの雑用部隊であった。
「私何で女騎士になったんだろう…………」
一日22時間の勤務時間! 隊長に至ってはまさかの24時間フル勤務!!
ブラック企業も裸足で逃げ出す女騎士隊第十部隊の過酷さに、アテネは瞬く間に五月病になってしまった…………。
しかも平然とアヘる女騎士達に拘わらず、アテネが所属する第十部隊はその多忙振りからアヘる事が一切禁じられていた。
「…………もう、辞めたい……」
手はガサガサになり、目の下はクマだらけ。髪はボサボサで服はクタクタ……。
鏡に映るアテネの姿は、夢にまで見た輝く女騎士とは程遠いものであった…………。
そしてアテネは王宮から姿を消した―――
当てもなく森を彷徨い、アテネはフラフラと一人道なき道を進んでゆく。
「…………?」
ふと地面に見える何かが気になり足を止めるアテネ。それは女騎士を獲るためのオークが頻繁に使うトラップだった。
「…………」
どこか投げやりで楽になりたいと思っていたアテネは、自らの足でそのトラップへと近付いていく。
──カタン!
自ら棒を倒し、カゴの中へ…………
「んほぉぉぉぉ!!!!」
カゴから聞こえたアテネの声は、とても喜びに満ちておりアテネは自らの意思に反して自然と涙が零れてしまった。
「女騎士がかかった!」
茂みから小柄なオークが三人飛び出し、アテネの周りを取り囲んだ。
「……あれ? この女騎士寝てるべ?」
「罠の中で寝る女騎士なんて始めてだっぺ」
「よっぽど疲れてるんだな。可哀相だから寝かしてやるべ」
オーク達はアテネを憐れみ、起きるまで待つことにした。
そして次の日……。
「ふぁぁ~…………!!」
アテネはカゴの中で目を覚ますと、周りに三人の若いオークが寝そべっているのに気が付いた。
──カタ……
アテネは静かにカゴを外し外へ出ると、腰に下げた剣を鞘のまま振り下ろし、オーク達を気絶させた。そしてズリズリとオーク達を引きずり手土産として王宮へと戻った。
「ほう! 罠にかかったが逆にオーク達を返り討ちにしたと!? お前は第十部隊にいるのが勿体ない。これからは第六部隊で働くといい!」
アテネはその働きが認められ、ついに雑用部隊から卒業して今では輝かしい女騎士ライフを送っている……。
「アテネ! オーク討伐に行くぞ!!」
「アテネ、行きまーす!!」
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(*´д`*)