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1-6

 幸造とアイラが黒い大トカゲに襲われる少し前。


 リチャードはアイラを探して公園の森林地域まで来ていた。散歩道で擦れ違う人にアイラの事を尋ねたりしたが、それらしい情報は得られなかった。

 もう少しすると日が暮れてくる、そうなると人探しはさらに難しくなる。


「まいったなぁ」

 擬似太陽を眺めながら頭を掻こうとして被っている中折れ帽に触る。

「コウゾウが見つけていてくれたら良いんだが」

 林の奥へ目をやりながら呟く。

 急に横の木の影から男が散歩道に飛び込む様に出てきた。リチャードと軽くぶつかる。


 男は濃紺のフードを目深に被っていたが一瞬だけリチャードと目が合う、強い信念を持っているが何者も寄せ付けない、とても冷たい光を瞳に宿していた。下唇の右端に付けた銀のピアスがそれに呼応するかの様に鈍く不気味に光っている。


「おっと、失礼」

 リチャードは中折れ帽のつばを軽く触り謝罪する。

 相手の男はすぐにフードを深く被り直し無言で足早に去って行く。

「失敬な奴だな」

 やれやれといった感じで溜息まじりにぼやいたが、リチャードは別の事が気になった。

(あの目……あの目は……)

 何かを思い出したのか、いつになく真面目な表情で目を伏せた。


 ドーーン! バキバキバキ!


 林の奥から大きな音が響いてきた。

「!? 何だ~?」

 リチャードは音のした方角に目をやる。

「まさかアイラちゃんじゃないよな?」

 ボロボロになった幸造の姿が目に浮かぶ。

「まいったなぁ」

 苦笑混じりに呟き、林の中を一直線に突っ切って行く。




「はぁ、はぁ……あぶねぇ……」

 幸造は怯えきったアイラを抱きかかえながら間一髪の所で大トカゲの攻撃をかわした。

 代わりにベンチが大トカゲに押し潰され無残に破壊されていた。


「何なんだコイツは……おい、アイラ、逃げるぞ……」

 アイラはうずくまってまだ震えている。

「おい! アイラ!」

 両肩を強く揺さぶる。

「……コウゾウ……腰が、抜けちゃいました……」

「マジかよ」

 だが、震えて動かないよりずっとましだ。意識さえ有ればなんとかなる。


 大トカゲが動きだした、長く強靭な尻尾を2人に向けて鞭の様にしならせ叩きつけてきた。

「危ない!」

 幸造はアイラを手で押し出し遠ざけた。

 尻尾が幸造の左腕、肩に近い所を強く打ちつけた。

「ガッ……」

 幸造は吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられる。

「コウゾウッ!」

 アイラが声をあげる。

 その声に反応したのか大トカゲは後ろ足で上半身を持ち上げ、その落下の勢いでアイラを押し潰そうとしている。

「逃げろアイラ!」

 叫ぶ幸造、だが間に合いそうにない。


(くっそう! 野郎! 止まれ! 止まれーー!!)

 起き上がりながら右腕を伸ばす、動きが遅い、そして重い。空気が身体にまとわりついて動きを阻害しくるように感じる。

(ぐぅおうぅ……クソがぁああ!!!!)

 力の限り、渾身の力を込めて身体を動かす。

(ぐおぉぉりゃあああああ!)

 『ボンッ』という音とともに身体の動きを阻害する重さが無くなった、いつも以上に身体が軽い。

(間に合え!!)

 幸造は大トカゲの右脇腹に勢いのついた飛び蹴りを入れる。

 そのまま同じ所を何度も何度も蹴りつけ、拳でも殴りつけた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 必死になっていた幸造だが、やっと何かが怪しい事に気付く。

「何でコイツ動かないんだ? 大丈夫かアイラ?」

 アイラの方に顔を向ける。

「……止まってるのか? いや微かに動いてる? そうだ噴水!」

 ここの広場には小さな噴水がある、水の流れを見れば分かるかもしれない。


 噴水から流れ落ちる水は凄くゆっくりと落ちていた。水の溜まっている所から手で水を掬うとその場所に凹みが出来た。掬った水を宙で放すと水の玉が宙に浮いていた。

 耳というか音も怪しい、時間が止まっているなら無音だが低いボワーっとした音が聞こえている。


「俺以外の時間がゆっくりになってる」

 周りを見ながら呟く。

「はっ!? スタ○ドは?」

 後ろを振り向く。

「いないか……」

 残念そうだ。


「う~ん……でも、このままじゃ困るな。どうしたら戻るんだ?」

 腕を組んで首を傾げる。

「ちょっと、動いて!」

 そう言った瞬間、大トカゲの体が幸造に蹴って殴られた方向に凄い勢いで吹き飛ばされ、木に激突して止まった。

「うわぁ! ビックリした」

「ビックリしたのはこっちですー!」

 アイラは幸造の下に駆け寄る。

「一体何をしたんですか? それに変な動きをしてました……キモかったです」

「キモいとかやめて、地味に傷つくから」


 2人の背後の林からガサガサと音がする。2人共身構える。

「リチャード!」

「所長!」

 安堵の息をもらす。

読んで頂きありがとうございます。

頑張って更新していきますので宜しくお願いいたします。

感想等々ご自由にどうぞ。


言及されない強靭な肉体と精神と超回復力、これが主人公補正。言い訳ともいう。

次回投稿まで数日空いてしまいそうです、すいません。

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