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異世界金融外伝 〜無骨な少女が恋を知る〜  作者: 暮伊豆


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3/6

気になるあの子は誰かに夢中

そしてまた週末。

私は朝から道場に来ている。スティードもバラドも一緒だ。クタナツ出身のスティードと王都にどんな関係があると言うんだ……




「おーし、昼にしようぜ。今日はスティードが奢ってくれるらしいぜ!」


「そうか。私まですまないな。」


「いいよいいよ。昨日はいいことがあったからさ。奢っちゃうよ!」


スティードにしては珍しくハイになっているようだ。


「おおっ? 何事だ? 言えよ。」


「ふふっ、王都から手紙が届いたんだよ。書いたのは春の終わりぐらいみたいだけどね。」


「おっ、てことは愛しのサンドラちゃんか? 『辺境一の頭脳』だったか。」


サンドラ……


「そうそう。何回か話したよね。僕とセルジュ君の大事な女性さ。」


「しかしまあ、お前らって変わってるよな。今から二夫一妻を目指すとはよ。そりゃあ前例なんていくらでもあるけどよ。」


「あはは、まあ色々あってさ。さあ食べようよ。アイリーンさんは何がいい?」


「……すまない……急用を思い出した……」


私は一体何に動揺しているのだ……しかしなぜかこの場に居たくない……スティードの顔が見れない……

これが血の気が引くというやつなのか……




気付けば見知らぬ場所に来ていた。道場は治安の悪いエリアにあるからな。道を間違えると簡単にスラムに迷い込んでしまう。




ちっ、本格的に迷ってしまったか。まあいい、まだ昼だ。夕方までに帰れればいい。頭を冷やす時間も必要だろうしな。


「よおネーちゃん。見たところスラムのお仲間みてーだが、どこのモンよ?」

「格好は小汚ぇーが顔は見覚えがねー。」

「困ってんなら助けてやるぜぇ?」


スラムの住人か。


「いらん。消えろ。」


「テメー……俺らを任侠ダミネイト一家と知ってそんな口きいてんのか?」

「ここらで生きていけなくなるぜぇ?」

「あーキレた! せっかく助けてやろうとしたのによぉ?」


「うるさい。どうせ闇ギルドの連中だろう? 文句があるならかかって来い。今の私は機嫌が悪い。」


「ほぉーお。大きな口叩きやがって。おう、お前ら!」

「おう、教育的指導が必要だなぁ?」

「明日の掲示板載ったぞテメー!?」


「待ってください!」


バラド!? なぜここに!?


「あーん?」

「何だよニーちゃん?」

「このメスガキのナイトってか!?」


「こいつ、領都のことをロクに知らないんです。勘弁してやってください!」


「バラド! お前が頭を下げるなど……!」


「黙ってろ!」


「ふん、分かりゃーいいんだよ」

「破極流のモンかよ」

「次から気ぃつけな」


「はい! ありがとうございます!」


バラド……こんな奴らに……


「行くぞアイリーン。こっちだ。」


「バラド! お前ともあろうものが! なぜあんな奴らに頭を下げる! 私などのために!」


「バカやろう。お前のためなら頭でも何でも下げるに決まってんだろ。」


「い、いや、それにしたってあんな弱そうな奴らを相手に……」


「あいつらダミネイト一家って言わなかったか?」


「ああ、そのような名前だった気がする。」


「だからだよ。ダミネイト一家ってのはな闇ギルドじゃねー。領都の裏の世界を取り仕切りはしてるが無法な真似はしてねー。行政府に指定された一応真っ当な組織なのさ。噂じゃ辺境伯家の三男、ダミアン様がバックにいるとか。」


「ふん、どうせドラ息子なのだろう。名高い辺境伯家の者がそのような組織と関わっているとは。」


「惜しい。放蕩息子って評判だ。まあともかくよ、イライラに任せて暴れるのはやめとけ。お前らしくないぜ。」


「バラド……お前は知っていたのだな。その……サンドラという子のことを……」


「むしろアイリーンが知らないことにびっくりだ。スティードの奴が何回俺らに話したと思ってるんだ。」


「全く覚えていない。そうか……」


「やっぱり、お前は女だったな。行くぜ。」


「……どこにだ?」


「いいから来いよ。もう稽古には戻らねーんだろ?」


「あ、ああ……」


そして私はバラドに手を引かれどこかへ連れて行かれた。そのように手を引かなくても……子供ではないのだぞ。しかしなぜか、奴の手が……暖かい。




「ここは何だ?」


「見ての通り道具屋だ。入るぞ。」


「らっしゃーい」


「例の櫛、入ってますか?」


「おーう、来てるよ」


「どうも。試してみますね。ほら、アイリーン。そこに座れ。」


「あ、ああ……」


「お前、また風呂に入ってないな?」


「いや、四日前に入ったぞ。」


「……まあいい。見てろよ。」


バラドは何を?

私の髪を梳かしているのか? バカかこいつ……


「汚ぇー髪しやがってよ。ちったぁ手入れしろや。キレイな顔が台無しだぜ。」


「う、うるさい……」


なぜだ……心臓がうるさい……

こいつがやっていることは私の髪を梳かしているだけ。無骨な指で、ガラにもなく、丁寧に。


「ほーら、キレイになったぜ。」


「ふん……」


髪などキレイにしたところで強くなるわけでもあるまいに。


「お前、髪に使う時間があったら稽古したいと思ってんだろ?」


「当たり前だ。」


「そんなお前でも負けたよな? アレクサンドリーネ様に。」


「アレックスを知っているのか。」


「だから何でお前が知らないんだよ。あの人のこともスティードから散々聞いただろうが。あれだけの上級貴族がなぜあそこまで強くなろうとしているのか。全然話を聞いてないな。それじゃあ勝てるモンも勝てねーぜ。」


「くっ、今度本人から聞いておく!」


「えっ!? お前、アレクサンドリーネ様と話すようになったのか? スティードの話によると名前すら覚えてないはずじゃあ?」


「仮にも私に勝った女だ。敬意を持って接するに決まっている! 名前だってきちんと覚えた!」


「そうか。それはよかった。それならお前はもっと強くなれるさ。じゃあ俺は帰るぜ。その櫛はプレゼントだ。たまには使えよ。じゃあな。」


「あ、あぁ。ありがとう……バラド……」


鏡の前、ぼんやりと自分を眺める。おかしい……

髪を梳かしただけでこんなにキレイになるはずがない。


「店主。この櫛はなんだ?」


「おいおい、見れば分かるだろ? 魔力で髪を梳かしてオマケにきれいにする王都で流行りの『魔法の櫛』さ。ツヤツヤのピッカピカ、いい彼氏を持ったな? これって高いんだぜ?」


「か、彼氏などではない!」


「ふーん、どうでもいいけど。お前らの歳でよくもまあ買えたもんだな。まいどありー」


バラド……何のつもりだ……

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