第11話 しかし日常は続かない
セイバの壮絶な過去と意志を聴いて、思わず真顔で拍手する。
「む、拍手されることを言ったつもりはないのだが」
少し困惑するセイバ。
「いやいや!空っぽの俺からしたら拍手喝采もんよ。普通そんなことあったら心折れるし、何よりあんたは言葉通り強くなって、更に上を目指してる。これは敬うしかない」
「む、照れるな」
少し笑い、頭を掻く。
「ところでさ、闇の力を使う人間も悪いやつなのかな?」
「言い伝えでは、闇の力というのは魔王が扱い、魔王の意志に賛同する人間に分け与えたとされている。実際に魔王軍の手引きをする者、私利私欲を満たす者しか見たことない。そのせいで仲間も何人か散っていった」
拳を強く握りしめ、鋭い眼光を放つ。
なるほどなぁ、悲惨な過去に、実体現がいっぱいなら、誤解を紐解くのも大変だな…もう少し信頼を重ねてから打ち明けたほうがいいだろう。
それにしても、魔王に賛同した人間に与えられた力ねぇ……エマは師のマリアさんから与えられたけど、そのマリアさんも誰かからってことになるが……まさかね。
「そうなんか……あ、でもさ!俺の友達の話なんだけど、余命されてた心臓病の子が、闇の力で治ったらしいんだ。以降その子は元気に社会貢献してるみたいだ。もしそんなエピソードを話す子と会ったら耳を傾けてほしい。とてもいい子なんだ」
エマのことを少し話しておく。もしバレた時に、少しでも躊躇してくれたら幸いだ。
「にわかには信じられない話だ。だが、頭の隅に置いておこう。…それと、今のようにかしこまらず話してくれて構わん。私達は対等だ」
あ、思わず素で喋ってた。
「えっ、あぁ……よろしく頼むよ、セイバ」
「あぁ、こちらこそだ、ササガミ。今日はもうお開きにしよう。明日も日中はエセ殿と鍛錬があるのだろう?」
「あぁ、助かるよ。じゃあ明日も稽古を頼めるかな?」
信念があり、いい人だ。何より女性で格好いいと思う人に初めて出会えた。闇の力がバレるとまずい、と思いながらも一緒にいたいくらいだ
「承知した」
2人はゆっくりと宿屋へと戻っていった。
〜〜〜〜〜
あくびをしながら起床する。いつも通り、ギルド集会所に向かう準備をする。
「キャアアアア!!」
「うわぁぁぁ!?」
外から悲鳴が聞こえた。廊下を出て、窓から外を見ると、人々が一方向から逃げてくる。
なんだ!? 何が起きている!?
急いでセイバの部屋をノックし、声をかける。
「 い、セイバ! どうも外がおかしいんだ!一緒に来てくれないか!」
何かあったときにセイバがいれば頼もしいが、返事がない。仕方なく1人で外を出て、人々が逃げてくる方向へ向かう。
「ヒィ!?」
逃げてきた1人の男性が転ぶ。怪我はないみたいなので、声をかけてみる。
「おいあんた! この先で一体何が起きてる?」
「ヒトクイドリの群れが外壁を超えてきて、この先で襲ってるんだ!」
モンスターかとは思っていたが、どうやらそうみたいだ。センはその方向へ走る。
角を曲がると、体長1m程の鳥の化け物がいた。羽と毛は黄色く、丸くてでかい目で、その周辺だけ赤い。足には鋭い爪、クチバシの中には牙が連なっている。それが建物を壊したり、人を追いかけ回している。パッと見て十数匹ぐらいだ。
黙って見てるほど、俺は畜生ではない。助けねぇと。
「……ごめんエマ、約束破るわ」
両手で【黒弾】を作り、ヒトクイドリの方へ身構える。