第6話 エセ・マルエツ
ギルド集会所の受付にて。
「ーーということが昨日の夜あったんだよ。厳しいけどいい人だったよ。誤解さえ解ければ、仲良くなれるかもよ、エセさん」
「そう言われても…私の時には、弁明も何も聞いてくれませんでした。どうも、闇の力を使う人に対し、すごい恨みがある感じで。
あと、その偽名は咄嗟に考えたものなので、やめてください」
「うーん、隠し通すしかないのかなぁ。あ!そういや、突然眠気とだる重くなったのて、やっぱ使い過ぎのせい?エセ・シュヴァルツさん」
「当然ですっ!今日に影響が残らないよう、昨日は早めに切り上げたのもあるんです。私がいない間は、闇の力を使わないと約束してください!
あと、後悔してるんで、やめてください」
「いやぁ面目無い!……そんで今日は何をするんだい?エセ・マルエツさん」
「今日は午前中に、【黒弾】と【バスターク】の反復練習、午後からは【ダークウェア】とまだお見せできてない、再生させる魔法の習得を目指します!
あと、いい加減、やめなさい」
段々と声に殺気がこもってきたので、偽名をいじるのはここが潮時か。しかし、面白い偽名だ、また後でイジろう。
そして【ダークウェア】はタイラントウルフに噛まれても、ピンピンな防御力を誇る鎧みたいなもの。ちなみに、再生させる魔法っていうのは、俺が見てなかっただけで使ってはいる。俺が初めて【黒弾】を作り、自爆した時に治してくれたのがその魔法らしい。
「それじゃ、適当なモンスター討伐依頼でも受けて、行くとしましょう!」
エマがギルドの係員とやりとりする
「む、ササガミ殿、おはよう」
「おっあ!?おはよ!?」
あまりの突然な出来事に声が裏返るも、慌ててエマが隠れるように立ち位置を変える。エマも気づいたのか、片手でサッとフードを被る。
「どうした?様子がおかしいぞ?昨晩に倒れたのと何か関係あるのでは?」
心配そうな表情で見つめてくる。
「い、いや、まだ本調子じゃないだけで……あ!昨日は運んでくれてありがとうございます!」
な、なんとか会話を引き延ばし、エマを逃がさなくては……
「いや、知らずに無理をさせてしまった、こちらの不手際だ。申し訳ない。」
「とんでもない! またお願いします! セイバさんも何か受けるんですかい?」
とにかく話題を振ろう! もう騎士団の自慢とか全然聞きますんで! 完璧な合いの手を入れるのでっ!
「あぁ、個人的に。今は他の騎士団員がとある件を調べていてな。その間に、増えているモンスターを退治にでもと」
「いや〜偉いっ! ほんっとセイバさんは真面目で崇高な精神をお持ちだ! 尊敬します!」
褒めちぎってやる、ペラペラと喋りたくなるほど気持ちよくさせてみるっ!
「そう言われる程ではない。私は当然の義務だと思っている。ところで、さっき誰かと喋っていたように見えたが、もしや奥にいるのはエセ・マルエツ殿ではないか?それなら是非挨拶をしたいのだが……」
「えー、あーちょっと待ってください」
終わった。