第2話 リベンジマッチの果てに
俺は剣を引き抜く。ここに来る前に実戦と聞いて、安物だが、刃渡り50cm程度の剣を購入しておいた。まさかすぐに使うはめになるとは…
「万が一に備え、いつでも迎撃できるで安心してください!」
エマの周囲に無数の【黒弾】が空中で静止している。危なくなったら一瞬で倒してくれるのだろう。
「頼もしいね……」
ゴブリンの数は全部で4匹。距離は約15m。最前列に2匹横並び、その後ろに2匹控えてる。投げた石を簡単に取られたからか、警戒しながらジリジリと距離を詰めている。
多勢に無勢、無闇に突っ込んだら囲まれていい的だ。遠距離から攻撃できる【黒弾】も、今の俺じゃ時間がかかって、隙だらけだ。そういうわけで……
「ピッチャー第1球、投げました!」
センは先程キャッチした石を前方にいる1匹に向け、全力で投げる。
「ギギャ!?」
見事、ゴブリンの頭にクリーンヒットし、倒れる。コントロール力も向上してるようだ。
「よしっ!」
当たったのを確認すると、瞬時に前方のもう1匹に近づき、思いっきり蹴り飛ばす。
「ゴブっ!?」「ガギャ!?」
吹っ飛んだゴブリンの先に、後ろに控えていた1匹がいて、巻き添えをくらう。
すげぇ、俺にこんなパワーがつくとは……さてと、これで一旦は一対一だ。楽しくなってきた。
「ゴア!!」
無事なゴブリンが棍棒を振り上げ、殴りかかってくる。だが、まるでスローモーションに見える。戦闘技術、経験がない俺でも簡単に避けれるぞ、これ。
横に躱し、ゴブリンの首元に剣を刺し込むと、崩れ落ちていった。初めての殺生だが、不思議と抵抗や不快感はない。むしろ……
「お次は……」
センの目が赤黒く光る。
吹き飛ばされた2匹が立ち上がろうとするが、1匹は背後から切られ、地に伏せる。
「ゴッ!?」
それを見たもう1匹は、慌てて這いずりながら逃げようとする。しかし、背中を踏まれ動けなくなる。
「おっと、逃がさねぇよ。人に石投げといて、それはないだろ。連帯責任として、たっぷり……」
簡単に殺しはしない、まずは四肢を切り取るか。いや、あえて同じ所に攻撃し続けた方が苦しく、楽しくーー
その瞬間、エマが【黒弾】を放ち、最後のゴブリンは動かなくなる。
「チッ、いいとこで横槍入れんじゃっ」
「センッさん!!!!!」
エマの声が森に、俺の頭に響き渡る。
「あっ……あぁ」
あれ、俺は今……なにをっ……
「……これが闇の力のリスクです」
エマはうつむき、どこか悲しげに言う。
「でもっ!力任せに戦わず、ちゃんと戦力を分断し、確実に仕留める!戦略はお見事でした!」
いつもの明るい口調に戻る。
「ハハ、ありがと……エマ」
ああやって闇の力を使っていく内に、惨虐になり、行き過ぎた行為をしていくのだろう。
…それを嫌うエマには、申し訳ないことをしてしまった。
「落ち込んで、間違っていると気付いてくれるだけで嬉しいです。さぁ、もう帰りましょう」
日が暮れ始め、2人は街へと戻っていった。……これからは気をつけないとな。