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第一章 聖なる夜に幸せを2

「ほら、瞬ついたぞ、いい加減起きろ」


 と瞬の鼻を人差し指と中指の間に挟み、半分思いやりと少しの私情も込めて思い切りねじる。


「ん、ぁあでででででで!」


 ふがふがと慌てふためく瞬の姿を見て、実はほんの少し楽しいだというのは本人には言えまい。

 ――――正直、ルーティンとは言わないがどうも一日これをしないと調子が悪い。


「おはようございます!」

「おはようございまーす」

「おはざっス!」


 ――――校門前は毎度毎度賑わいを見せるが、やはりみんないつもよりテンションが高いように見える。


 これもクリスマスという風に当てられたからだろうか?


「あ、うげぇ……」


 隣で急に給食で嫌いな食い物が出た時のような声を出した瞬が真正面を向いて顔をしかめる。


「どうした?」

「どーしたもこーしたもねぇよ、アレ見てみろよ」


 ――――あぁ、なるほど。

 指さす方を見れば確かにうなずける。


 わが高校――――栄興第一学園、通称栄学(えいがく)には逆らってはいけない三つの集団がある。


 一つ目は生徒会、まぁこれといってこちら側が問題を起こさなければ特に何かされる事はない。

 まぁ、瞬は度重なる寝坊で反省文を書かされていたが。


 二つ目は風紀委員、これもやはり特に目立ったことしなければ特にお咎めを受けることも無い。

 まぁ、瞬は度重なる騒ぎで校庭の草むしりをやらされていたが。


 最後に三つ目、これは俺自身も正直受けたことがないために何とも言えないところがあるのだが、瞬の証言によれば、正に恐怖そのもの――――だそうだ。


 なんせ、噂によれば屈強な強面教師でさえ手を焼いていた不良を自ら進んでボランティアへ向かわせるくらいに更生させた、学園内で頭を張っていた連中全員が献血に行き地元の新聞が報じた、など、数々の高校を渡り各地で伝説を作り上げている人物、それが三つ目の集団、ていうより個人。


 俺にはどうしても噂を信じる気にはなれない、なぜなら――――


「おはようございます早乙女君、今日もいつも通りの時間ですね」


 そう言って目の前でにこやかに話す女性こそ、生きる伝説――――木島春子というおしとやかな教師だからだ。


「はい、おはようございます先生」


 そういって別段いつもと変わらない挨拶を交わしながら目線は隣へ向ける。


 足は小刻みにリズムをとり、体は咲き終わったヒマワリのようにぐったりと、目が泳いでいるというよりは飛び跳ねるように左右へ動いていた。


「あ、黒野君!」

「ひっ」

 ――――いや名前呼んだだけだぞ、とツッコみたくなるほど出来すぎな反応に思わず眉間をつまむ。


「ちゃんと遅れず来れたんですね、先生嬉しいです!」


 と、ぴょんぴょんと喜ぶ姿にはとてもじゃないが恐怖ではなく単なる子供にしか見えなかった。


「あ、これも早乙女君のおかげでしょうか?」

「い、いや僕は何も……」


 振り向きざまにこちらをのぞき込む姿には正直あざとさも感じるほどで、中々のやり手としか思えないのだが……。


「あ……も、もう行かないと遅れちゃうんで」

「あ、そうですね! 授業頑張ってください」


 横で憔悴しきっている瞬を引きずるようにその場を後にしようと先生の横を通り過ぎる。


 ――――願い……叶うと良いですね。


「え?」


 微かに聞こえる声に思わず振り返るが、相変わらず先生は他の生徒と楽しく喋っているだけで他に話しかけてくるような人物は見当たらない。


「気の……せいか」

「どしたんだよ~早く教室行こうぜ」


 あぁ――――と短くから返事だけを残し玄関へ向かう。


 多分気のせいだ、自分も今日という風に当てられているのだろう――と。


つたない文章ですが最後まで見ていただきありがとうございます。

ゆっくりと書いていこうとおもいますので、これからもよろしくお願いします

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