シラノ・ド・ベルジュラック ~詩人、無頼にして快男児~
シラノ・ド・ベルジュラック 属性 詩人 剣士 純愛 寝取られ 寝取り SF作家
シラノ・ド・ベルジュラック、正式な名乗りはサヴィニヤン・ド・シラノ・ド・ベルジュラックとなる人物は17世紀前半にフランスで活躍した人物です。
なおサヴィニヤン・ド・シラノ・ド・ベルジュラックという名前を訳すと「ベルジュラック町在住のシラノ家のサヴィニヤン」になりますので、以下の文章ではシラノの表記で統一します。長いですしね。
シラノが活躍した時代は、大デュマの『三銃士』の主人公として有名なダルタニャンとかなりの部分で重なります。
またこの両名は軍人であったこと(階級は凄まじく異なりますが)、死後に自身をモデルにした(というか名前を使われた)文学作品が作られたことも共通しています。
今回は史実のシラノと創作としてのシラノの両方について語りたいと思います。
史実のシラノは作家(文学者)として知られた人物です。
若いころは軍に所属していたり、決闘を何度か行って複数人を殺害するなど剣士とも無頼とも見做される人間でした。
しかし戦争で怪我をして退役すると、以降は当時の知識人と交友しながら文学作品を発表していました。
政治的な活動も行っていたのですが、名前を広く知られる前に三十三歳の若さで梅毒によって病死してしまいます。
生前にはさほど有名ではなかったシラノが作家として歴史に名を残したのは、彼の死後に発表された小説が名声を博したからです。
その小説の名は『月世界旅行記』(または『別世界又は月世界諸国諸帝国』)といい、世界初のSF小説とも呼ばれている小説です。
内容としては主人公が色々な手段を講じて月へと赴き、そこに存在する高度な科学文明に触れるという内容で、空想的な小説の体を取りながら社会批判を行っています。
この『月世界旅行記』が高く評価されている点は、月面や宇宙を地上の延長線上に存在する、としたことにあります。
ガリレオによる天体観測が16世紀末のことですが、シラノ存命中のキリスト教的宇宙観では月より下の世界(月下界)と月より上の世界(天上界)は明確に法則が異なる世界だと理解されていました。
当時の一般的な認識としては、月より上(外)の世界は基本的に天国であり、星々が動いているのは天使がそれらを動かしているからだ、でした。
そんな中で月と地上は距離が離れているだけで本質的に変わらないとするシラノの思考は極めて独創的であり、であるがゆえにその著作は高い評価を受けています。
ここまでが史実のシラノであり、続いて創作のシラノへと話を進めましょう。
演劇『シラノ・ド・ベルジュラック』は1897年にパリにて初演され、その時の連続開催が500日、総公演数は400回を数える超人気作であり、以降も世界各地で上演されています。
日本でも『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻訳したものや、翻案した『白野弁十郎』が大正時代に上演されています。
また、そのプロットを参考にした創作物も数多くあり、筆者が知る限りでは手塚治虫の『ブラックジャック』でも名前までほぼ流用している回があります。
演劇『シラノ・ド・ベルジュラック』の主な登場人物は3人います。
まずは主人公であるシラノ。剣を持てば勇猛果敢、詩を作らせれば当代一の名人でありながら、長い鼻に代表される異面異相の醜い風貌を持つ。従妹であるロクサーヌに恋心を抱いているが、それを悟らせない。
続いてヒロインであるロクサーヌ。シラノの従妹であり、シラノの風貌に対しても嫌悪感を表さない。後述するクリスティアンに恋心を抱く。
最後にシラノの戦友のクリスことクリスティアン。稀代の美男子であるが、話芸に乏しく退屈な人物とも言われる。ロクサーヌに恋心を抱かれ、自身もロクサーヌに惚れる。
この他にシラノの親友やロクサーヌに横恋慕する貴族などもキャラクターにいますが、主にこの3人を中心してと話が進みます。
以下に粗筋を記しますが、文体については気にしない方向でお願いします。筆者の趣味が全開になっているだけなので。
剣を持てば勇猛果敢にして友情に厚く、同時に深い知性に裏付けられた詩人でもあるシラノ・ド・ベルジュラック。
しかしながらその容貌は異面異相、彼の持つ数々の美点を覆い隠してなお余りあるほどに醜かった。
笑われれば腹が立つ、腹が立てば拳を振り上げる、拳を振り上げれば叩きのめさずにはいられない。
男同士であれば、ときには殴り合いが友情を生む。しかしシラノの顔をみた女性は怯えるか、さもなくば蔑むばかり。
だがただ一人、従妹のロクサーヌだけは違った。喧嘩をすれば怒られるが、無茶をすれば心配してくれる。小言は煩わしいが、困った時には自分を頼ってくれる。
それが嬉しくて、幼いシラノは無茶を重ねた。なぜ嬉しいと思うのか、そこに気づくこともなく。
そうして歳を重ねてシラノが自身の恋心に気づいたときには、無鉄砲だが頼れるシラノとそれを窘めつつも甘えるロクサーヌの構図が出来上がってしまっていた。
この関係を崩す機会はいくらでもあった。しかし勇気と無謀に事欠かないシラノをして、次の一歩を踏み出すことは困難を極める。
今の居心地がよい関係性が壊れるだけではない。他の女達のように恋するロクサーヌに怯えられ、あるいは蔑まれたならば、シラノの詩人たる心は天地に繋がりを失い、狂気に呑まれて荒野を彷徨うであろう確信があった。
先送りの安寧に淀んでいたシラノであったが、ある時、戦友であるクリスをロクサーヌに引き合わせたことにより、彼らの運命は激流へと姿を変えてしまう。
互いに一目惚れしたクリスとロクサーヌ。ぎこちない二人をからかいながら、シラノの持つ詩人の感性は、二人の想いを正確に見抜いていた。また、これからの二人が取るであろう行動についても。
頼れる従兄として、確かな戦友として、それぞれから相談を受けたシラノは、隙あらば狂った馬のように暴れ出そうとする己の心を抑え込み、ロクサーヌが待つ窓辺へとクリスを誘う。このように月の美しい夜に愛を謳えば、心を寄せぬ乙女は居るまいと。
さてさてしかしながら、神はクリスに類稀なる美貌を与え給う一方、詩才は僅かにも授け給われなかった。
天使と見まごう美貌ながら、その口から零れる言葉はあくまで凡庸。その声の響きは蕾の花さえ咲きほころぶが、退屈な文字の羅列は咲いた花すら蕾へと身を隠す。
正しくロクサーヌの百年の恋も冷めんとするばかりに、シラノは戦友に耳打ちをする。今から俺が囁く言葉を、お前の口から謳い上げるがいい。
あまりに詩情を欠いた愛の言葉に、かつて覚えた霊感はあるいは誤りであったかと心沈めるロクサーヌ。しかし僅かな沈黙の後に響き渡る愛しき人の声に、これまで以上に胸は高鳴った。
元より声の美しさは花の心を奪うほど。そこに詩神の祝福を受けた言葉が加われば、月の女神とて思わずその視線を囚われるだろう。
ましてや神ならぬの身のロクサーヌであらば、その体を突き動かす衝動のままに窓を開け放ち、愛しき人を迎え入れんとするのも無理はない。
クリスもまた愛しき人に受け入れられた歓びのままに飛び込もうとするに、シラノが茶化すように応援する。俺が手伝えるのはここまでだ。猛犬は邪魔が入らぬよう、外で番をしていてやる。
安心してくれ、お前の従妹を悲しませることはしない。そう言い捨ててクリスが窓の向こうに消えるのを、シラノはただ見つめていた。
やがて心通わせた恋人同士が愛を交わし始めたのに気づくと、シラノは月に語りかける。
なあ、月よ。美しき女神よ。これで良かったんだよな。
その頬を輝くものが滴り落ちていることを、月だけが知っていた。
想いが通じ合ったクリスとロクサーヌは、ほどなくして結婚式を挙げた。シラノを含めた多くの人々から祝福を受けた二人であったが、その幸せは長くは続かなかった。
すなわち、戦争が始まったのだ。
国に仕える兵士として戦地に赴くシラノとクリス。新婚の身でありながら、妻と遠く離れなければならないことを嘆くクリスは、自分がどれほど妻を愛しているか手紙で伝えようと思いつく。
とはいえクリスの文章が想いを伝えるには到底足りないことは、クリス自身が承知している。そこで頼ったのはクリス達のクピドであり、比類なき詩人であるシラノだ。
散々に嫌味を言いながらシラノが書き上げた恋文はクリスの想いをそのままに、いやそれ以上の想いが伝わる名文であった。
同時に呪われた恋文でもあった。たしかにクリスの想いはその文に込められている。だがそれ以上に、シラノの恋慕がその字句一つ一つに尽きせぬ熱情を与えていた。
そしてなによりもクリスは自身が気づかぬままに犯していた大いなる過ちは、今まで秘すしかなかったシラノの恋心に、躊躇うことなく奔らせる手段を与えてしまったのだ。
クリスがシラノに代筆を頼んだのは一度だけ。筆の拙いクリスにとって、手紙とは一度も送れば十分に事足りた。
一方のシラノにとって、文章を練ることは呼吸をするのと同義である。故に何通もの手紙を書き送った。
筆不精なクリスのため、夫と離れて寂しいロクサーヌのため。そう言い訳しつつ、他ならぬ自分自身のために恋文を認める罪をシラノは分かっている、つもりだった。
その罪と本当の意味で向かい合うことになったのは、慰問団に加わってロクサーヌが戦場に訪れたのが切っ掛けだった。
久方振りに逢えた歓びに包まれる若い二人。夫が長く家を空けていることを詫びると、妻がそれを打ち消す。いいえ、貴方から届いた多くの手紙が私の寂しさを癒してくれました。
覚えのない手紙の束に不審を覚えるクリスに対し、それに気づかないロクサーヌが続ける。それで私は貴方に謝らなければならないことがあります。
私が心魅かれたのは貴方の類稀なる容貌でした。ですが貴方の本当の美しさはその胸の内にあったのです。貴方からの手紙を読む内に、遅まきながらそのことに気付いたのです。
今の私にとって、貴方の顔形はその魂の輝きに比べれば何の意味もありません。例え傷を負って損なわれたとしても、私の愛は終生変わることはないでしょう―――
そう心からの愛を告げる妻へ、クリスは自分が笑みを形作れているか自覚はできなかった。
その夜、いつもの様にロクサーヌへ送る文面を考えていたシラノ。そこへ姿を見せたクリスはしたたかに酒精を漂わせていた。
戦陣にあって飲酒は懲罰の対象だ。多少ならば見逃すのが習いだが、流石にそれと直ぐに知れるほどであれば罰は免れえない。
クリスをどこか余人の目の届かぬところに運ぼうとするシラノだが、逆にクリスに胸ぐらを掴まれて不機嫌に問い質すことになった。おい、この酔っぱらいめ。敵と戦友の違いも分からないのか。
その軽口に答えず、クリスは酒臭い息とともに言葉を漏らす。妻が、ロクサーヌが来たんだ。俺が出した覚えのない手紙を持って。
クリスの濁った瞳に射抜かれ、思わず動きを止めたシラノ。その濁りが酒精ではなく嫉妬であることに気付いたとき、初めてシラノは恐怖が身を竦ませることを理解した。
ロクサーヌは言っていたぞ。もはやこの俺の顔は何も意味がないと。彼女が愛しているのは、手紙に込められた魂であると。
つまりお前だ、シラノ。
天使とも讃えられる美しい顔すべてを嫉妬に染めて、クリスはシラノに詰め寄る。友人の激情に、自分自身の罪悪感に、シラノの舌は慄き、凍りついた。
彼女の愛はお前に注がれている。お前のその詩人の魂とやらにだ。もう俺は愛されてはいないのだ。俺のこの取るに足らぬ魂では、彼女の愛に相応しくないのだ。
だからシラノ。呪うように、縋るように、血の気の失せた顔の中でただ瞳だけを光らせて、クリスはシラノに詰め寄った。
俺に誓え。必ずロクサーヌに告白すると。
あ、ああ、分かった。誓うとも、必ずロクサーヌに告白する。鬼気迫るクリスを落ち着かせるために、シラノは取り敢えず誓った。
元より本気ではない。悪酔いしたクリスは今のこの会話さえ記憶にあるか疑わしい。そう考え、そして実際にクリスは落ち着いた。
そうか。うん、そうか。胸ぐらを掴みあげていた拳を外し、クリスは打って変わった様子で言葉を発する。
そこにどこか不吉を覚えて、シラノは声を掛けようとする。しかしそれよりも早くクリスは夜の暗がりの中に消えて行ってしまった。
一瞬、後を負い掛けようかとシラノは逡巡した。したが、結局は取りやめた。
シラノもまた疲れていたのだ。今日の姿は酒の影響もあってのこと。落ち着いた頃合いに改めて話し合えば、何らかの解決策も見つかるに違いない。そう思っていた。
それが叶わないことをシラノは翌日に思い知ることになる。
ロクサーヌに横恋慕していた貴族の策略により、殿軍として戦場に取り残されたシラノ達であったが、一部の隊員が敵に対して逆撃を与えることによってからくも本隊は離脱することに成功した。
その代り、攻撃に加わった隊員達が戻ることはなく、その中にはクリスも含まれていた。
クリスの死から数年後、シラノの姿はロクサーヌの傍らに在った。幼いころと同じようにただの従兄弟の関係として。そして修道女とその面会人として。
ロクサーヌはクリスの死後、修道女として出家していた。世を儚んだのか、あるいはクリスへの愛に殉じたのか。その胸の内を知る者はいなかったが、かつての交友を殆ど絶って信仰に生きる道を選んでいた。
シラノは軍を退役した。クリスが死んだ戦いによって怪我を負ったことも理由の一つではあるが、その本心はロクサーヌを守るためであった。
クリスを死に追いやった策略。それを企てた貴族はいまだロクサーヌを諦めていないことをシラノは知っていた。
修道女とはいえ、全てを修道院にて過ごすわけではない。俗世にも知己はおり、ときには出かける日もある。その日を狙って拐せば、手弱女ひとり如何様にもできるだろう。
そうした魔の手と人知れず戦うため、シラノはあらゆる栄達を遠ざけ、ただの無頼としてロクサーヌの傍らに在った。
さりとてシラノに今の生活への不満はない。どころか、嘗てないほどの活力を持って日々を暮している。
シラノは理解している。クリスを本当の意味で死に追いやったのは自身であると。勇気を持ってロクサーヌに告白していれば、あるいは現在とは違う未来が有り得たのだと。
そんな自分がロクサーヌの傍にいてよいのか、そう懊悩する日々が続いていたが、修道女となったロクサーヌを見て気付いた。ああ、クリスよ。お前への愛は消えることなく輝いているのだな。彼女が愛しているのは間違いなく貴様なんだな。
その日からシラノは死せるクリスを恋敵とした。自身の卑劣を恥じるシラノが、一分の隙もなく闘わざるをえない恋敵として。
事実それは恐るべき敵だった。死者は裏切らず、色褪せず、折りに付けてその姿を顕して愛を囁く。
故に、シラノもまた清らかに愛さなければならない。そこに薄汚い下心が入り込めば、ロクサーヌは忽ちに見抜き、シラノを軽蔑して二度と振り向くことはないだろう。
そう心に決めて、シラノは単なる従兄として今日もロクサーヌを訪れる。それを疎ましく思う者の影を感じながら。
一方、ロクサーヌに横恋慕する貴族は焦れていた。夫が死ねば容易く手に入ると思っていた女は、自分を袖にして修道院に入ってしまう。力尽くで手に入れようとすれば、シラノが邪魔をする。
もはや目的はすり替わった。女を手に入れたいという欲望はそのままだが、それ以上に自分を虚仮にした連中にしかるべき屈辱を与えなければ気が済まない。
ある日、シラノは気になる話をロクサーヌから相談される。修道院の主だった者たちに用事が重なり、ひどく不用心になる日が近くにあるという話だった。
そこに策略の匂いを嗅ぎ取ったシラノは、ひとまずロクサーヌを安心させると、自身は陰ながら護衛に付くことを決心する。
その当日、予想通りに幾人もの不審な男たちが修道院の扉を破ろうとする現場に、シラノは勇躍して襲いかかった。
一人、二人、三人。恐るべき剣の冴えを見せつけて賊共を切り伏せるシラノだが、相手もまたシラノが護衛にいることは承知の上。剣を抜き放つと数を頼みにシラノへと切り掛かる。
シラノが修道院の外で大立ち回りを繰り広げるかたわら、修道院の内側では修道女たちは年かさのロクサーヌを中心として恐怖と戦っていた。
いかほどの時が過ぎさっただろうか。やがて太陽が地より低いところへと姿を隠さんとする頃合いに外の喧騒が止み、扉へ拳を叩きつける音が二度三度と響き渡る。
俺だ、シラノだ。そこにロクサーヌは居るか。それとともに聞こえてきたのは、頼もしき従兄の声であり、同時に今にも息絶えんほどに苦しげな声であった。
慌てて扉を開け放つロクサーヌだが、全身に幾つもの傷を負い、血の紅と夕焼けの赤に染め上げれらながら倒れこむシラノの姿に悲鳴を上げる。
手当のために走り出そうとするロクサーヌを止め、シラノはまるで子供が母親にせがむように頼みこんだ。クリスからの手紙を持っているだろう。それを見せてくれないか。
ロクサーヌは訝しく思うも、それが最期の願いであろうことを察し、肌身離さず持ち歩く手紙束を取り出すと、シラノをかき抱くようにして共に文字へ目を走らせる。
全身に負った傷の痛みをも忘れ去ったかのように、力強く朗々と愛の言葉を謳い上げるシラノ。それは驚き、泣き叫ぶ修道女たちですら涙を捨てて聞き惚れるほどに美しい。
やがて太陽が完全に姿を隠し、暗闇が手紙すら隠してしまう。ロクサーヌは人をして灯りを届けさせようとするが、シラノの声は夜が訪れていないように高らかなままだった。
それが意味することにロクサーヌが気付いたとき、終生変わらぬ愛を誓って手紙を終わり、またシラノの手が力なく地に横たえられた。
愛する者に抱かれたまま、顔には微笑みを浮かべ、快男児シラノは永久の眠りについたのだった。
さて、創作としてのシラノの物語は以上です。
実際のところ、シラノ・ド・ベルジュラック自身は同性愛者であり、これは完全なフィクションです。
また、シラノを中心として描かれていますが、絶望を抱いて死に向かったクリスティアンや、シラノの死と同時に真実を悟ったロクサーヌの視点から観れば、物語は全く異なった様相を見せるでしょう。
ですがそれでも。これほど美しい物語はそう多くはないと筆者は想っています。
綺羅星の如き才能を持ち。比類なき勇敢さを備え。同時に救いがたき劣等感を抱き。それと知りつつ罪を犯すほど愚かで。それでもなお愛を求めて、愛を為すのが。
どうしようもなく人間の物語なのだと。筆者は幾度でもそう想うのです。