表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

古酒

 

 調弦の音がする



 薄く目を開けると、いつの間にか茜色だった筈の室内は海緑色に満ちている。


 月明かりに照らされて、からんと杯を煽った姿が見えた。


 コト、という音と共にゆっくりと爪弾かれる掠れた音。



 音が途切れない様にそっと弄って浴衣を捕まえる。素肌の上に布ずれの音がせぬ様羽織った。


 あ……


 入るであろう男の歌が無かった。

 ゆっくりと伴奏の音だけが紡がれる。



 鈍い腰を上げ、仮止めの紐で浴衣を止めて男に近付く。

 気配に気付いたであろうに、男は歌わない。

 女は男の杯を持ち、少し離れて柱を背に気怠く座った。



 からん



 冷たい黄金色が喉を滑ってゆく。

 息を少しだけ、深く吸った。

 爪弾かれる音に誘われて細く歌い出す。



 上に下にと流れる旋律に、沿う様にまた離れる様に歌う、安里屋あさとやの歌。



 歌が止み、掠れ音が止み、やがて三線を置く音がした。



 杯を置く音と共に、布ずれの音色。



 月は明るく、遠くで潮騒の音が聞こえる。



 柱の影に隠れて揺れる。



 潮騒の音と共に。



 










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ