クラスメイト
ユウトのクラスメイトサイドです
黒崎ユウトが異世界に召喚される直前、時を同じくしてユウトのクラスメイトたちは、入学式を終えて、新たな3年生である教室に向かっていた。
「私たち、もう3年生なんだねぇ」
「本当に振り返るとあっという間だったね」
そんな雑談をしながら廊下を歩いているのは、七瀬胡桃。茶髪のツインテールで、
身長が150cmとかなり小柄である。 クラスからはよく慕われており、小さくてかわいいなどと女子から揶揄われており、クラスのマスコット的存在だ。
七瀬の呟きに答えたのが、四宮愛梨。黒髪のロングヘアーに凛々しい顔立ちをしている。 そして七瀬とは正反対に四宮は身長が170cmほどありその容姿から、女子からの人気も高い。
「それそろ進路とか本気で考えないとね」
「まだ早いよ愛梨ちゃん。 3年生になったばっかりなんだから進路なんてもっとあとで考えればいいよ」
「そんなこと言ってるといざその時なったときに、困るわよ」
「相変わらず愛梨ちゃんは真面目だね」
「胡桃が不真面目なのよ」
胡桃の性格は、天然で、どこか抜けておりよく、転んだりしている。
勉強はあまり得意ではなく、いつも赤点ギリギリだ。 普段から、よく笑い、そしてよく怒り周りを笑顔にしてくれるそんな性格だ。
四宮愛梨は、普段は口数が少なく、あまり感情を表に出さない面がある。 本が好きで、よく教室で読んでいる。 成績も良く運動もできる四宮は、その容姿も相まって、男性や女性からもよくモテている。
そんな雑談をしつつも、気付いたら教室の目の前まで来ていた。 ドアに手を掛けようとしたその時、
後ろから誰かに名前を呼ばれた。
「よお! 四宮と七瀬じゃねーか!」
「おはよう二人とも」
後ろを振り向くとそこにはクラスメイトの、東条大輝と、結城明だ。
私たちを呼んだのが東条大輝だ。 東条くんは、だれが見ても体育会系のような外見で、身長もクラスで、
一番高い。 いつも笑顔で、時々熱くなったりして大抵のことは気合で何とかなると思っているためちょっと苦手な性格だ。 そして私たち二人に挨拶をしたのが結城明だ。 結城くんは容姿もよく誰が見ても、
イケメンと思うだろう。 おまけに勉学、運動においても優秀で、クラス以外の女子からもかなりモテる
毎週ロッカーにラブレターや、直接告白してくる人がいるほど、結城くんはモテルのだ。
「大輝くんも明くんもおはよー」
「おはよう」
胡桃はこの二人と幼馴染らしくいつも親しげに話している。 私はこの三人とは高校1年の時に知り合っている。 もう2年も経つというのに、あまりこのグループに馴染めず、どこか気を使ってしまう。
高校1年の時に、一人で読書をしていると、いきなり話しかけられた。 その時に胡桃と出会ったのだ。
高校に入学したときは、知り合いが誰もいなかったため不安だったが、胡桃とはすぐに仲良くなれた。
その時に胡桃は、東条くんと、明くんを紹介してくれて、そこで私はこのグループにいる。
「こんなところで立ち話も悪いし、さっさと教室入ろうぜ」
「そうね」
東条くんの意見に、私は賛成して教室に入る。 そこにはここ2年間で見てきたいつもの光景が広がっている。 いつものメンバーで雑談しているもの、一人で静かに読書しているもの、どれもこれも、変わらなかった。 只一つ変わっているものは教室だけだ。
何も変わりないクラスメイトを見ながら私たちは席に着く。 そしていつものようにお互い四人で円を作り軽い雑談を始める。 しばらくして周りを見渡すとほとんだの生徒が席についている。 だが教室の隅にある空席には、だれも座らない。 だってあそこは不登校の生徒の席だからだ。 私はその生徒の事を知っている。 1年のころ隣の席の人だったからだ。 その人は確か・・・・黒崎、そう黒崎くんだ。
黒崎君は私と同じでずっと本を読んでいた。 少し話しかけてみようかと考えたことはあったが、やめた。
ほかの生徒たちは自己紹介をしていたり、顔見知り同士仲良く話したりしている中、黒崎くんだけは、周りには目もくれずにずっと本ばかり読んでいた。 まるで自分の世界に閉じこもっているみたいに。
彼は結局、1年生の間は誰ても話しているところをみていない。 そして2年になったとき、黒崎くんは何の前触れもなく学校に来なくなった。 もしかしたら3年になったら来るかもしれない。 そう思いながらも一向にくる気配はなくただホームルームの時間だけが近づいてくる。 黒崎君の席をチラチラ見ていると不思議に思ったのか、胡桃が話しかけてきた。
「愛梨ちゃんなんかさっきからあの席見てるけどなにかあるの?」
「ううん、 只今日も来ないなって思ってただけ」
「確か不登校の奴が一人うちのクラスにいたな」
「そんな奴いたか?」
結城くんはどこか、思い出そうとしているようだ。 一方の東条くんは黒崎君のことをなにも覚えていないらしい。
「ほら黒崎ユウトくんだよ」
「そうだ思い出した」
「あぁ! あのずっと本ばっか読んでたやつか!」
私が名前を言うと結城君は思い出したように頷き、東条くんも、覚えていたようだ。
「それにしてもなんで今更そんなこと気にしてたの?」
「ただちょっともしかしたら学校にくるかもって思っただけよ」
「そんな1年も学校に来ない奴なんて今更気にする必要はないぞ愛梨」
随分と結城君は黒崎君に対して厳しい。 確かに不登校といえども、もとは同じクラスメイトだから多少は気にかけてもいいと思うのだが、結城君は、必要な言うという。
「まったくだぜ そんな軟弱な奴気にかけたところで無意味だ」
東条君も、結城君の意見に同意していた。 気にかけるなと言われてもさすがにかわいそうだと思った。
そのしているうちに予鈴のチャイムが鳴った。 各々が雑談をやめて自分の席に着いている。 私たちも席について待っていた。 3年になったとは言えいつもの日常に変わりはない。 今日も一日が始まる。
そう思っていた。
教室は静かになり各々が読書などで時間をつぶしている。 私も本を読もうと思い、本に手を掛けた瞬間。
「うわぁー なんだこれ!」
ひとりの男子生徒の悲鳴が聞こえた。 なにかと思うとそこには信じられない光景があった。
真っ白な光が教室全体を包むように広がっている。 クラスのみんながパニックになっている。 私も声は上げていないがそれは驚愕のあまりに声も出せないからである。 ただその光を見ていることしかできずにいたら・・・・・
「みんな落ち着くんだ!」
こんな状況でも結城君は冷静にみんなを落ち着かせる。 だが、その瞬間、一気に光が輝きだし、あまりの眩しさに意識を手放した。
「ここは・・・・・」
私は目を覚まして周りを見渡す。 クラスのみんなが倒れている。 おそらく私と同じで意識を失っているだけだろう。
「愛梨! 大丈夫か?」
すると結城君が呼びかけてきた。 私よりも先に目が覚めていたらしい。
「いったいどうなってるんだ・・・」
「わからない」
結城君は考えるように顎に手を当てている。 私たちのいる場所は祭壇のような場所でかなり豪華なつくりになっている。 ここは一体どこなのだろうか。 そんな考えてもわかるはずがない疑問が思い浮かぶ。
気付いたらクラスのみんなは、ほとんどが起き上がっていた。 みんなが各々にいまの現状について話し合っている。
「愛梨ちゃん大丈夫!?」
「四宮に明、無事か?」
すると胡桃と東条君がやってきた。 どうやら私たちを探していたようだ。
「二人も無事でなによりだ」
「ところでここどこなの?」
「一体全体どうなってんだよ」
結城くんが安心したようにしている。 胡桃は当たり前のような疑問を口にして、 東条くんは何が何だかわからないらしい。 無理もない。 いまの現状を理解するほうが難しいだろう。 今やるべきこと考えることが何も思いつかない。 そうただまわりのクラスメイトたちの混乱する声しか聞こえないなか、 大きな足音が近づいてきた。
みんなが一斉に視線を向けた先には鎧を纏った兵士たちにその中央には、とても美しい金髪のセミロングに
蒼い瞳の女性がいた。 水色のドレスを着てまるでお姫様のようだ。 いやお姫様にしか見えない。
クラスの男子が一気に静かになり、その女性に見とれている。
「勇者の皆様 ようこそウェクラノク国へようこそ!」
透き通るような声でお姫様らしき女性は私たちにそう言った