魔術の本『ヒトの記憶について』
小説の続きを誤って消してしまった為、後日付け足す形で更新していきます。
憎々しいほど青い空に、鳥が飛んでいた。それを見上げて、彼女はふとゲームの主人公が乗っていた、相棒の真紅の巨鳥を思い出す。空を飛ぶのは、どんな気分なのだろうか……わたしは度胸が無いから、スカイダイビングなんぞする気は無いが。
講座にあてがわれたがらんどうの教室で、英語の教師の声が響く。
「__ここはhave +過去分詞で__」
カツカツと快活に暗緑色の板の上を、白が滑る。13人程の生徒は、真面目にノートを書いて、このつまらない講座が終わるのをじっと待っていた。
彼女はノートに英文を書き写しながら、週末の計画を思い浮かべていた。
たいして長い間付き合いをしている訳でもない、5人の友人。彼女にとって教室で群れているカースト一軍二軍の有象無象より、ずっと大切な存在である。そもそも、煩いだけの他人など、言わないだけで「中身吸われて皮だけになってしまえばいい」とすら思っている。彼ら5人は他人を除外したがる彼女にとって、唯一例外的な存在であった。
そんな彼らと貴重な休日を過ごすのだから、講座の合間合間に会話のネタを考える。
(それくらいは許してもらわないと、受ける気なんかさらさらないし)