1冊目は魔術の本
初投稿ですので、至らない点や読みにくい点等があれば、ご指摘を願います。
また、この小説は私の都合により更新が疎らになります。後から付け足す事もあるかも知れませんが、どうぞ拙作をよろしくお願い致します。
夏特有の、不快な湿気と熱。嗚呼、熱い。熱くて息が如何にも吸えない。視界が霞んだ。寂しくなって、近くに居るはずの友人へ手を伸ばす。霞んだ目はあまり役に立ってくれなかった。手探りをして、床に指を滑らせながら、やっと見つけた友人の指先は冷えていた。当たり前か、つい先程まで冷房が効き過ぎて寒いと言っていたのだ。自分の体温を分け与えるように握る。握った手の中で、指が握り返すように動いて、その後のことは、覚えていない。
「__というのが、まあ、私の記憶」
硬い材質の床に座って呑気に分厚い本をパラパラとめくる友人も、如何やら自分と同じく状況が把握できていないようだった。でなければ、ボンヤリしているようで、聡明なこの友人はココドコ?と聞かれて、自分が(恐らく)死んだ時までの記憶なんか語るはずが無いのだ、多分。
「いやぁ、此処は魔術関連の本棚みたいだなぁ。魔法陣とか、魔法文字とか、いっぱい載ってる」
……訂正、やっぱり此奴は呑気してる。知らない屋敷と、知らない材質で出来た床に絶望した。
「いやいや、君さぁ……。何か、こう。自分が知らないとこに気づいたら居るっておかしいと思わないのかい⁉︎ねえ⁉︎僕のSAN値がピンチ‼︎」
薄情な事に、彼女は知らんがなとおざなりに返しただけだった。そんなに夢中なのかい、その本に。覗き込めば、意味の分からない記号やら数式やらでページが埋められている。よくこんなもの読めるなぁと感心していたら唐突に、彼女が顔を上げるものだから、もう少しで顎にあたるところだった。危ない危ない。
「私だって、不安だけど……不安だけどさあ‼︎」
あぐらをかいていた彼女が手をつかずに立ち上がった。僕にはそんなの真似できないよ……と呟くと、それこそ如何でも良いと辛辣に返された。理不尽だ!
「だって、私達……どう見たって人外になってるじゃんか‼︎」
グッと握った彼女の拳は、ヒトの物ではなかった。
「んん?私"達"?」
確かに達って言った?驚く僕は、彼女に今日で何回めかの呆れ顔をされた。