#7 鬼人のドリュー
7話目になります。レオルの初ピンチです。
突如来襲してきたドリュー、ボルビス、ジル。
ミントはボルビスと、クルージュはジルと戦いキャリアの一部を巧みに使って勝利した。そんな様子を最初は不安そうにしていたが、いつしかその不安も消え去り、瞳に安堵の色を滲ませながら怪物は見物していた。
「ドリューの手下をあっさり一撃で倒すなんて! こいつらならドリューをやっつけられる!!」
怪物が角を躍らせて高らかな気分でそう言った。
しかし、ドリューは部下達の敗北姿を目の当たりにしていながら焦るようすは微塵もなく、むしろ癇癪を起こしていた。
ドリュー「ヒッハッハ。キャリア使いが2人もいたとはな。オレの情けない部下を倒したくらいで調子に乗るなよ餓鬼! ちっと予定変更だ。貴様ら全員まとまてあの世生きにしてやるよ!!!」
ドリューは毛細血管を浮きだたせて、猛毒のような殺気だった声でそう言った。
クルージュ「ハッタリは止すんだな。氷漬けにするぞ!」
ドリュー「けっ、抜かせ。やれるもんならやってみろ。」
レオル「おいちょっと待てよ!! オレにも戦わせろよな。お前ら2人だけ戦ってオレの出番はねぇとか、そりゃねーぜ! おいドリュー!! このオレが相手になってやら。文句は無しだかんな!!」
ミント、クルージュのキャリアを纏った戦闘に、レオルの全身に力が漲って来た。そして自分も動きたいという強い意志をぶつけ、若干目を尖らせてレオルはそう言う。
クルージュ「・・どうやら、レオルがとても戦いたそうにしているな。じゃあオレは引かしてもらうよ。」
ドリュー「どいつが来ても同じことだ。所詮オレの敵ではない!」
レオル「そうこなくっちゃな。体がうずうずしてるぜ。お前がどんだけ強いのか知ったこっちゃねぇが、お前は一番ムカつくから絶対ぶっ倒してぇって思ってたさ。待ちわびてたよ、この時をな!」
ドリューとレオルの一騎打ちが始まった。ドリューは金切り声を上げて戦闘態勢に入り、勢いよく自分の元に疾走してくるレオルを粉砕させようと、あえてスペースを作りそこへ誘導させた。だが、ドリューは目の前のレオルが突然飛び上がり背後に回って行くなど考えてもいなかったので慌てふためく。レオルは小さな体で身軽にドリューの周辺を飛び跳ねながらスキを伺った。ドリューは予想以上のレオルのスピードに目が震え、残像を捕らえようと躍起になっている。レオルはドリューの腹元を狙って助走をつけ思いきり蹴り込んだ。
ドリュー「ドアァァ!!」
ドリューは体勢を崩し、衝撃で足がふらつく。レオルはよろけたドリューの顔面の頬に拳をめり込ませた。ドリューは後方へ大きく投げ出され地面に落下する。
レオル「おいおい、散々口でもの言っておいてその様かよ。一番情けねーのはてめぇだなドリュー!」
ドリューはかなりの深手を負った。鼻元から赤い血が流れだしている。
ドリュー「(バカな・・・・ガキのくせになんて強さだ! キャリアも使ってないというのに・・・) ぺっ、己小僧!! てめぇはオレを完全に怒らせちまった。絶対に後悔させてやるぞ!! うおぉぉぉ!!!」
ドリューは額に青筋を張らせて目尻を吊り上げ、唇をひん曲げながら何やら体を変形させていく。髪は逆立ち、爆発したように叫びながら全身を真っ赤に染めていき、鬼のように頭から角を、尻からは長い尻尾を生やした。レオル達はその変形ぶりに仰天し、危険を本能的に察知した。
ミント「な、何! さっきとは別人よ。」
クルージュ「あれが、本来のドリューだと言うのか!!」
「やっぱりそうだ、あいつだ! オレが恐れて逃げてきたのはドリューの中にあいつがいるのを感じてたからだ!!」
怪物が見かけに似合わない震えた声でそう言った。
レオル「!!! 何かやべぇことになってんなぁ・・・でも怖くもなんともねーぜ。お前の本気の姿が見れて願ったり叶ったりだ。」
ドリューのキャリアは‘エビルオーガ’ 体を鬼の如く変形させ、原型の数倍のパワーを手にし、戦闘力を向上させられる。その大変な剣幕は言葉では表現できないほど恐ろしい。パワーアップしたその拳は1度でも食らったらほぼ即死クラスであろう。憤怒の念が噴出したドリューは、鬼よりも恐ろしいものであった。
ドリュー「もう終わりだクソガキ共!! この姿を見て生きて帰れるなんて思うなよ。鬼人のドリューと恐れられたこの力を味わい、絶望し、散るがよい!!
死ね!!! 鬼人砕拳!!」
ドリューはレオル目がけて嵐のように怒り狂った砕拳を叩きつけた。レオルは紙一重でその拳を避けてその場をやり過ごす。地面に勢いよく叩き込まれたその鉄拳は地面を割り、足元を震撼させ、周辺に地震を引き起こす。レオル達の足場が不安定になり、ついには直立してはいられなくなった。
レオル「うっひょー、あんなの受けたら一溜まりもねぇな・・」
ドリューは尻尾を激しく回転させ、遠心力でさらに加速させてレオルに直進してくるかと思いきや、ミントとクルージュを視界に捕らえ、2人に目がけて跳躍して目を紅蓮色に光らせながら襲っていった。
ドリュー「ヒッハッハッハッハ。てめぇらから血祭りにしてやるよ!!!」
レオル「な!! この野郎、 お前の相手はこのオレだってんだよ!!」
ミントとクルージュは戦闘準備を整えていたが、レオルが反応して隙だらけとなっているドリューの顔面を殴り飛ばした。ドリューは不意を突かれて衝撃で地面に跪く。しかしドリューはすぐに立ち上がり、長い尻尾でレオルをなぎ払った。
レオル「ダァァ!!」
レオルは勢いよく飛ばされる。そこをドリューが猛追し、再度鬼人砕拳を放った。防御はしたものの、腹部に鉛のような重い拳を食らって、レオルは肋骨を何本か骨折してしまった。
レオル「ッッッってー・・・・・。」
ドリュー「ヒッハッハッハ、終わったな小僧。オレの鬼人砕拳をもろに受けてはもう立ち上がることはできまい!」
レオルは後方に大きく体ごと押され、何回か地面に打たれつけて倒れる。
ミント「レオル!!!!」
クルージュ「マズイ・・・もろに入った・・・」
レオルは口から吐血し、苦しがっている。
クルージュ「ミント! フォローに回るぞ!!」
ミント「わかったわ!」
ミントとクルージュはレオルの援護に回ろうとするが、レオルは大声でなぜかそれを阻止し始める。
レオル「来るなお前ら!!! 」
ミント&クルージュ「!!!?」
レオル「こいつは、オレの相手だ!!・・・オレ一人で倒してみせる!・・だからお前達は手を出さないでくれ!!」
ドリュー「ああ? 何を言ってやがるんだ貴様? 」
クルージュ「な!・・・・・・何を言っているんだ君は! コイツはボルビスやジルとは格が違う。口先だけの奴ではなかった。鬼人化して身体能力を上げてくるキャリアの使い手だ!! オレ達も戦うぞ。」
ミント「そうだよ! 私達の相手は大したことなかったけど、このドリューはいくらんでもレオル1人じゃ倒せないよ!」
レオル「・・・大丈夫さ・・・・オレが何とかして見せるさ・・」
レオルは何とか立ち上がり、震えながら何か策があるような顔つきでそう言った。
クルージュ「な、何とかって。君はまだ小さい。変な意地を張らなくてもいいだろ、強がりはよすんだ!」
レオル「ヘヘヘッ、問題ねぇよ、、今のは正直やばかったが、同じ手は二度とは食わねぇ。黙って見てろよ2人とも・・オレはこんな野郎には負けねぇからよ・・」
ドリュー「ヒッハッハッハッハ。オレの砕拳をまともに受けといてなおその自身とは・・根性だけは立派なもんだなヒッハッハッ。だがもうすぐ終わらせてやる。もう1発で確実にあの世へ葬り去ってやるさ!!! ヒッハッハッハッハ。」
危うしのレオル、‘エビルオーガ’のキャリアを使いこなすドリュー。果たしてレオルはどう攻略するのか?・・・・




