#6 来襲! ドリュー一味
6話目になります。とうとうキャリアを使ったバトルがスタートします!!
レオル達が一度倒した怪物が、口を開く。
「他に誰がいるんだよボケ! オレはお前達の言葉くらい話せるんだ。・・・だけどこのオレを負かすとは随分強いな!! お前達ならドリューを倒せるかの知れねぇな。」
蹴られた頭部を痛そうに撫でながら感心した様子で言葉を発した。
ミント「空耳じゃなかったのね。本当に喋れる動物がいたんだ・・・・じゃあ聞きたいことがあるんだけど、何でここに住み着いちゃったのかな? 迷い込んできたのかしら。」
レオル「そうだぞ! じっちゃんがお前のわめき声で寝れなくなったって言ってたぞ。」
クルージュ「それに誰だ? そのドリューってのは・・・」
2本の強靭な角先を僅かに揺らしながら怪物はこう続けた。
「そうだな・・・・迷い込んできたというか・・・・・仲間の群れにハブにされてだな、森からこんなところまでいつの間にか来ちまってな。この先の都会に行ってみようとしたけどよ、また同じ目に逢うんだろうなって思って帰ろうとしたら、帰り道に物騒な連中が現れたんだ。オレは黙ってその場を通り過ぎようとしたんだが通せんぼうを食らってな。旨そうな肉だとか言っていきなり襲いかかってきたんだ。返り討ちにしてやろうって突撃したんだけど何せ向こうも3人組だったから苦戦してな、そのリーダー格であるドリューって呼ばれてた奴が一番危ねぇんだ。
オレは身の危険を感じて本能的に逃げたんだ。なんとか振り払ったんだがな・・街には行けねぇし、森もあいつらがいて帰れなくなって・・・孤独になって・・・夜が来ると何だか怖くなって・・・大声で叫んで敵から身を守ろうと必死だったんだ。」
レオル達は体勢を崩し、敵意を消してその話を聞いていた。事情がある程度分かったので、その怪物にミントは話しかける。
ミント「・・そうだったのね。あなたの雄叫びは街まで毎晩聞こえてきて大騒ぎになってたわ。それでとんでもない怪物が住み着いちゃたんだって思って、今日は退治しにきたの。でも悪い怪物じゃないみたいね。 辛かったでしょう?
ずっと1人きりで・・・でも安心して。私達が来たからにはもう大丈夫!」
ミントは自然と筋肉が弾むような微笑みをしていた。次にレオルが手を頭の後ろに組みながら話しかける。
レオル「オレも喋れる動物は初めて見たぜ。なるほどな、そういうわけだったのか。でもな・・・・・・お前でかいけど旨そうなのは事実だよなぁ!」
レオルは拾いものをしたかのような笑顔を浮かべてそう言ったが、怪物は急にレオルを睨み付けて話す。
「てめぇ! オレは旨くなんかねぇよ!! まずいまずい! ゲロが出るよ。」
レオル「ああ、悪い悪い、そんな怒んなって・・・でもしょうがねーだろ、オレは山奥で魚や獣をハントして飯食ってたんだからよー。 肉にしか見えねぇんだよ、、でも安心しろ! お前は食わねぇからさ。」
「・・・・ふん、まあいいさ。オレは1対1ならそう簡単に倒せねぇよ!」
怪物は角と角の間に不思議なしわを寄せてへそを曲げながらそう言った。
クルージュ「!! あそこから誰か来るぞ!!」
クルージュが突然そう言い出すと、怪物の背後に怪しげな3人組が姿を現した。レオル達は何者かとすぐさま注意を払った。
「・・!!! 出たな! ドリュー!!」
レオル「何!!!」
怪物はレオル達の居る方へ駆け寄りドリュー達を身構えた。ドリューはオレンジ色の髪をし、いかにも殺人鬼らしい鋭い目つきをしている。側近にボルビス、ジルという2人の男の部下を引き付けている。
ドリュー「騒がしいと思ってたら、この前逃がしてしまった怪物じゃねーか。ヒッハッハ、、シューク村の奴等は詰まらなすぎたからな、これからデゴル街をこのオレが支配してやるところさ。全市民をオレの奴隷にして、死ぬまでボロ雑巾のように使ってやるつもりさ、ヒッハッハッハッハハ。」
ドリューは高らかに、見下すような冷笑をしながらそう言った。3人はその言葉に対し一気に敵意が湧いてきた。傲慢で険悪で、いかにも人を侮辱したその面には特に・・・ レオルは肌が粟立つように感じ、闘志が体の奥底から一気に溢れ出していった。動脈が電気のように走り込み、血が火へと滾っていく。
ボルビス「ドリュー様はさぞかし退屈なさってるんだ。お前達に用はない、邪魔だどけ!!」
ボルビスはソプラノボイスでいかにも憎たらしくそう喋った。
ジル「間抜けな連中め。」
ジルは太く低い声でそう言った。
ミント「街を乗っ取るですって? そんなこと私達が絶対にさせないわ!!」
クルージュ「出来るものならやってみるがいいさ、ここから先に通ることができたらの話だがな。」
レオル「お前らムカつく奴らだな!! オレがぶん殴ってやるよ!!」
ドリュー「随分強気だな、クソガキ共! オレの邪魔をする奴は老若男女どんな奴でも容赦なく叩き潰す。そこの殺し損ねた怪物も含めてな。おいボルビス。相手をしてやれ。」
ボルビス「分かりました、ドリュー様。こんなガキ共は私一人で十分です。」
ボルビスはそう言ってレオル達に接近していく。どう甚振ってやろうかとあれこれ思考しながらゆっくりと。
ミント「結構舐められたもんだね。そっちが1人なら私が相手をするわ。レオルとクルージュは下がってて。」
レオルはミントを心配そうな顔つきで見つめ始めた。だがクルージュがニッコリと笑いながら鼻を膨らませてレオルに話しかける。
クルージュ「心配するなレオル。ここはミントに任せておくんだ。」
レオル「(ミントってキャリア使えるんだったよな!・・) よし! 任せたぜミント!」
レオルとクルージュはミントの戦闘の邪魔にならないように脇へ移動した。
ボルビス「女一匹が相手かよ! ふさけやがって!!」
ボルビスは怒りを露わにさせ、ゆっくりだった足を速く走らせミント目掛けて殴りかかろうとする。だが、ミントはひらりと身をかわしてボルビスの背後に回り込み、素早く両手を前にだし、何やら技を発動させた。
ミント「聖極手術」
ミントの両手から巨大な白い手が出現して、ボルビス目がけてその手は伸びていく。ボルビスは初めてみる不可思議な現象に困惑していた。その間にその白い手はボルビスのすぐ目の前に迫りきり、勢いよくボルビスを後方へ突き倒した。
ボルビス「ドォワァ!! (何だあの手は・・・)」
ボルビスは数十メートル突き飛ばされ、木に後頭部を強打してそのまま気絶した。
レオル「うおぉ!! すっげーな今の技!」
ジル「何! ボルビスがいとも簡単に・・・何だあの女は!」
ドリュー「(キャリア使いか・・・) チッ、だらしない奴め。完全に油断してやがったな。・・・ジル!! 次はお前が行け。お前の自慢のパワーでねじ伏せてこい!」
ジル「・・・・・は、はい。ドリュー様」
ジルは初めて目にするキャリアにこっそり動揺していた。だが決して顔には出さずに堂々と体全身の筋肉を自慢げに見せびらかすようにミントの前に対峙した。
ジル「とんでもない女の子だぜ。だがオレのパワーの前では通用せんぞ!!」
ミントはそのごん太い声帯と肉体の前に多少気迫負けをしていた。
クルージュ「待て! オレが相手になろう。 こっちだ!!」
クルージュがジルを呼び止め、ジルはそれに素直に応対し、長年鍛錬してきた自慢の肉体美をさらけ出しながら体ごとクルージュの方面へくるりと向けた。
ジル「カッコつけやがって・・お望み通り相手になってやるよ!!」
ジルはクルージュ目がけて疾走し、鋼のような拳を浴びせようとしたが、クルージュは右手を前に出して全神経をそこへ集中させた。ジルの拳がクルージュの右手を力で制圧しようと、体全身を大きく震わせそこに投げ込まれる。
クルージュ「はぁぁぁ!!!!」
その奇声にジルは気にせず一気に突っ込んでいく。すると、クルージュの右手の周りに突如空気が息をするかのように音を立て、凍てつくような吹雪が舞った。次の瞬間、攻撃を仕掛けたジルの太い右手が一気に凍り付いていった。手首から徐々に進行し、右肩の筋肉、神経まで完全に凝固してしまう。そしてクルージュは凍らせたジルの右手を根元から蹴り落とし、体から切り離した。ジルの右手は木端微塵に破壊され、ガラスが床に落ちて割れるかのような音が鳴り響くのであった。
ジル「アァァァァァ!! オレの・・・・オレの右手が!! アアァァァァ!」
クルージュのキャリアは‘アイスマスター’ 体から自在に氷系の物理技を出すことが可能。対象者を凍らせて動きを封じたり、フィールドを氷で覆い尽くすことができる。寒帯、冷帯では相性は抜群となり威力が倍増することであろう。
ジルは現実を受け止められず、頭が混乱して無惨な叫び声を上げながら失神して気絶した。
クルージュ「・・・どうやらオレ達を少々侮っていたようだな? ドリューとやら。」