#5 戦闘! A級怪物
5話目になります。ここからバトルが本格化していきます。
それと、悪魔の仮面という短編小説もアップしました。ぜひよろしければ読んで下さい。
姿を現したその怪物は、頭の横面から2本の岩石をも砕いてしまいそうな鋭い角を生やし、濃茶色の体表は、それとは対照的に柔らかい毛で覆われている。
レオル「うっひょー、随分でっけー奴だな。」
クルージュ「呑気に観賞に浸ってる場合じゃないぞレオル。こいつは一筋縄ではいきそうにないぞ!」
ミント「そうよ。あなたが山で倒した猛獣とは訳が違う。ここは3人で協力しましょう。」
「ヒギャァァァァァ!!!!」
突然その怪物は、大地を揺るがすかのような雄叫びを上げ、広く周辺に轟いた。3人はあまりの声音に反射的に耳を塞ぐ。そしてその怪物は、勢いよくレオル達に突進してきた。
クルージュ「避けろ!」
クルージュがそう叫び、レオル達3人は左右に飛び、攻撃をかわした。
すると、すぐさま怪物は向きを変えてクルージュ目がけて突っ込んできた。巨体の割にそんな素早い動きをするとは予測していなかったクルージュにとっては誤算だったために応対が遅れた。クルージュは両手で怪物の巨体を受け止めようとするが、力負けして後方へ飛ばされ、背中から地面に激突した。
レオル「クルージュ!! あの野郎・・何てスピードだ。」
横たわっているクルージュに向かって怪物は鋭い角で攻撃しようとした。
ミント「クルージュ!!」
角がクルージュの身体を突き刺そうとした直前に、クルージュは横たわったまま体を思いきり右に傾け、その勢いで数回転して攻撃を何とかかわした。銀色の切れ味の良い角は地面に深く突き刺さった。そのスキにクルージュは素早く立ち上がり体勢を立て直した。
クルージュ「オレとしたことが不覚だったな・・予想以上に素早しっこいぞコイツは。」
クルージュは少々息を荒らしながらそう言った。
ミント「あのパワーとスピードは普通の猛獣とはケタ違いだね。」
レオル「オレもこんな奴は初めて見たぞ。ただこの類の奴は大体頭の天辺が弱点なんだ。あそこをうまく攻撃できればひるむはずだ。」
レオルは心得顔でミントとクルージュに向けてそう伝えた。地面に刺さっていた角が抜き終わると再び馬鹿でかい咆哮を上げてレオル達を襲ってくる。
ミントとクルージュは素早く左右にかわして、レオルのみ上空へ回避した。レオルはそのまま弱点の頭を狙って蹴りを入れようとしたが、怪物はすぐさま上を見上げてレオルを視界にとらえると、怪物はそのまま鋭い角でレオルの肉体を貫通させようとした。
ミント「レオル! 避けて!」
レオル「やべぇ!!・・・だーけど・・」
レオルは身軽な体で空中でのあの体勢から体を小さく丸くして大きくのけ反り、角の軌道をかわして地面に着地した。
レオル「ヒャッホーー」
レオルは無邪気に声を上げ、スリルを楽しんでいる。クルージュとミントは終始驚きながらその様子を見ていた。レオルはすぐさま怪物の横腹めがけて蹴りを入れた。しかし、柔らかい毛で覆われているものの、巨体な怪物はかなり鋼鉄であったために、わずかによろける程度であった。
レオル「えー! マジかよ。硬い体してんな。」
クルージュ「オレは少し君を侮っていたよレオル。年のわりには十分すぎるほどの動きだ。」
クルージュは口元を和ませながらレオルを褒めたたえた。
ミント「横からじゃびくともしないみたい。レオルのいった通り頭の上の少し凹んでる部分が弱点のようね。私とクルージュであの怪物を引き付けるから、その隙にレオルは今度こそ攻撃を決めておくれ。」
クルージュ「賛成だ。」
レオル「・・オレは別にいいけど大丈夫なのか2人で?」
少し心配そうにレオルは問いかける。
クルージュ「ああ。問題ないさ。オレ達を信じて思いっきりやってくれ。」
クルージュは眼光の奥まで光らせて、レオルの力を信じてそう託した。ミントも同じような素振りを見せる。その直後に怪物がこれまで以上の猛烈な勢いで、怒りを露わにしながら2本の角を重心に攻めてきた。
「ガァァァァァァ!!!」
レオル「そんじゃ、任せたぜ!!」
レオルは2人を置いて天高く舞った。額から流れ出るしょっぱい汗を肌に感じながら・・ 怪物は一瞬上空を見上げたが、すぐにミントが注意を引く。
ミント「こっちよ!!! 怪物さん。」
クルージュ「いつでも来やがれ!」
その声を聞き、怪物はミントとクルージュに向かって体当たりをした。だが、2人は力を合わせてなんとかその攻撃を食い止めることに成功した。両手を大きく前に出し、足の爪先で地面に必死にふんばりながら・・ 怪物も全力で押し出すが、2人の力は怪物の想像を遥かに超えていて、動かすことができなかった。両者は拮抗し一歩も譲らない。2人が食い止めているその時に、レオルが上空から怪物の頭をめがけて右踵を大きく上げ下ろした。
レオル「喰らえ!!! でっけーの!!!!」
レオルの右踵は怪物のくぼみにぴったりとはまり、そこに直撃した。
「フギャァァァァ!!!! 」
すさまじいうめき声を上げて怪物は体を激しく揺さぶった。その反動でレオル達3人は少々吹き飛ばされたがすぐに体勢を立て直す。怪物は何度もよろけ、泣き声混じりの情けない声を上げ、最後は人のように直立してそのまま地面に倒れ込んだ。流石のレオルも息を乱し、青髪が汗で濡れて少しばかり最初と髪型が変形していた。
ミント「やったわ!! ついに倒せたのね。」
クルージュ「思ってたより苦戦したな。」
レオル「ああ。正直オレ1人じゃ結構きつかったぜ。サンキュー2人も。」
3人は怪物を倒したことで一件落着し、怪物との戦闘で消費した体力を徐々に回復させていった。だが、次の瞬間、倒れこんでいた怪物が最初は左足から、右足、両手、頭と動き始めて再び起き上がった。レオル達は度肝を抜かして、再度危機感に襲われる。しかし怪物は、レオル達を視界に入れると攻撃を仕掛けることなく静かに口を開いた。
「シギャァァァァ!!! イッテーなこの! やってくれたな。」
レオル達はまるで未知の異星人に遭遇したかのように、不思議そうな顔つきをしてその言葉を耳にした。
ミント「い、今、喋ったよね?。」
ミントは自分の耳がおかしくなったのではないかと疑ったが、そうではないことを確かめるべく2人に問いかける。2人は戸惑いながらも首を縦に振った。
レオル「お前!! 今、喋ったんか?。」
レオルは大声で目を大きく見開いてそう怪物に問いかけた。レオルは何度もこの手の猛獣を見て倒してきたことだったが、1度として人間の言葉を話せる動物には出会ったことが無かったために頭が混乱してきてしまい、現実なのかを確かめるような顔つきで言うのであった。そして、怪物が返答するべく口を開くのであった。