#29 最凶悪魔復活計画
大変長らくお待たせいたしました。
本日より連載を再スタートします。
悲劇のキャリア試験から6年後、世界各地には新築の建造物や住居ができ、山地は平然とし、河川は緩やかに流れ、多種多様な生物が穏やかに暮らしているというごく平和な時が流れていた。表面的にはそうであったものの、陰での暗躍者達は音沙汰もなく任務を遂行していたために世間に知れ渡ることはなかった。ある集団はとてつもない計画を企てているとは誰も知らない・・・
とある森の廃墟にて、重要な作戦の会議をしている一派・・・通称「神風」がいた。「神風」のリーダー格であるラギアは、4人の部下であるレッドゴーレム、ブルーファイター、イエローマジック、グリーンボムと共に不気味に、右頬を吊り上げながら喋っていた。
ラギア「まさに絶好の機会だ。5年に1度の祝祭日・・・・フハハハハ、想像しただけでも滾る。」
レッドゴーレム「確かに・・・」
ブルーファイター「私達が連結すれば王宮兵士らも軽く打破できるでしょう。」
グリーンボム「ところでそんなに強いのですか? そのゾディアというのは。」
ラギア「強すぎるが故に何十年も封印されているんだ、奴がいれば世界征服も容易いだろう。」
イエローマジック「しかしラギア様。本当にそんな上手くいくものでしょうか?」
ラギア「我々の計画がかつて失敗に終わったことがあったのか? フハハハ、心配ないさ、必ず成功する。」
イエローマジック「そうでしたねフフフ、杞憂でした。」
ラギア「この世は平和ボケしすぎている。実につまらない世界だ・・・退屈だ・・・もっと緊張感のある世界!! ピシッと閉まりきった空間が欲しいぃ・・・我々が面白くさせるんだ!! ゾディアを世に解き放ち、秩序を乱しまくって全世界を驚愕させてやるのさ!!! フハハハハ!!!」
気分が高揚し、両手を上にかざしながら狂ったように声を上げるラギア。部下4人も興奮状態に陥っている。するとそこに、黒い鉄仮面を被った大男が足音を立てながら廃墟に入り込む。ラギア達は廃墟の入り口の方に視線を向ける。
ラギア「遅いぞベベラ、相変わらずだな。」
ベベラ「すいませんね、ちょっと寄り道してまして・・」
グリーンボム「ベベラ隊長が遅刻してこなかった時なんてないですからね。」
ベベラ「悪い悪い。ラギアから作戦の概ねは事前に聞いてある。オレの任務は邪魔者の駆除だそうだ。」
ラギア「ああ、指定した通り動いてくれればいいさ。」
ブルーッファイター「いよいよ明日は決行の日ですね・・」
ラギア「フハハハハ、全くだ。待ちわびたぜ・・・」
「神風」はゾディアを復活させるという恐ろしい陰謀を企てていた。ゾディアとは30年前に全世界を震撼させ、絶望の淵へと陥れた悪魔である。その強大な力の前に幾多のキャリア使いの戦士らが死闘を繰り広げたが、挑んだ者は尽く返り討ちに遭い、誰一人として生還しなかった。だがルーペというキャリアの達人がたった1人でゾディアを、魔道具である封印の杖に封じ込めたのだった。封印は莫大な生命エネルギーが削られるためルーペは命を落とした。その結果ゾディアは以来世に出ることはなくなり、世界は明るい光に包まれていった。杖はビクトリア王国の宝物庫に厳重に管理され、今でも保管されている。そんな歴史上最凶の悪魔を「神風」は復活させようとしているのであった。
「神風」のメンバーはもちろん全員キャリア使いだ、ちなみにレッドゴーレム、ブルーファイター、イエローマジック、グリーンボムの4人は本名でなくコードネームである。
そして朝日が昇り、世界三大都市の1つであるここ、ビクトリアシティは隣接のビクトリア王国の城下町と言って差し支えないだろう。今日は5年に1度開催される祝賀祭であり、王国の誕生記念日でもあるのだ。世界各国の有数の王族、商人、芸人、兵士、キャリア使いが一斉に集う。街の行列はもちろん、ほんの少し動いただけで肩がぶつかってしまうほど大勢の人間が行き交い、どこもかしこも押し合うように混雑している。夜になれば店中のネオンが絶妙に輝きだし、極上の酒が街を湿らせ、荒れ狂うように飲み、談話が一晩中絶えなくなる。また数多くのイベントも行われ退屈することはない。ビクトリア王国の王や王妃ももちろん参加する。城の兵士らは、城と城下町を護衛を任される。
ビクトリア城内にて、王のセビルと王妃のメアリーが声のトーンを上げながら会話をしている。
セビル「今日は祭りであるな、民はもちろん、私達も大いなる一時を過ごそうではないかメアリー。」
メアリー「そうねぇ、ずっと楽しみだったわ。」
大臣のサックと秘書のエリーナも会話に混ざる。
サック「他国の外交官などもお見えになります。我が国の経済発展の好機ですね。」
エリーナ「交易も盛んになります。自国では入手困難な資材も数多く調達されます。」
セビル「わかっておる。新たな条約締結の交渉をする予定だ。警備も普段より厳重にせなばならんな。これだけ多くの人民が集まるのだ、侵略者が潜入するかもしれない。」
サック「その点に関しては心配ないかと・・既に強力な護衛陣を手配済みです。」
メアリー「あら、彼らが来てくれるのね、頼もしいこと。」
エリーナ「ご心配なされなくても平気ですよ。これまで1度として侵略を許したことはありませんから・・・」
セビル「ああ、いざとなればこの私も戦うさ・・・・さあ!祝祭はもう始まっている。私達も行こうではないか!!」
メアリー「ええ。じゃあサック、エリーナ、ここは頼みましたよ。」
サック「承知いたしました。」
エリーナ「もちろんです。」
サックとエリーナは城に残り、雑務と城の警備に取りかかった。ビクトリア王のセビルと姫のメアリーは互いに手を取り合いながら城下町へと足を運び参加するのであった。ビクトリアシティでは既に東西南北、津々浦々から人が集い、大繁盛していた。
「へいらっしゃーい! 格安ラーメンやってるぜ!!」
「全商品半額ですよ!!!」
「先着300名限定商品欲しけりゃうちに来な!!!」
「大食い選手権やってまーす!!!」
「ゲームチャンピオン大会開催中だよ!!!」
「格闘チャンピオン大会参加者募集中だぜ!!!! ルールは単純だ! 1対1で試合をして最後の1人になった奴が優勝だ!! 腕に自信のある奴は来い!! あと2人で締め切るぞ!!」
数多くあるイベントの中でも最も盛り上がるのがこの格闘チャンピオン大会であろう。8人でランダムにトーナメント戦をして準決勝、決勝へとコマを進め、勝利をつかみ取った者が優勝である。観客も大勢いるので、相当実力が無ければ参加しないだろう。毎回派手にやられる人も多くない。
「お、面白そうなことやってんじゃん、オレも参加していいか?」
「ああいいぜ兄ちゃん! 相当腕に自信が無いとやられちまうからな、お前さんは6番だ、覚えておいてくれ。」
「あいよ、任せときな!」
そう言って6番のカードを手渡された青少年は、山吹色の髪を風になびかせ、6年前の感情豊かでおちゃらけていた頃より遙かにたくましい顔つきをしていたブレイドであった。
「さああと1人だ! 誰か腕に自信のある奴はいねぇか!!」
あと1人の挑戦者がなかなか現れず、最悪7人で試合をしようかという提案も出でいたが、ようやく参加者が現れた。
「おーい!! オレも参加していいか!!?」
「おお! 当たり前だぜ、ちょうどあと1人欲しかったとこなだ、腕に自信さえあればいいぜ。」
「ありありだぜ!!」
「いいね兄ちゃん!! ほれ、2番だ、持っておきな。」
「サンキュー。」
そう言って2番のカードを受け取った青髪の青少年は、これもまた6年前とはすっかり見違えるほど大人顔つきになり、背丈も175cmまで伸び18才になったレオルであった。6年間がっちりと鍛え上げたレオルは自信に満ち溢れた表情をしていた。
レオル「ほー、すっげぇ人溜まりだな。誰かに会えるかと思って来てみたけどこれじゃ分かんねぇな・・・・ん?・・・あいつはもしかして・・・」
レオルは人混みの中からブレイドを視界にとらえた。
懐かしい面影・・・レオルとブレイドの再会の行方は・・
ゾディア復活計画・・・集団「神風」・・
波乱のビクトリアシティ編が開幕する!!




