#28 別れ
マリーフ「レオルかい。キャリア試験クリアしたみたいだね。おめでとう。それに・・・・あなた達は、ブレイド君にゼウス君・・・なるほど、3人同じチームだったわけか。実はアールドやムース、それに官長とも音信不通になってね、来てみたらこの通りなわけさ。アールドは・・・・残念だわ。首謀者はアンタ達2人だね、その顔は・・・・シャープとピエトロ。受付係として1度全員の顔写真と名前の入った受験票見せて貰ってるから忘れはしないわよ。とっとと消えなさい。」
ムース「マリーフ!・・・」
ピエトロ「??・・・受付の人?」
シャープ「・・(この女・・・何だったんださっきの技は・・)何しに来たんだいきなり?」
マリーフ「何って、神聖な場所を汚すアンタ達に制裁を加えに来たんだよ。」
レオル「お姉さん! コイツらは恐ろしい奴らなんだ! 殺されちまう・・・・」
ブレイド「そ、そうだよ! あのごっつい試験官でさえも・・・」
シャープ「最後の晩餐のつもりだったのに、とんだ邪魔が入ったな・・・フリーズ!!」
マリーフ「クラウディステルス。」
シャープ「!!?」
マリーフは突如皆の前から姿を消した。その場にいた全員は目を見開いて驚くばかりであった。
ピエトロ「・・消えた?・・」
シャープ「フリーズが当たらない・・・透明になれるキャリアか?・・・いや、さっきのは・・・」
マリーフ「ウィンディブリーズ!!」
シャープ&ピエトロ「!!!・・・何・・」
消えていたはずのマリーフが突然姿を現して技をかける。
次の瞬間、シャープとピエトロのみ、周辺に突風が巻き起こり宙に舞った。地上から約20mのところまで上空へ飛ばされる。そしてそのまま遥か彼方の方角までその風に2人は飛ばされてしまうのであった。
シャープ「・・どうなってる!」
ピエトロ「風・・何者だ・・彼女は・・」
マリーフ「サンダーフォース!」
レオル達の視界に映らなくなった場所で、2人は突如落雷に逢うのであった。2人は相当なダメージを受けることとなる。
シャープ「・・ハァァァ!!・・」
ピエトロ「・・これはぁ・・・・なるほど」
マリーフ「・・これでよしと。」
一同は鮮やかにシャープとピエトロを撃退させたことに終始驚嘆するのであった。
ゼウス「貴様・・何者だ。」
マリーフ「貴様? なぁにその乱暴な口は。私はマリーフよ。危なかったわねみんな。」
ムース「あなた、そんな能力だったなんて、初めて見たわ。」
ブレイド「あの2人をいとも簡単にやっつけちまうなんて・・(てか、この人すごい可愛い~~な)」
レオル「消えたり、飛ばしたり、雷落としたり、ななな何でもできんのか!?」
マリーフ「あんまりこの力、人前で見せたくなかったんだけどね。まあ仕方ないか。あの2人はあの程度の攻撃じゃ全然効かないわよ。何でここにいたのか・・不思議だわね。」
レオル「あいつら・・クソッ。よくわかんねぇけど、ハングじいさんはあいつらに・・・殺されて・・」
ムース「嘘・・・」
マリーフ「官長がやられた!?・・・」
ブレイド「危うくオレ達殺されちまいそうなとこだったんだ。すごい怖かったな・・」
マリーフ「・・じゃあワイザーもタールも・・・悲劇ね、酷いわ・・・でもあなた達だけでも無事でよかった。私はお天気屋さんだよ。天候を自由に操れるキャリアなの。‘ウェザーマスター’ってとこかしら。晴れ、曇り、雨、雷、雪、風も少し操れて空も飛べる。まあそんなとこ。開花には相当な時間と労力を要したわね。ちなみにさっき私が消えるように見えたのは雲の力を応用させた技ね。」
レオル「えー!! そりゃすっげぇなぁー!!」
ブレイド「天気??・・」
ゼウス「・・そんなに腕があるならアンタが試験官やればよかったんじゃないのか?」
マリーフ「うーん、私まだ新入社員だったしねぇ、でも今日で終わりか・・それに今喋ったことは秘密だからね。」
レオル「あ、ああ・・」
ムース「私は・・・試験官失格ね。力が・・・及ばなかった。」
レオル「・・」
ブレイド「・・」
ゼウス「・・」
マリーフ「何言ってるの。あなたは十分頑張ったわ。それにあなた達3人もね。後のことは私が処理しておく。だから安心して。うん、キャリアの開花までは見たところ3ヶ月とかからなそうだわね。これから先は大変よ・・・どんな能力者がいるのか・・私も把握不可能。相当頭が切れる奴もいる・・・いいかい、修行は1人ですること。誰にも見られたくない力の1つや2つはあるからね。とっておきとか。」
ムース「・・・申し訳ないわ。」
レオル「なるほどー。」
ブレイド「うん・・なぁそれよりゼウス、何か因縁でもあんのか・・あのシャープって奴に。」
レオル「オレも気になったな・・・ああ、別に言いたくなきゃ言う必要なんかないぜ。」
ゼウスはレオルとブレイドを見つめて大きく深呼吸をする。そして口を小さく開く。
ゼウス「ふん、別に何も・・奴がオレの顔に覚えがあっただけだろ・・オレは奴のことは何も知らん。他に言うことはない・・・」
レオル「へぇ、なーんだ。やっぱ知らなかったのか。でも何であいつだけお前のこと知ってたんだ?」
ゼウス「・・・・さあな。貴様に言う必要はない。」
レオル「そ、そっか・・・ちぇっ。まぁいいーや、人に言えねぇキャリアの1つや2・・・じゃなかった。秘密の1つや2つはあるもんな。」
ブレイド「それならオレもあるな~~絶対言えないことが・・・・だから言わない!」
レオル「ブハハ、何だよそりゃ~~」
ムース「フフ・・面白い子達ね。」
ゼウス「・・ちっ・・・(言えるかよ・・・こんなこと・・・)」
マリーフ「さあ、キャリア試験お疲れ様! 空前絶後の事態があったけれど、あなた達はこれから輝かしい未来が待ってるはずよ! 特別に私が飛ばして差し上げましょうか? どこか遠くまで!」
レオル「え? どういうことだ?」
ブレイド「飛ばすってなんだい?」
マリーフ「だから、私の力であなた達を運んであげるって言ったの。さっきあの2人をどこか遠くまで吹き飛ばしたでしょ? あれみたいにさ。何処へ行くかはランダムね。3人バラバラにはなるけど、サバイバルも大切よ。やってみる?」
3人は突然のマリーフの言に信じがたい顔つきをし始める。
ゼウス「何?」
レオル「ふぇー! 何か面白そうな話だな!」
ブレイド「風でオレ達を?・・・えー~~着地する時とか絶対痛いじゃん!」
マリーフ「大丈夫よ、私はそんなに下手っぴじゃないから。」
ブレイド「ホント~?」
マリーフ「もちろん。」
ブレイド「じゃ決-まり!」
レオル「ちょちょ・・決めんの早い・・・ってことは、オレ達ここでお別れってことに何のか?」
ブレイド「・・あ、そーか。なんか寂しくなるな。まあ今日だけのお付き合いだったけど~」
ゼウス「ふん、これで二度と貴様らに会うこともないな。」
レオル「何言ってんだお前ら! 誰が最初にキャリア使えるようになんのか勝負だかんな、それに・・2人がいたからオレもここまで来れたしな、ありがとな、ブレイド、ゼウス。またどっかで会おうぜ! オレ達友達だかんな!」
レオルは拳を握り締め、眼光をギラギラと太陽の如く光らせて強い意志をぶつけた。ブレイドは少し下を向いた後に、レオルの真っ直ぐな瞳を見つめて笑顔で言う。
ブレイド「へへぇ、そうだな!!」
ゼウス「・・・(友・・だと・・・)オレは会わんぞ・・・まあ・・・どっかで会うこともしれないがな・・」
ゼウスは格好良く決め台詞を吐いた後、目線を逸らして照れながら言った。ゼウスはただ嬉しかったのだ。自分という存在が認められていることに。それ故に希望も抱くのであるが、反対にまた闇を抱えることとなるのであった。
レオル「よっしゃー! そんじゃどこへでも飛ばしてくれ!!」
ブレイド「おお! お願いします!」
マリーフ「フフフ、じゃあ行くよ! 準備はいいね!」
レオル&ブレイド「ああ!!」
ゼウス「やるならはやくするがいい。」
マリーフ「では、ウィンディブリーズ、スペシャル!」
マリーフがそう唱えるとレオル達3人は風の力で宙に浮かび上がる。今まで体感したことのない不思議な心地に戸惑いながらも目を見開いて驚く。そのまま勢いよく上空へと舞い上がりピタゴラタワーと同じ背の高さの位置まで来る。爽やかな柔からい風に吹かれて爽快な気分を味わう。清々しい感じを覚えながら3人は別方向にそれぞれ運ばれていくのであった。
レオル「うおお!!」
ブレイド「ワワわぁ!!」
ゼウス「ドワ!!・・・」
レオル「ブレイド!!・・ゼウス!!・・また会おうな!!!」
ブレイド「ああ!!! いつかな!!」
ゼウス「・・・・(いい奴らだったぜ・・・また・・・会えるといいな・・本当に・・・ベルクス・・・キャンディ・・お前達と同じ・・優しくて・・・眩しくて・・・目が痛かったよ・・・レオル・・・あいつが寄りによってゼブラを・・・・どうなっちまうんだとうな・・もしオレが・・・・そのゼブラの息子だと知ったら・・・・」
3人を風で運び、見送るマリーフ。少々息を荒げながらも口元をはにかませていた。
マリーフ「ふぅ、行ったようね。」
ムース「あなた・・本当に何者なのよ。ただの新人じゃなかったのね、超人じゃないかい。」
マリーフ「いいえ、私はまだ二十歳ですよ。まだまだ新人です。」
ムース「でも、もうダメそうね・・」
マリーフ「ええ・・短い間でしたが、お世話になりました。ただやっぱりここは私には合わないわ。窮屈だったしね。もっと面白い場所見つけよっと」
レオル達3人はその後別々に飛ばされて、世界のどこかのある大陸に
着陸するのであった。マリーフとムースはアールドの死を悼み黙祷した。その後マリーフは風を操り空を飛び、タワーの最上階の様子を観察しに行った。マリーフの視界に映し出されたものはハング、タール、ワイザーの無惨な死体であった。マリーフは驚愕するものの、3人の死体を持ち運び、墓を作り埋葬してムースと共に弔うのであった。その後北のロランジタでのキャリア試験は廃止とされ、入り口の店ごと閉店することとなった。マリーフはこの1件をキャリア試験本部に連絡を取り報告と致した。そして総官長キングダムのもとにそれが伝わる。
キングダム「・・ん~~のらりくらり~~また厄介な奴が現れおって・・・」
一方、マリーフの天気を操る攻撃で少々ダメージを受けたシャープとピエトロ・・
ピエトロ「厄介な敵がいるもんだねぇ・・・びっくりしたよ。」
シャープ「天候を操るキャリアか。姿も空気と同化できるみたいだな。相当手強いぞ、あいつ。」
ピエトロ「ンフフフ、いいじゃないか。その方が面白いし・・・あの子もボクの標的に決まり・・・・欲しいなぁ・・ペロッ。でもあの3人も・・」
シャープ「ああ・・・・だがオレの目的は宝石集めだからね、まあのんびりと集めるとするよ・・」
ピエトロ「・・そうかい、頑張って。ボクもこれからじっくりと・・・キャリア使
いを狩るとしよう・・・・ペロッ・・」
世界のとある場所・・ゼブラ筆頭の極悪集団「帝」では・・・・
ゼブラ「時代は変わりつつあるようだ・・・だが、どんな世になろうとも、力こそが全てだ。力さえあれば金も権力も地位も何もかも手に入っちまうからな・・そう思うだろルナ?」
ルナ「ええ、そうね。私達は時代を変える・・・いつか世界を真っ赤に染める。」
ゼン「・・・新しい時代の卵が育ちつつあるようだ・・・」
ハルク「・・・・」
マンドラ「ヒヒヒヒハハハハ、面白れぇ。」
ゼブラ「まあじっくり待とうではないか。時が来るまで・・・」
また、とある場所では・・・・・
大神殿の屋根に白い小人の妖精を周りに引きつけながら座る1人の男・・・・時の支配者シーメンス」
シーメンス「因果は狂わない。この星に、生命が宿っている限りは。10年・・いや、もっと近くの未来で、歴史は大きく響めくだろう。ボクも・・・・時の流れに逆らってみるべきなのだろうか・・・」
各々目標、或いは生き甲斐のために日々腕を磨いていく。レオル、ブレイド、ゼウスはひたすらキャリアの開花の修行に励むのであった。
時間は止まらない。失った時間は2度と返っては来ない。時間は大きなうねりとなって流れていく。キャリアの集うこのご時世では、常に力が必要となっていくであろう。幾多の災難、困難、逆境を乗り越えなければならない。或いは誰かのために、愛する者のために、人は戦い続けなくてはならない・・・・
時は流れに流れ、舞台は6年後へと進み行くのであった。 To Be Continued




