#26 強奪
26話目になります。シャープとピエトロのキャリアが明らかに!
そしてレオル達の前に立ちふさがる・・・・
ピエトロはその技を出すと見る見るうちにハングの体力を奪い取っていき、さらにハングの身に纏う特殊な気も腕から吸収していく。ピエトロは唇付近を唾液で過剰に浸してこの上ない快感を味わうのであった。ヒステリックな声を上げながら激昂で胸の動悸と息遣いが荒くなっている。ハングはその間、身体全体が一気に脱力していき甚だしい虚無感を味わっていた。血の気が引き、やがて意識が朦朧としていく。
タール「ハングさん!!!」
シャープ「・・これは凄い。ハングのキャリアが奪われていくのが手に取るように分かる・・・それと・・・お前は邪魔だな。」
タール「グファァ!!・・・アッ・・・ハッ・・・」
シャープは視界に捉えたタールを目障りになったのか突如胸部を突き刺して致命傷を与える。付着した血痕を舌で舐め始めた。
シャープ「・・うん、まあまあの味だ。」
タール「ア・・・・みん・・・・・な・・」
タールはワイザーやハングの姿を見ながら、力を失っていき、涙ぐんで息絶えた。
シャープ「・・あーもう死んじゃった。まあ、これも運命だったのさ。来世を楽しむんだな・・・・さて、ジュエルを頂くとしようか。」
ピエトロ「アー、アー、最高だ・・・最高だよ!!! この感触・・・溜まらないよ。アハハハハハハハアハハハアハハハハ!!!・・・・」
シャープ「成功したみたいだねピエトロ。」
ピエトロ「ああ。これでキャリアファカルティーはもうボクのものさ。楽しみだよ、これからが・・・・そうそう、はいこれ。君が探してたダイヤモンドジュエル」
シャープ「む。確かに。」
ピエトロは意識を半ば失いかけているハングの首飾りである宝石をシャープに譲渡した。今まで機械のような言動を続けてきたシャープであったが、それを入手した瞬間に子供のように目を輝かせて口元に大きな笑みを浮かべた。
ピエトロ「でもボクにはわからないなぁ、そんな石ころが秘宝物だなんて。」
シャープ「・・まあ残り少ないからな。何が起きるのか・・・それはオレが確かめるからいいさ。じっくりと。」
すると脱力して大量発汗し、出血したハングが必死に2人を呼び止めようとする。
ハング「・・なんなんだ・・・貴様らは!! ゴハッ・・・目的は・・・・帝の使いか・・・」
シャープ「ん、まだ息があるのか。さすが伊達に長生きしてないね。どうする? 殺る?」
ピエトロ「いや、いいよ。死なない程度に痛めつけたから。眠れば回復するだろうねぇ、だけど・・・・もうキャリアを使えないんじゃどうしようもんないじゃん、永遠の絶望と虚無感を与えてやるのさ。フフフフフ。」
シャープ「んん、いつか復讐してきそうもするけどな・・」
ピエトロ「そしたらその時殺せばいいのさぁ、まあどちらにせよボクには勝てないからねぇ、返り討ちさ。フフフ。」
シャープ「だってよじいさん。残り少ない人生せいぜい謳歌するといい・・・ちなみにオレ達は帝でもないんだな。ただの趣味さ。まあ・・ゼブラとは知り合いだけどね。」
ハング「・・そうか・・・・・・・ならば・・・殺せ。部下達に詫びる顔もないわい・・・・殺せ。」
シャープ「何だ・・・死にたがり屋さんか、とっくにフリーズは解除してるから、好きにすればいい。」
ピエトロ「闘いを挑んできたのなら、遠慮なく仕留めて上げるよ・・ペロッ・・でも、何もできないだろ? 面倒だし・・アンタのキャリアはボクが大事に使わせてもらうよ。」
ハング「ゴハッ・・・・・これまでか・・・無念じゃ・・・・・!!!!」
ガキッ・・・
ピエトロ&シャープ「!!?」
ハングは突然自分の咽喉部を指で突き刺して自ら命を絶った。周りに大量の血が飛び交い、シャープとピエトロは返り血を浴びる。そしてその部屋内にはワイザー、タール、ハングの合計3体の死体が転がった。豪壮な部屋は無惨に赤い血の海に染まり尽されてしまうのであった。
ピエトロ「なんだ、もったいないなぁー。」
シャープ「ま、そうしてもおかしくはないかもな・・・・よし、もう用は済んだ。オレは帰るとするかな・・・・あ!・・・・そう言えば下にガキが3人いたな。」
ピエトロ「フフフ、例の子達か。クリアしたんだねぇ、凄いじゃないか。」
シャープ「何だ・・・ピエトロも会ったことがあるのか。」
ピエトロ「ああ。彼らはいいよ・・・・素晴らしい。ちょっと見に行こうかな。」
シャープ「喧嘩売りにか? まあいいけど。」
ピエトロ「下だよね?」
シャープ「まだいれば・・・って言ってもフリーズは効力が切れても暫く麻痺感覚が継続するからいるはずだけど・・」
そしてピエトロとシャープは部屋のワープゾーンなど目もくれず、割れた窓から豪快に飛び出してタワーを降りていった。暗躍する2人、ついに牙をむく。シャープのキャリアは ‘コントローラー’ フリーズと唱え手を前に差し出せば、即座に相手も身動きを封じ込められる。一度に最大4人まで可能。また、意図的に自分の目と相手の目を合わせることでも相手を動けなくさせることができる。そしてイリュージョン。この技は相手に幻影を見せつけて巧みに相手を混乱させることができる。アールドが空気の刃でシャープを切断したように見えたのも全てイリュージョンという技の演出であったのだ。さらに人格操作という技で相手の身体に入り込むことで、相手を人格ごと乗っ取ることができる。ただし、その対象者のキャリアは使用できず、性格や仕草などはコピーすることができず、飽くまでもシャープ自身としてである。シャープはこの技でムースの身体に忍び込んでいたのだ。
ピエトロのキャリアは ‘エスパー’ 相手のキャリアファカルティーを奪い取ることができる。奪い方は、相手の体に直接触れて技・・・究極の獲物狩り(アルティメットハンター)を発動させることだ。奪われたものは術者が死ぬまでそのキャリアを発動させることができない。そして奪い取ったキャリアは自分のものとして自由に使用できる。だが、体の負担上、奪えるキャリアは1つまでが限界のはずだが、ピエトロはまずキャリアを無限に手に入れても耐久できる体・・・‘アトラス’というキャリアをある者から奪い取ったのだ。このキャリアは巨人級の体力、耐久力が得られ、人約100人分の超人的な体になれるというもの。即ち、これを手にいれたピエトロはほぼ無限にキャリアを奪い取れるということとなる。そして今回はハングをターゲットに、このロランジタの試験会場まで潜入した。もちろん最初からキャリア試験などには興味もない。1人でピタゴラタワーを攻略して最上階まで登り、ハングのいる部屋の天井からこっそり侵入していた。その途中、あの電体核生虫アハトーガと対峙していたが、無傷で完勝し、アハトーガが再生する前にいち早く上へと登ったのだ。そしてシャープと事前にこの計画を練り、シャープのコントローラーの能力で見事にハングのキャリア強奪を成功させた。シャープはダイヤモンドジュエルという宝石が欲しいがためにこの陰謀に賛同した。そう、この石には・・・・・・
なぜハングを狙ったのかであるが、ハングのキャリアがピエトロのよほど欲しているものだったという理由に他ならない。その情報は、ピエトロが他のキャリア使いから既に奪った1つであるキャリアから得たものであった。そしてピエトロはこれから先、様々な者達からキャリアファカルティーを盗みにかかるに違いないであろう。だからどれほどの数のキャリアファカルティーを今後所持していくかは脅威極まりないのだ。
ピエトロ「うん、いたいた。あれか・・・」
シャープ「ああ・・・」
ピエトロとシャープはレオル達の前に堂々と着地した。レオル達3人は再び恐怖の戦慄に襲われる。まだフリーズの効力の後遺症が残存していたため若干平常時よりも体の動きが鈍くなる。
ゼウス「!!・・・貴様ら・・・」
レオル「な!!・・戻って来やがった・・・ありえねぇ・・」
ブレイド「・・!!・・・コイツら・・・グルだったのかよ!!」
ピエトロ「・・やあ、また会ったねぇ・・・」
シャープ「危なかったなお前達。オレ達の今回の活動はこれにて無事終了となるわけだが、ここで生かすも殺すもオレ達次第だ・・・・そんなに戦闘態勢で・・・やるのか?」
レオル「・・クッ!!・・・何が目的なんだ!!」
ゼウス「用がねぇならさっさと消えろ!!・・・」
シャープ「だからさっきも言ったけどさぁ、これはただの・・・・」
ピエトロ「暇つぶしさ・・・ペロッ・・・君達、試験には受かったみたいだねぇ、良かったじゃないか、はやく開花させるんだ・・・・そしたら、、、ボクガ・・・・1人ずつ・・・・ペロッ・・・・狩って・・・・あげるから・・・・フフフフフフ・・・」
禍々しく、もはや何処を視界に捉えているのか分からぬほど狂い果てた眼で、気味悪く笑い始めるピエトロ。その周りには決して近づいてはならない・・・近づいたら一瞬で噛み殺されそうな・・・そんな所に近づけるはずもなく、本能的にかなら距離を取り始める3人。いつもはワクワクするはずのレオルでさえも冷や汗を流して怯えている。ピタゴラタワーに入る前のあの時と同じ感覚であった。怒涛のような不安に脅かされる3人。
ピエトロ「安心しなよ。別に今変な手出しはしないからさぁ・・・・でもいつかボクの相手をしてくれよ・・・それか・・・・盗んじゃうかも。」
シャープ「だそうだよ。命拾いしたな・・・・・ん?・・・おい、そこの剣持ってる奴・・お前どこかで見たことあるな・・・・」
ゼウス「・・!?・・何だと?・・オレは貴様の顔など今日生まれて初めて見たぜ・・」
シャープ「・・・そうか・・・・気のせいか・・・・・・・・いや・・・あ!・・思い出した。お前ゼウスだろ?」
レオルとブレイドは不思議そうな顔つきをし始める。ゼウスは急に心音が跳ね上がり焦燥感に駆られる。
ゼウス「・・何!!・・貴様・・なぜオレの名を知ってやがる・」
シャープ「ハハハ、やっぱりそうなのか。こりゃ面白い・・・・じゃあここで暴露しようか・・・」




