#2 冒険への始まり
2話目になります。まだまだ序章ですが頑張ります。
10歳の時にゼブラによってバルバ村を滅ぼされてしまい、生き残った少年レオルはひたすらに苦しみ、もがきながら、なんとか弱肉強食の自然界で生活をしていた。日が昇ってはまた沈み、昇っては沈んでいく。一度都会には出てみたものの、ど田舎で暮らしていたレオルにとっては、町の空気は性に合わなかったので再び人目の届かない山奥に戻り、修行を積みながら生活をしていた。そして2年の月日が流れ、レオルが12歳になった時のことであった。いつものように空腹になると、動物を狩猟するべく嗅覚に長けていたレオルは、動物の独特の匂いのする方へ体を自然と動かしていった。そして発見したのは、全身が硬毛で覆いつくされ頑丈な手足、強靭な歯を持つライオンのような動物であった。レオルはこいつを発見した途端に体が異常に興奮し、全身のホルモンが滝を流れる水のように活発に働きだした。喉が渇き唾を一口ごくんと飲むと、自然と唾液が口からこぼれ出すのであった。
レオル「うっまそーな奴みっけ。」
レオルは普段狩猟してる動物とは一味違うと感知し、軽く飛び跳ねて狩る準備運動をした。その猛獣はレオルを捕らえると、山全体が振動するほどの大きな咆哮を轟かせた。そしてレオル目がけて全速力で襲いかかってきた。だがレオルは自信に満ち溢れた表情で、さあ来いとその猛獣の攻撃を身構える。猛獣がレオルの首元を狙って噛みつこうとしたその時、レオルは一瞬で猛獣の背後に回り込み、高く飛び上がり上空から猛獣の後ろ首をひと蹴りした。猛獣は勢いよく吹っ飛び気絶する。レオルは「もう終わりか」と退屈そうな顔をして、気絶した猛獣に向かって歩いて行った。その時、レオルの背後から人影が忍び寄った。レオルはいち早くその気配を悟り、警戒して戦闘態勢に入った。
レオル「誰だ!! そこにいる奴は・・出てこい!!。」
レオルのその声を聞きすぐさま姿を現したのは、レオルより3つばかり年上な、耳にピアスをした金髪の女の子であった。背丈もレオルより少し高く、ミントという名であった。
ミント「今の見たわよ。あなた強いのね。」
レオル「んん? なんだ、人じゃないか。こんな山奥に野生動物以外を見たのは初めてだぜ。そんで何しに来たんだ? オレを狩りに来たのか? ゼブラの手下か?」
ミント「はあ? 何言ってるの。私はミント。ただの通りすがりだよ。といっても今日はこの山に危険な大型動物がいるみたいだから詮索に来たの。でも見たところ私が探していたその危険動物は、たった今あなたが倒してしまったみたいね。驚いたわ。たった一撃で仕留めてしまうんだもん。あなたすっごく強いのね。」
レオル「へぇー。この猛獣がそうなのか。てんで大したことはなかったな。」
レオルはミントへの警戒心を解き、戦闘態勢を崩し、両手を頭の後ろに組んで呑気にその話を聞いていた。
ミント「ねぇあなた、私の町に来ておくれよ。デゴル街っていうんだけど、町のはずれにとんでもない怪物が住み着いちゃったの。それで、1人じゃとても太刀打ちできそうにない。だからあなたのその力が必要だわ。どう? 一緒に来てくれないかしら?」
レオル「そうなのか! 何だか面白そうな話だな。」
ミント「でしょ? だからお願い。どうせこんな山奥にいてもつまらないでしょ。町はいいわよ。広くて大きくて便利なものもたくさんあるんだからさ。」
レオル「その怪物ってのは倒してみてぇんだけどさぁ・・・・うーん、でも行かない。」
ミントは絶対にレオルが付いてきてくれると信じていたためか、予想外の発言に唖然とした。すぐさまレオルを引っ張り出すよう促す。
ミント「えー? どうして! あなたの知らないような発見がいっぱいあるかもしれないのよ。もちろんタダとは言わないからさ。あなたの欲しいものを買ってあげるわよ。何でもいいからさ、ね?」
レオル「んなもんいらねぇよ。町は空気が悪いから嫌だ。1回行ったけど臭すぎて戻ってきた。オレの鼻はそこらへんの野獣より敏感なんだよ。音もうるさいし、人も多い。それに比べてここは静かでいいぜ。最初は大型動物はオレも倒せなかったけどさ。毎日木に登ったり、川を泳いだり、崖を這いつくばって進んだりしてたらいつの間にか強くなってて、そこの猛獣も一撃で倒せるようにはなったしな。でもまだまだ強い野獣はたくさんいるはずだぜ。・・・・それに、オレの欲しいものはもう二度と手に入らないしな・・」
レオルは思いつめた表情をして最後にそう呟いた。ミントはレオルの
そんな表情を見て、過去に何か悲惨な出来事があったに違いないと直感した。ミント自信、つらい過去を思い出さすようなことはしたくはなかったが、何が起きたのかという興味は持っていた。
ミント「そっか。過去に何かあったのね。この年で一人で山暮らしってのも訳がありそうだし・・・分かったよ。いきなりごめんね。当初の目的はもう無くなったから。それにここが気に入ってるみたいだしね。初対面の人に付いていこうなんてそんな気にはなれないわよね。怪物のことは私達で何とかして見せるわ。」
レオルは頭の後ろで組んでいた手をほどき、ミントを純真な瞳で見つめた。
ミント「じゃあ、さようなら。」
レオルはこの時葛藤していた。デンですら到底かなわなかったゼブラを倒すには、いつかここを離れて大きな旅に出て、もっともっと強くならなければいけないという思い。居心地のいいこの山奥で自然と囲まれて修行もしつつ時を過ごすということの素晴らしさ。ただずっと孤独であった。2年間人が訪れたことはなく、今日初めてこの山で人に出会った。もうミントにはこの先出会うことはないかもしれない。今、ここで決めなれればもう二度とは・・・。本能でももう答えは出ていた。もっといろんな冒険をして、いろんな人と出会って強くなってゼブラを討ち取りたい。体全身からは、かつてないほどの発汗量。心臓の鼓動がレオルの耳元まではっきりと速く高まっていくのが聞こえてきた。息を荒らし、声に上げるのができないくらい緊張し、興奮していた。そして、必死に去っていくミントに向かって声をあげてみた。
レオル「あ、あのさ! オ、オレ。やっぱ行っていいかな? 断っといて言うのもなんだけどさ。怪物ってのも興味あるし、それにもっと強くなりてぇ!!。こんなにドキドキすることって滅多にないと思うし・・ だから、一緒に行きてぇ!!」
レオルは真っ直ぐな瞳を大きく見開いて、ミントにそう言った。ミントは一瞬驚きの表情をしたが、レオルの純真無垢なその瞳を見ると、安堵した。冒険をしたい、強くなりたいという意志がものすごく感じられたからだ。そしてミントは口元から大きく微笑んでこう言い出す。
ミント「ええ。もちろん!!」
レオル「っしゃあ!!」
レオルは木々の隙間から雲一つない青空を見上げて、かつてない喜びを味わった。
ミント「絶対楽しいからね!!、えっとそういえば名前をまだ聞いてなかったね」
レオル「ああ、オレはレオルだ。よろしくなっ、ミント。」
こうしてレオルはミントの住むデゴル街へと、楽しげな会話をしながら向かった。山奥を離れ、新しい冒険が幕を開けるのであった。そしてこれが全ての始まりでもあったのだ。世にも不可思議な物語が始まっていく。