#13 仲悪しチーム
13話目になります。
ピタゴラタワーでは、ついにレオル達の順番が巡回してきた。
この瞬間を待ちわびてたためか、レオル達の顔に喜ばしさが生き生きと動く。アールドの誘導で、ついにピタゴラタワーの内部へと侵入するのであった。
入り口の扉は固く閉ざされていて中からは決して開けられない構造をしている。タワー1F、全体は不気味な赤いランプで僅かに灯っていて、湿気の多い環境であった。道中は狭く入り込んでいるが一本道のようだから、レオル達は迷うことなく前進していく。しばらく歩くと、学校の体育館より若干小さめな広さの空間に辿り着いた。
レオル「なんか気味悪いとこだよな。」
ブレイド「ホントな、このランプの色とか・・オレ苦手だな~こういうの。」
ゼウス「・・・」
パチン。
タワーのランプが突然消灯し、それに代わって白い照明が内部を灯す。レオル達のいる空間は明るさが増しよく周りが見渡せるようになった。そうなるや否や、奥へと続く通路から、突如3体の鉄仮面を被った骨だけのがいこつ兵が出現した。1体は剣を、1体は銃を、1体は鎌を武器にしている。レオル達3人は身構え、準備を整えた。
レオル「どうやら敵みてぇだな、、」
ブレイド「骨だけじゃん! なんかゲームに出てくる敵キャラみたい~」
ゼウス「おい貴様ら、オレの足を引っ張るようなことはするなよ。」
ブレイド「・・誰がするかよバーカ。」
レオル「来るぞ!!」
バンバンバン! がいこつ兵の1体が、銃を乱射してきた。と同時に残りの2体もレオル達を狙いに武器を振り回して特攻してきた。レオルとブレイドは弾丸を避けつつ攻め込んできたがいこつ兵にそれぞれ応対する。剣を振り回すがいこつ兵がレオルを襲うが、レオルは冷静にその太刀を見切り、思い切り胸部に殴りかかる。ドリューをも圧倒したその拳はがいこつ兵を粉砕させる。
レオル「ヘヘヘ、楽勝楽勝~」
ブレイドは鎌を持ったがいこつ兵を戦闘する。攻撃してくるところを逆手に取り鉄仮面を掴みとる。その掴んだ手を軸にがいこつ兵の胴体を飛び越え、両足で骨だけの生首を挟んだ。
ブレイド「・・さよーなら!!」
ゴキッ。首の骨が折れる音が鳴り、がいこつ兵はそのまま地面に倒れ込む。ブレイドの完勝。一方ゼウスは銃を持つがいこつ兵と対峙していた。背中の剣を抜き、乱射される弾丸を上手いこと交わして間合いを詰め込み、その勢いでがいこつ兵を一刀両断した。
ゼウス「けっ、くだらん。」
3人はあっという間にがいこつ兵を撃破した。3人は当初は自分以外の2人の力を信用していなかったのだが、これを機に改めて思い直すこととなる。
ゼウス「・・ほお。思ったよりできるみたいだな、少しは安心したぜ。利用価値はありそうだ。」
ブレイド「偉そうだな君は~まあその剣がただのお荷物じゃないってことは分かったからいいけど~~ それとレオルも口先だけじゃなかったんだな~」
レオル「へへ、お互い様だな。ちっとは見直したぜ2人とも! んじゃ、とっとと先に進もうぜ。」
こうしてレオル達は1Fをクリアし、2Fへと到着した。そこは1Fとはまるで別世界。火山内部のような地形で、気温は温度計が故障してしまうくらい高い。下にはブクブクと泡を立てている灼熱のマグマが見える。マグマの底から、上へと登るための足場が用意されているが、わずか片足分のスペースしかなく、足場と足場の間隔は1つにつき約2mの高さとなっている。レオル達はあまりの暑さに大量に発汗し、暑さで皮膚が焼け、痒みを伴うこととなる。
レオル「あっちーー!! うひゃー、すんげぇとこに来ちまったなぁ。」
ゼウス「・・ふん、全くこのタワーはどういう構造をしてやがる。」
ブレイド「溶けちまうよこんなとこ! てか、こんな狭いとこ登るんか~ うーん、20mはあるなー、2Fだけでこの高さね~ (外からそんな風に見えなかったんだけどな)」
レオル「どうやらこの狭いところを登っていかなきゃいけねぇみたいだな、・・・速くしないと焼け焦げちまう、オレが先頭で行くぜ!」
レオルは助走をつけて直径約15cmの足場を片足で着地し、そのまま跳躍して次の足場へ移る・・を繰り返して上へ上へと登って行く。レオルに続きブレイド、ゼウスも同様にして進んでいく。しかし突然、登っている最中に、下のマグマの泡立ちが激化し、突沸するかのように膨張し、体積が増加していく。マグマは波立ちながら上昇して、3人の足場へと地の底から向かう。
ゼウス「!!・・・・おい! マグマが迫ってきたぞ。」
ブレイド「マジかよ!~あり得ねぇって~」
レオル「何!!・・うわ、服が溶けてきた・・暑いしヤベぇし急ぐぞ!!」
レオルは足を加速させ一気に駆け上がり、この階の頂上の足場へとたどり着いた。狭小の足場は1人専用のため、レオルの後に続くブレイドとゼウスは遅れ気味となる。ブレイドが最後の足場を踏み込むと同時に、マグマの影響でその根元が浸食されたためか突如崩壊してしまう。
ブレイド「え!!! ヤバいな・・これ・・」
ゼウス「お、おい!・・・・」
ブレイドは体勢を崩し、足場と共にマグマへと落下していく。楽観的性格のブレイドもこれには恐怖と不安が稲妻のように一気に全身を通り抜けた。
レオル「掴まれ!! ブレイド!!!」
ブレイド「!!!」
先に安全な足場へと着いたレオルが必死に手を伸ばしてブレイドを助けようとする。ブレイドはその声を聞き、並外れた身体能力で跳び上がり、藁をもすがる思いでレオルの腕を片手でギリギリ掴むことができた。しかし次の足場を失ったゼウスはひどく狼狽した顔つきになる。
ブレイド「マズい! 黒髪君が!」
ゼウス「・・・こうなれば、一か八か!・・・ハーッッ!!!」
ゼウスは横の岩石で凸凹している壁に剣を刺し込み、それを反動軸にして、すぐさま刺した剣を器用に抜きながら上へと跳んだ。
ゼウス「・・(クソッ、ダメか・・・届かない!)」
ブレイド「オレの足に掴まれ!!」
ゼウス「!!・・・・ウオオオ!!!」
ゼウスは辛うじてブレイドの足首を命綱のように掴まり、万事休すかと思いきやマグマがゼウスの足元付近まで増してきた。3人はハシゴのような状態になっているため、片手で支えているレオルに負荷が全てかかる。レオルは奥歯を噛み締め、天地をも裂けよとばかりに絶叫して、ありったけの力を振り絞り2人を引き上げることに成功した。次の瞬間、レオル達の頂上の足場の直下までマグマが噴出し、足場を全て溶解させた後に、また昼寝でもするかのように静まり返り、徐々に沈下していった。まさに危機一髪のことであった。レオル達3人は呼吸が通常の倍激しくなっている。
レオル「ハァハァハァー・・・・無事だったか・・・おまぇら・・」
ブレイド「ハァハァ・・なんとかな・・助かったぜ。」
ゼウス「・・ったく・・誰かが足場を破壊しちまうからな・・・」
ブレイド「・・ありゃしょうがないっしょ~マグマのせいだ。」
ゼウス「ふん、貴様の体重の乗せ方にも問題があったな。」
ブレイド「な!・・」
ゼウス「貴様らのせいで危うくオレまでアウトだったんだ。ったく冗談じゃねぇぜ。」
ブレイド「んだと!!」
レオル「・・おい! もういいだろ! 無事だったんだからよ。そんなことよりとっとと先行くぜ。時間がもったいねぇかんな、ほら行くぞ。」
ゼウス「・・」
レオルがそう言うと、ゼウスはいきなり片手剣をレオルの喉元ギリギリまで突き刺した。ゼウスは冷酷な眼差しで射抜くようにレオルを見つめている。レオルの動きはピタッと停止する。
レオル「・・どういうつもりだてめぇ!」
ゼウス「この通りだが・・・ケッ、大体何で貴様が指揮ってやがる、リーダー気取りか? ああ!? 今すぐ喉元をえぐってやりたいところだが・・・まあ今回だけは特別に引いてやろう。」
レオルは奥歯を噛み締め目先の刃を掴みとりながら言う。
レオル「・・んの、お前の方がよっぽど偉そうじゃねぇかおい!! オレはとっととクリアしてキャリア手に入れてぇんだよ! いちいちこんな事に構ってらんねぇぜ・・それとも何だよ・・ホントにその剣でオレを殺れると思ってんのか? どうなんだ!!」
ゼウス「・・ああ、兎の喉を掻き切るように、簡単にな。」
レオル「にゃろう!! ふざけ」
ブレイド「おいやめろ!! こんな狭い場所でやるなよ、、てか仲間割れしてどうすんだ!・・・オレも悪かったけどよ・・拉致があかねぇーんだよ~ こんなことしてもよ。」
ブレイドが真面目に仲裁にかかる。2人は少々不意を突かれたように驚く。
レオル「・・あ、悪い・・てか、てめぇが喧嘩売ってきたんだろうが!」
ゼウスはさり気ない顔つきで剣を懐に収めながら言う。
ゼウス「ふん、まあよい。少しは寿命が延びたな・・」
レオル「な!!! こーのーやろー、少しは謝ったらどうなんだ!! なー!?」
ゼウス「・・オレは・・誰からの指図も受けん。」
レオル「なに!!!」
ブレイド「はー、もういいよレオル。コイツに何を言っても無駄だぜ~ こういう奴なんだよ、割り切ろう。言っても直んないね。」
ブレイドは溜息をつきながら、呆れた顔でそう言った。
レオル「・・くっ・・!!」
ゼウス「・・そうだ。オレはこういう奴だ。いちいち構うな・・(オレは・・誰も・・・)」




