#11 奇怪
11話目です。要注意人物の登場です。
レオルとブレイドはゼウスに顔ごと視線を傾ける。
レオル「ああ、そうだぜ! お前も7番なのか?」
ゼウス「・・・そうだ。(チッ、何故オレと同じような奴らがいやがる。)
ゼウスはムッとした顔つきで鼻の穴を膨らまし、目に角を立ててレオル達に眼を飛ばした。ブレイドは気分を害して顔を曇らせながら言葉を発する。
ブレイド「何なんだその目は! オレ達と一緒になって超イヤそうな面してよ。
大体何で3人チームなんだ! 何のつもりだ、全く・・・」
レオル「まあまあ2人共そうカリカリすんなっつの。初対面だし噛み合わねぇ所もあんのはしょーがねぇよ・・・んでお前、名前は?」
レオルは軽く汗を流しながら喧嘩が唐突しそうな場をなんとか抑えようとした。
レオルがさり気なくゼウスに問うと、ゼウスは少し間を置いて答える。
ゼウス「・・ケッ。貴様らに名乗る名などない! オレもチームなんか組みたくはねぇんだよ。良い子は黙ってミルクでも飲んで寝てろ。オレの邪魔になると判断できた場合、即座にこの剣で切り刻んでやるから覚悟しておくんだな。」
ゼウスは2人を見下し、まるで自分が天下一かのような口調でそう言った。鋭い目つきで無愛想な笑みを浮かべながら・・ レオルもこれには腹を立てて言い返す。
レオル「な!! この野郎!! お前もコイツと同類だなおい! そんなに自分の実力に自信があるなら今、目の前で見せてみろよ。どうせ期待外れな結果しか見られねぇ気がするけどな。」
ブレイド「同類とはなんだ同類とは!! こんな奴とオレを一緒にされちゃ困るね~ じゃあここで証明するぞ!」
ゼウス「上等だ。肉体は愚か骨までバラバラにしてやる。」
3人は三つ巴になり互いを睨み付け戦闘態勢に入っていく。とても嫌悪なムードでこれからチームとしての活動をする気配は皆無である。そしてこのまま喧嘩が始まろうかという時のことであった。
「おいてめぇ!! なんでチップ3枚も持ってやがる!!」
レオル達の反対側で相撲体型の大男が馬鹿でかい声を上げる。
???「何でって、君が遅いからだろ? 止めなよ・・そんな大声出すのさぁ、聞き苦しくて気分が悪くなる、それに周りに迷惑極まりないから。」
「黙れ!! オレはこんなところで終わるわけには行かねぇんだ!! 力ずくで奪ってやる!!」
相撲体型の男はチップを3枚持つ、銀髪で気味の悪い目をした長身の男にチップを強奪しようと殴りにかかるが、逆に首の付け根を強く蹴られ一撃でノックアウトししまう。会場はざわつきレオル達を含めてそこに注目し始める。
???「バカなのかい? こんなものも取れなかった落ちこぼれにこの先の試練が制覇できるわけないだろう? 命の無駄無駄、フフフフフ。」
両耳に3つずつ水色のイヤリングを連ならせたその男は不気味に微笑んでそう言った。周囲にいた者は自然と彼から距離を取り始める。そしてチップを獲得した者達は同じ番号を持つ者同士を探索してチームを作っていく。必死にチップを強奪しようと恐喝する者も中には現れたが、全て返り討ちにされ失敗に終わる。その様子を高台から眺めていたアールドとムースが合図を掛ける。すると2人のいる高台から階段が出現した。受験者たちは一斉に注目し始める。
アールド「10チームできたようだな、(例外はいるが) チップのある者だけがこの上に来い!」
ムース「30人だけでなく28人まで減りましたね、うち3人はまだ子供ですし、今回は頂上まで何人到達するのか楽しみですわ。」
アールド「チップの番号が1のチームから順番に上がるのだ。」
番号1のチームから次々と階段を上り奥へと進んでいく。その中には1人で番号3のチップを独占したあの不気味な男もいた。レオル、ブレイド、ゼウスの3人は番号7のチップ。
レオル「さあ行こうぜ。」
ブレイド「分かったよ~」
ゼウス「・・・チッ・・・」
番号10までの計28名が会場の奥へと進んでいった。チップを獲得できなかった他の受験者は、次のステージの参加資格は当然授与されない。実力の差を認め潔く帰宅する者もいれば、諦めきれず大声を上げる者もいた。
「オレにも参加させろ!!」
「冗談じゃないわよ! あたしはこの日のためにどれだけ・・」
「そうだそうだ! 金返せ! キャリア使いになりたいからここまで来たんだぞ!」
アールド「よし。チップを持つものはこれから私に付いてくるのだ! この先のタワーまで案内する・・・それとムース。下の騒がしい連中をどうにかしといてくれ・・・・では行くぞ!」
ムース「了解ですわ。」
こうして28名はアールドの後を追って、広い会場のさらに奥へと進んでいく。薄暗い通路を抜け、螺旋階段を上り再び地上に出ると、そこには複雑な構造建築の高い塔・・ピタゴラタワーが見えた。本当に人間の創造技術でこれほど変哲な建造物を設立できるのであろうか。可能な芸当なのであろうかと誰もが思うことであろう。だが全てというわけではなく、5階までがこの構造、それ以降はごく一般の単純な構造に変化している。レオルとブレイドは目を丸くして塔を上から下まで見渡した。
レオル「うっひょー、すっげー形してんな、城みてぇだぞ!」
ブレイド「おお!! どうなってんだろー~、こんなの初めて見るなぁ~」
ゼウス「・・・」
アールド「静粛に! ここが本当のキャリア試験会場のピタゴラタワーだ、今からチーム毎にこのタワーに入り頂上を目指してもらう。番号1のチームから順でいくことにする。制限時間は特に設けていない。安心しろ、ここにいる者達で争いをしようなんで真似はしないからな。全員に均等にチャンスが与えられている。ただ頂上まで登ればいいだけだ。だが、そう簡単に攻略はできない。何是このタワーには
色々と凝った仕掛けが満載だからな。死ぬかもしれんがこちら側で命の保証は一切しない。1度入って途中でリタイアなんでことは不可能だ。5階まで見事上がることができればエレベーターで最上階まで行けるようになっている。最上階には官長のハングという人がいるから、そこに見事辿り着けたのなら念願のキャリアが手に入れられる・・というよりキャリア予備軍になれるわけか、まあ補足をしておくと過去4回でこのタワーの最上階に行けた者は・・・・たったの8人だ。
繰り返し言うが、このタワーには出口が存在しないから途中棄権は不可能だ。入り口はマジックドアで中からは開けられない、最上階まで行くしか方法はない。つまり、最上階まで行けなかった場合、待ち受けるのは死ということで間違いないのさ。入ってみればすぐに理解できる。死にたくないものは今すぐ棄権することだ。どうだ、いないか?」
その説明を受け、レオルは恐怖など微塵もあるはずがなく、胸の底から込み上げてくる興奮をこらえようと拳を強く握り始めていた。喜悦の情で胸がいっぱいになり大声で叫びたくなる。ブレイドは絶対天辺まで行けるだろうと自信誇らしげな表情を浮かべ、耐えようにも耐えきれず笑みが口角に現れていた。一方ゼウスは依然と冷静を保ち、無表情にタワーをただ見つめていた。
「誰がここで引き下がるかよ」
「そんな連中はもうここにはいないだろうよ。」
「ガキまでいるんだぜ、負けられねぇよ。」
アールド「そうか・・そんな腰抜け共はここには居るはずもなかったか。
よし! 番号1のチームから早速中に入ってもらう。1時間後に番号2のチーム、また1時間後に3、4、5・・・10といくからな。」
「へいへい」
「腕がなるぜ。」
「登るだけか。温いな。」
番号1の3人はピタゴラタワーへと入っていく。レオル達は7番目なので退屈そうにして待ち始める。」
レオル「1、2、3、・・7時間も待つのかよ! そりゃねーぜ。」
ブレイド「アホか! 6時間だよ~君は算数もできないのかいレオル。」
レオル「な! そうか、でもオレ学校とか行ったことねぇしな、どっちにしても長すぎだ!」
ブレイド「そうだよな~~困ったなあ~~、あ、ねぇ、そこの黒髪の剣士君、君はどんなキャリア志望なの?」
ブレイドはふと寡黙なゼウスに尋ねる。ゼウスは視線を合わせると、大きく瞬きをして口を開いた。
ゼウス「・・オレは求めるのはただ1つ。誰にも劣らないスピードだ。疾風迅雷の速さで相手の目にも触れさせず剣で切り刻む。人知を凌駕し、誰よりも速くなってやるのさ、スピードこそが最強だ。」
ブレイド「へぇ~なるほどな~確かに目に見えない速さで剣を振るわれちゃ敵わないかもな~~んでもオレは水の力で制圧しちゃうけどなぁ~」
ゼウス「・・ふん、炎でも水でもオレが斬ってやるさ。」
レオル「へへ、オレの炎はそんなものも全部焼き尽くす予定だかんな、つーか、お前名乗れよ。」
ゼウス「・・貴様らに名乗る名はないと言っただろ。どうせ今日限りの付き合いだ・・・意味はない・・貴様らのことなど興味もない。オレに近づくな。」
ブレイド「うわー~ムカつく奴~~、(友達いないなこりゃ)、」
レオル「な!!・・・あのなお前なぁ。」
ゼウス「誰だ。」
レオル「ああ?・・・!!」
???「ねぇ、君たち、暇かい?」
突然レオル達の元に、銀髪の両耳に3つ水色のイヤリングを束ねた男、1人で3番のチップを3枚も取った男が全く心情を読まさせない顔つきで接近して話しかける。
???「まだ小さいねぇ・・・でもよくできた子達だ・・・ボク1人なんだよね・・・何だか寂しいよ・・・ペロッ・・・・遊び相手になってくれないかなぁ?
・・・ペロッ・・」
舌を舐めまわしながらその男は話しかける。視線を合わせたら一瞬で噛み殺してしまうほどの眼差し、その瞳は今にでも命乞いをする生命体を躊躇なく殺傷するようなほど怪しく不気味に炯々していた。




