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運命の石  作者: 四葦二鳥
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第三章

 あの後、帝国の侵攻を食い止めた和泉達は、ヒルデから賞賛を受け、そのまま城で一夜を明かした。

 その翌日、和泉達は帝国領へ向け旅立った。その目的は、帝国首都に潜入し、侵略をやめさせること。

帝国領内では和泉達の正体がばれるわけにはいかないため、商人を装い、荷馬車『ゴールデナー・アプフェル』を伴っている。この『ゴールデナー・アプフェル』は空間系の魔法が掛けられており、見た目に反して中は異常なほど広い。そこにMKを搭載しているほか、通信施設やCICを完備している。

 まさに、移動式指揮所と言えるモノだ。

 そして現在、無事に国境であるユッテネック山岳地帯を越え、帝国の前線基地が設けられているイグナルトドルフの中心地へたどり着いたところだ。

「何とかたどり着けたな」

「そのようね。私達の事もばれずに済んだし」

 和泉の意見に、永花が首肯する。

「じゃあ、宿屋を探そうよ」

 静穂がそう言うと、案内役兼戦術式担当として付いてきたエルフの首長、イレーヌが答える。

「私が案内します。どうぞこちらへ」

 そう言うと、イレーヌが先頭に立って移動を開始する。


「そう言えば、聞きたいことがあるんだけど」

 移動中、永花がイレーヌに問いかけた。

「はい、何でしょうか?」

「昨日の戦闘を経験して気づいたんだけど、帝国と半島のMKって、同じMKでもなんか違う気がするのよね」

「どのように違うと感じられたのでしょう?」

 穏やかな笑みで、イレーヌは聞き返した。

「具体的には、武装ね。私達のMKは光、水、風といった、魔力を攻撃手段として変換した武器を使っているけど、帝国はハルバードや実弾を発射する銃を武装としていて、魔力を動力源としか使用していない節が見受けられるの。あと、帝国のMKは量産機だということを差し引いても動きがぎこちなかったわ」

 たった一度の戦闘でこれだけ意見を述べられるのは、さすが秦野財閥のご令嬢と言うべきだろう。秦野財閥は軍事関連にも携わっており、永花自身もそのあたりのレクチャーを受けたことがあるのだ。

「それは、帝国はミスリルよりもアダマンタイトを多く産出するからです」

 イレーヌが、永花の問いに答え始めた。

「アダマンタイトは、ダイヤモンドよりも硬いのですが、魔力感応性や柔軟性はミスリルに劣ります。ですので、帝国のMKは必然的にアダマンタイトをメインに使用し、柔軟性が求められる関節部などにミスリルを使うという使われ方をしています。ですから、魔力を攻撃手段に使うにしてもあまり出力が出ないため、実体攻撃主体になってしまうのです」

 この時、永花はミスリルの産出量が少ないという言葉に反応した。

「もしかして、帝国は半島の豊富なミスリルを狙っているのかしら?」

「その可能性は十分考えられます。もっとも、確たる証拠がないので可能性の一つとしか言いようがありませんが……」

 戦争と無縁な生活を送っていた和泉と、幼い静穂が二人の話に付いて行けなくなりつつあったその時、和泉が何かに気付いた。

「ん? あれは……」


「や、やめてください!」

「誰が口答えしていいと言った!?」

「いいからさっさと歌えっつってんだよこの野郎!」

 和泉達が近づくと、そこには白い羽を持ったハルピュイアの少女が、帝国の兵士と思われる二人のトカゲ人間――リザードマンに襲われていた。

「おい、何やってんだお前ら!」

 そう叫び、和泉はリザードマン達に殴りかかろうとした。

「おっと」

「お返しだ!」

 しかし、和泉の攻撃は簡単にかわされ、逆にぶっ飛ばされてしまった。

「まったく、とんだバカがいたもんだな」

「後で基地に連れていくぞ。二度とバカをしないようにしごいてやる」

 高笑いをするリザードマン達に、新たな咎めの声が浴びせられた。

「あなた達、そんなに弱い者をいじめるのが好きなの?」

「兵士として、情けないよ」

 声の主は、永花と静穂だった。しかも二人とも、長めの棒きれを槍の様に持っていた。

「ふん、まだ身の程知らずがいたか」

「こいつらも、しごき決定だな」

 そう言葉を交わすと、リザードマン達は永花達に襲いかかった。

「やあ!」

 永花は相手の動きよりも早いスピードで懐に飛び込み、喉を一突きにし、ねじ伏せた。

「てい!」

 静穂は足払いをかけ、相手の後頭部を思いっきり鈍打した。

「この野郎……調子に乗りやがって……おい、早く立て」

永花にやられた方が先に起き上がり、相方を起こした。

「クソッ……覚えてやがれ!」

 捨て台詞を履くと、兵士二人はさっさと退散して言った。

「まったく、兵士があんなのでは、帝国軍の質も知れたものだわ。ほら、あんたもさっさと起きる」

 永花は、先程尻尾を巻いて逃げた兵士にぶっ飛ばされた和泉を立たせた。

「悪いな。それより、なんで二人とも、モラルが最低だけど一応プロの兵士相手に立ちまわれたんだ?」

 和泉が訊くと、さも当然の様に静穂が答えた。

「あたし達、たまに竹ヤリとかの訓練をやってたの。だからチンピラみたいな兵士なら勝てるんだよ」

 静穂が言っている竹ヤリの訓練とは、本土決戦に備えて日本政府が主導していた訓練の一つだろう。その訓練をまじめに受けていたのだったら、三下兵士程度は軽くあしらえて当然だ。

 そのような会話を交わしていると、先程まで襲われていたハルピュイアの少女が話しかけてきた。

「あの、助けていただいてありがとうございました。お礼がしたいので、よかったら私の家に来ていただけませんか? すぐ近くですから」


 数分歩き、目的地にたどり着いた。その家は裏路地にあり、かなりボロボロだった。ありていに言ってしまうと、スラム街にあるほったて小屋みたいな家だった。

「狭い家ですが、どうぞお上がり下さい」

 ハルピュイアの少女はそう言って和泉達を招き入れた。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はドリナ・セレンデス。白鳥ハルピュイアです」

 ドリナの自己紹介を聞いた和泉達は、カミラベルグを出発する際に、リーゼロッテのハルピュイアの首長、ヘラルド・オスナから告げられたことを思い出していた。

『イグナルトドルフの同族を、助けてくれ』

 半島のハルピュイアはタカのハルピュイアだ。だが、イグナルトドルフの白鳥ハルピュイアを同胞であると考えており、それ故にイグナルトドルフの情報にも精通していた。

 そのため、イグナルトドルフが帝国の占領を受けてからの惨状も知っていた。だが助けてやりたい気持ちは山々でも、下手をすれば国際問題になりかねず、半島の立場を危うくする可能性もあったため、思うように助けてやれなかったのだ。

 そのため、帝国の首都へ潜入する作戦が持ち上がった時、ヘラルドは藁にもすがる思いで和泉達に頼み込んできたのだ。

「私達も、あなた方ハルピュイアの苦痛は知っています。しかし、具体的にはよくわからないのです。詳しくお話ししていただけますか?」

 イレーヌが聖者の様なやさしい口調で、ドリナに尋ねた。

「帝国が侵略してきてから、兵士たちは様々なものを奪って行きました。最初は金品、次に住む場所、さらに女子供、そして現在は、歌を」

「歌?」

 ドリナの答えに、和泉は眼を丸くして訊き返した。

「はい。私達白鳥族のハルピュイアの歌は、聞いた者の心を癒す効果があります。それを求めて、帝国の兵士たちは私達に歌うことを強要しているのです」

「だから、あの兵隊さん達は歌えって言ってたんだね」

 静穂は合点がいった様子でつぶやいた。

「そういえば、ここには帝国の前線基地があるんだろう? そこの司令官は兵士のモラルに付いて何かやってないのか?」

 ほんの少しの希望を抱きつつ、和泉は質問してみた。しかしドリナは首を横に振り、こう言った。

「残念ですが、基地の司令官、ギル・ボガードは、そのことについて黙認しています。……いや、それどころか自ら関わっているようなのです。私も帝国軍が占領した時に一目見ましたが、暴虐無人な振る舞いが好きそうな方でした」

「おいおい、それはありえないだろ……軍として」

 和泉がドリナの発言に対してコメントすると、永花が冷めた口調で言い放った。

「残念だけど、これが戦争よ。戦争は、いろんなものを壊していく。人のモラルもね」

 自らの経験からか、永花の主張は妙に説得力があった。それと同時に重苦しい空気が全体を支配した。

 しばらくして、その空気を払拭するようにイレーヌが声を上げた。

「もう遅いですし、今日はもう休みましょう」


 その夜、誰もが眠りに付いている時間に、事件は起きた。

「な、何だ、今の音!?」

 突然街中に、爆音とも轟音ともとれる音が響いたのだ。飛び起きた和泉が外に出ると、驚くべき光景が広がっていた。

 空が、先日ユッテ半島を襲ってきた帝国の量産機『ハヤテ』に埋め尽くされていたのである。

「ここにいたのね、和泉」

 外の異常に気付いた永花が、和泉を探しにやってきた。

「イレーヌが『ゴールデナー・アプフェル』で待っているわ。急ぎましょう」

 そう言って和泉を連れていった。

 『ゴールデナー・アプフェル』には、静穂とドリナもいた。

「イレーヌ、これは一体?」

 和泉がイレーヌに状況を聞いた。

「先程、帝国軍の通信を傍受しました。どうやら、昼間の報復を行いたいようです」

 つまり、永花達にやられたことを逆恨みしたのだ。そのお粗末な理由を聞かされ、開いた口が塞がらなくなる一同。

 しかし、一人だけ違った反応を見せる人物がいた。

「す……すみません。私を助けていただいたために、こんな……」

 その人物とは、ドリナだった。どうやら、自分がこの騒動の原因だと思い込んでいるようだ。

「そんなこと、ないですよ」

「どう考えても、原因はあいつらだろ」

「だから、ドリナさんは気にしなくていいんだよ」

 イレーヌ、和泉、静穂の三人は、ドリナを慰めた。そして永花の放ったセリフで、和泉達の行動の方針が固められた。

「この騒動、チャンスと見て行動するわよ。このまま戦闘に突入して、基地を陥落させる。幸い深夜だし、今ならMKを出してもあまり目立たないはずだわ」


〈では、作戦を確認します。ここから帝国軍前線基地まで、三方向から攻め込みます。永花さんは右翼、静穂さんは左翼、和泉さんは中央を突破してください〉

『了解』

 通信機から告げられたイレーヌの声に返事をすると、和泉は『マーニ』を駆って自分に割り当てられた侵攻路を突き進んだ。

「じゃあ二人とも、後で指定ポイントにて」

〈わかっているわ。絶対に遅れないでよね〉

〈和泉、永花、気を付けてね〉

 この通信を交わし、三人はそれぞれの道へ向かって行った。

「さて、何も起こらずに進めればいいんだが……そういうわけにはいかないか」

 そう呟いた和泉の目の前には二機の『ハヤテ』が立ちふさがっており、マスケットをこちらに向けている。そして射程距離に入るや否や、いきなり発砲してきたのだ。

「警告もなしに発砲とは……。それだけ頭に血が上りやすいのか?」

 和泉は落ち着いてライトシールドを発生させ、敵の銃弾を防いだ。そしてそのままライトシールドを投げつけ、敵の『ハヤテ』を二機とも真っ二つに斬り裂いた。

 とりあえず何とか最初の危機を脱した和泉だったが、この戦闘で騒ぎを聞き付けた他の『ハヤテ』達が集まってきてしまった。

 和泉はこの状況に舌打ちをしたが、ここで愚痴っても何も変わらないので、『マーニ』の両手首に仕込まれたライトバルカンを連射しながら、集合ポイントへと急いだ。


 永花の方も、和泉と同じような状況だった。敵に見つかり、戦闘が避けられなくなっていたのだ。

「敵は縦列隊形で迫ってくる……。いい手だけど、『ニヨルド』には悪手ね」

 永花は不敵に微笑むと、『ニヨルド』の背中に装備された二連装水圧砲・グングニルを発射した。

 グングニルは貫通力に優れた武装である。そのため、永花は一発発射しただけなのにもかかわらず、後続の敵機までも一度に撃ち墜としてしまった。

 『ニヨルド』の性能に気付いた敵は、散開して永花を落とそうとする。しかしそのような対策をしても、今度は攻撃範囲の広いアクアレーザーをマントから発射されて墜とされてしまう。

 中には懐に飛び込もうとする敵もいた。それに対して永花は『ニヨルド』の右手に携えた棒の先端から三つ叉の水の刃を形成し、敵を一突きにした。

 この水でできた三叉槍は『アクアトライデント』といい、『ニヨルド』唯一の近接戦闘武器だ。

 永花はこの後も迫りくる敵を蹴散らしながら、集合場所へと向かった。


 一方静穂は、他の二人ほど苦労はせずに済んだ。と言うのも、『ヴェズルフェルニル』のバード形態で疾走していたからだ。

 バード形態における機動性は、絶対に量産機が追いつけるようなものではない。容易に振り切れてしまうのだ。

 そのため、静穂はショートライフルを二~三発撃つだけで、大して交戦せずに済んだ。


「こちら和泉、予定ポイントに到着した」

 和泉はポイントにたどり着くと、その旨を通信で報告した。

〈遅いよ、和泉〉

 そこには静穂の『ヴェズルフェルニル』が人型で待機していた。どうやら一番乗りだったらしい。

〈あら、私が一番最後だったみたいね〉

 続いて、永花も到着した。

〈全員、無事に集合できたようですね。では、手はず通りに〉

 イレーヌの指示で、三人は全砲門を基地の格納庫に向け、一斉発射した。

 攻撃を受けた格納庫は見る見るうちにボロボロになり、業火に包まれていく。そして、一機のMKが姿を現した。

 そのMKは『ハヤテ』に似ているが、首にエリが付いており、腰の左右に砲身らしきものを装備していた。

〈あぶり出しに成功したようですね。あれは指揮官用量産機『ハヤブサ』。『ハヤテ』より高性能な機体です〉

 イレーヌから説明を受けていると、『ハヤブサ』のパイロットにして前線基地の司令、ギル・ボガードが怒りに満ちた声を挙げた。

〈てめぇら、昼間に限らず夜までも……! 覚悟しろよ!!〉

〈弱い犬ほど、よく叫ぶものね〉

 永花がぼそりと言うと、ギルの怒りは頂点に達した。

〈ふざけやがって! 調子に乗んじゃねぇぞこの野郎!!〉

 するとギルは『ハヤブサ』が装備している腰の砲身を和泉達に向け、そこから赤い光を発射した。

 和泉達は交わすことが出来たが、実態武器が多いはずの帝国のMKが魔力系の攻撃を仕掛けてきたことに驚きを隠せずにいた。

〈ねぇ、魔力系の武器を使ってきてるんだけど!〉

 静穂が叫ぶようにそう尋ねた。

〈『ハヤブサ』は『ハヤテ』に比べてミスリルの使用率が高いんです。なので、先程の魔力砲塔・イッセンを使用することができるのです〉

 さらに、和泉達のピンチは続いた。

〈静穂さんが通ってきたルートから、大量の『ハヤテ』が接近中!〉

 イレーヌからの報告を受け、和泉は静穂に尋ねた。

「静穂……、お前、どういう突破をしてきたんだ?」

〈バード形態になって、全速力で飛んだんだけど……〉

 この瞬間、和泉は全てを悟った。静穂が突破に夢中になるあまり、敵をあまり撃墜していなかったこと。そのツケが回ってきて後ろから攻め込まれそうになっていること。そしてこの状況を打開するには一つしかないこと。

「ボスを秒殺……いや瞬殺か……」

 この呟きに、永花が反応した。

〈なら、『ニヨルド』にそれを可能にする武器があるのだけど……牽制を頼める?〉

「わかった」

 永花の提案に和泉が首肯すると、和泉はライトバルカンを敵に向かって連射し、挑発した。

〈調子に乗んなっつってんだろうが!〉

 ギルは和泉の挑発に乗せられ、ハルバードを抜き取り襲いかかろうとした。

〈そこ!〉

 その隙に敵の右翼へ回り込んでいた永花が、『ニヨルド』の腹部にある砲門・SCWを発射した。

 SCWとは『Super Critical Water』、つまり超臨界状態の水の事だ。超臨界状態になった水は信じられないほど強い酸化力を持つ。

 たとえアダマンタイト製の装甲だろうとも、一瞬でボロボロにする。

〈今よ、静穂!〉

〈了解!〉

 SCWが『ハヤブサ』に命中すると、永花はすぐに静穂へ合図を送った。それに応えた静穂は、『ヴェズルフェルニル』の足に風で出来たツメを形成し、それを使って鉄クズになった『ハヤブサ』を掴んではるか上空へ飛び立った。

 しばらくすると『ヴェズルフェルニル』が急降下してきて、その勢いで『ハヤブサ』を地面に叩きつけた。

 叩きつけられた『ハヤブサ』は原型をとどめないほどバラバラになった。

 和泉は暗くてよく見えなかったが、赤っぽい液体が流れているような気がした。


 その後、イグナルトドルフの前線基地は、司令官死亡という形で降伏。街は解放された。

 翌朝、和泉達は出発の支度を整えていた。

「では、皆さん忘れ物はありませんね?」

 イレーヌの確認に、三人はうなずいて答えた。

「待って下さい」

 家を出ようとする和泉達を、ドリナが止めた。

「まだ、お礼をしていないのですが……」

「いや、別に僕達はお礼をされるほどの事は……。それに、先を急がないと……」

「あなた方の正体も、目的も聞きました。このままギーゼロッテ帝国の首都・ルードアハーフェンへ向かうのでしょう? でしたら、これを」

 ドリナが差し出したのは、一つの小袋だった。中には、氷が入っていた。

「これは『不溶氷』。絶対に溶けることのない氷です。ここからルードアハーフェンに向かうには、岩砂漠地帯を抜けなければなりませんから、必ずお役に立つはずです」

 『砂漠』の二文字が聞こえると、永花はちょっと嫌そうな顔をした。

「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 和泉がお礼を言うと、そのまま次の街へ出発した。


 その頃、とある城ではイグナルトドルフの事件について討論が交わされていた。

「王子、お聞きになられましたか?」

「ああ。半島も、とうとう本気を出したということか」

 側近に向かって、王子と呼ばれた人物は微笑を浮かべながらそう返した。

「では、本国へ報告いたしますか?」

 その提案に、王子はしばらく黙って考えた。

「いや、その必要はない。興味が湧いた。だから彼らの力を試してみたいのだよ」

 王子の意図することを読み取った側近は、軽く頭を下げてこう告げた。

「はっ。では、すぐに準備に取り掛かります」


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