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運命の石  作者: 四葦二鳥
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エピローグ

「ん? ここは……」

 目を開けると、いつの間にか身体が寝かされていた。周囲を見渡すと、白を基調とした室内であることがわかる。そして、薬の臭いが感じ取れた。

 つまり、ここは病院だ。

「あ、起きた? もう、心配かけないでよ」

 横の方から、聞き慣れてはいるが、久しぶりに感じる声がした。

「なんだ、永和か」

 声の主は、和泉の幼なじみ、秦野 永和だった。

「なんだとは何よ。急に倒れて、何時間も寝てたくせに」

「何時間?」

 ベッド脇の机にある時計を確認してみると、確かに和泉がイデア界に召喚されてから三時間ほどしか経っていなかった。

「何か軽い貧血らしいって先生が言ってたわ。ちゃんと食べてるの? ちゃんと寝てるの?」

 すごい剣幕で詰め寄りながら、永和がまくしたてた。

 その勢いに和泉は、最初はビクついたが、永和の瞳を見つめるうちに、その真意がわかったような気がした。

「……そうか、心配かけたみたいだな。悪い」

「そうよ、すっごく心配したんだから。まあ、今日起きたんなら、明日にでも退院できるらしいからいいけど?」

「本当に悪かった。それと……これからは永和の事、大切にするから」

 この発言を耳にしてしまった永和は、顔が真っ赤になってしまった。

「ちょ、ちょ、何言ってんの? た、た、倒れたときに、頭でもぶつけて、本物のバカになったの?」

「ある人と、約束したんだよ。お前を大切にするって」

「い、意味わかんない!」

 永和にとって、和泉の告白はものすごく重大な意味を持っていた。しかし和泉にしてみれば、これと同等の告白が、あと一つあった。

「もう一つ永和に伝えなきゃならない事がある。僕、退院したら、戦争の事について調べてみようと思う」

 この宣言は、永和を落ちつかせるのに十分すぎた。なぜなら、和泉は今まで戦争には興味がなかったからだ。それが、いきなり人が変わったように興味を持ち始めたのだから、驚きで気恥かしさが吹っ飛んでしまった。

「あんたにしては、めずらしいわね」

「色々あったんだよ。一通り調べたら、本を書こうと思う。若い人にもとっつきやすいように、ファンタジー要素を取り入れてさ。それで、その本をいろんな人に読んでもらって、戦争について考えてほしいと思う」

「それ、面白そうね。いいわ、あたしも協力してあげる。タイトルは決まってるの?」

「タイトルか。そうだな――」

 しばらく考えると、ある物が思い浮かんだ。

 それは、和泉をあの世界へ導き、同時に狙われていた物。

「『運命の石』」


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