噂(仮)
頬を引っ叩いても、抓ってもらっても、夢から目覚めないこの悪夢は現実世界であると確信させる。
昨日、俺の後ろで自己紹介をした魔王はあの後、俺を憤慨させクラスの連中の目をドライアイのような状態にさせ、とにかくあの発言はクラスを唖然とさせた。
俺は鳴海のグループと連んでいるが、よく見ると魔王は昨日の自己紹介のせいか誰も近寄らなかった。
俺も俺で、モットーが『変な奴とは関わらない』というものだったので俺も気にかけなかった。
しかし、授業中暇だったのか、自己紹介が気になったのかなんなのかは自分でさえもわからないが、俺は先生の目を盗み自称魔王に話しかけていた。
「なあ、異世界ってどんなところだ?」
そう言うと自称魔王は目を輝かせて、
「知りたい??」
おっと、面白半分で聞いた俺がバカだったのか、相手が悪かったのかペラペラと話出した。
「異世界っていうのはこの世界とは違うの!」
んなことはわかってるよ文字通りってもんだ
それから自称魔王は歯止めが効かなくなったのか、永遠授業が終わるまで話していた。
授業終了時には先生がこちらを睨みつけていたので、先生も気づいていたんだろう
よくまあ、先生も見過ごしてくれたもんだ
変なやつだと思われたかもしれん
もう今度から関わるのやめよ
次の日の昼、俺は鳴海達と弁当を囲んで昼食をとっていた。
すると、鳴海が話出した。
「なあみのるん、ニナさんってどんな人だ?」
「なんで、俺が知ってなきゃならないんだよ」
「だって、みのるんニナさんの席のまえじゃん」
一体全体、誰が前の席のやつが後ろの席のやつのことを知ってるなんて法則を作ったんだろうか。
撤回して欲しい。
「ふーん、そうか……」
鳴海は俺に向けたダイヤモンドのような輝きの顔を一転させプラスティックの安い方に変えた。
「でも、昨日授業中随分と長く話してたじゃん」
うぅ…痛いところをつかれた。
「いや、あれはちょっとした面白半分で異世界のことについて聞いたんだよ」
「ふーん、それだけ?」
「それだけ」
鳴海は実に不満そうに聞いてくるが、俺も不満そうにその質問については拒否しといた。
昨日のことについて話すのもまた億劫である。
「でも、ニナさんって可愛いよなぁ〜」
すると、他の3人がこちらを向いて話に混ざってきた。
俺はそこまでの感情は抱いていないが……
「そうだな、まったくみのるんは羨ましいぜ」
「まったくだお」
「お、俺は別にす、好きってわけじゃなくて。友達になりたいだけだけどな」
あぁ〜初々しい
俺がせっかく他人の青春に浸っているのに、また鳴海が話出した。
食事中は黙ってろよ
「そいえば、ニナさんの噂があるんだけど聞きたいか?」
ん!興味がある!
いや、そう言う気持ちが芽生えたわけじゃない。
自称魔王様の噂と聞いて聞かない奴はいないだろう。
「まず、ニナさんの目はルビーのコンタクトを使ってる」
嘘だろ
「次に、ニナさんの家は超豪華」
そらはあるかもしれない
「ニナさんの髪はなぜ注意されないのか」
おお、気になる!
「ニナさんトイレの花子」
誰か嘘発見器持ってこい
「他に……」
「いや、もういい」
聞いてきたが、全部嘘のような気がする。
途中いい所までいったのはあったがやはり嘘に思える。
噂について考えていると鳴海が
「今度、目だけでもいいから聞いてみてくれないか?」
誰が?
「みのるんがだよ」
「俺もうあいつと関わりたくないんだけど」
「いいから聞け」
「えぇ……だってエロいとか言われたし」
「男には聞かなきゃいけないときがある」
いつのことだよ
やれやれ
俺だんだんとこのグループのパシリ的存在になってない?
仕方ないので、聞くことにした。