黎撃のインフィニティ 設定資料
黎撃のインフィニティ-設定資料-
[設定資料]
最初はほんの小さな "ロボット" だった。
それらはいつの間にか武器を取り、空を飛び――やがて創造主たる人間を殺めることが出来るほど驚異的な力を持つようになっていた。
人型をした機動兵器、アーマード・アウトフレーム(AOF)が開発されるようになってから十余年。世界は大きな転回を遂げていた。
価値観だとか思想とか、そんなものよりも『力』が重要視されるようになり、ビジネスとしての戦争が横行するようになってしまった世界。力があれば宗教さえも屈服させられ、誰かの考えを否定することなんて、トリガーを引けば一瞬でカタが付くような――。
世界は灼けた金属フレームのように大きく歪んでしまった。
戦闘が起こるのなんて日常茶飯事だ。街から一夜にして人が消えることなど珍しくない。大半のニュースは紛争に関するものが半分と、残った時間は経済と金の話で終わってしまうような世界だ。テレビだけでは追い付けない情報はネットの世界にも溢れかえるようになった。
そんな中、世界は2つの勢力に別たれていた。
統合国家統一連合機構――すなわち統一連合と、そしてASEEという組織である。
かつての冷戦にも似た空前の緊張状態は、誰もが短期終息するだろうと予測していた。圧倒的な経済力と資源、そして軍事力を併せ持つ統一連合と、小規模なASEEでは差がありすぎるからだ。しかし緊張の糸は、当初の予期に反して長期化の一途を辿っていた。
そしてある日、太平洋に浮かぶ島:第六施設島。
平和であるはずの島で起こった1つの爆発が、日常と非日常のドアを音立てて蹴破った。新型のAOFが強奪されたとき、世界は急加速し始める。
狂い始める世界で、果たして少年と少女に未来はあるのか。
運命は戦火の中で交錯し、幾度となく擦れ違う物語――――第1部『黎撃のインフィニティ』。
[組織]
★統一連合
今から6年前、国連が中心となって打ち出した「統合国家統一連合機構化構想」――世界を1つの国家として統合し、争いが無く恒久的に平和な世界を築く、という理念のために編成された超大国。世界に存在する大半の国家がこちらに所属しており、思想・資源・経済・文化・軍事等あらゆる面での相互理解と協定を結んでいる。その規模はASEEを遥かに上回る。
★ASEE
Association of Special Extended Entente. の略。
政治や思想、理念よりも経済活動へ重きを置いた組織。
占有面積としては小規模ながらAOFによる強固な戦力を保有しており、統一連合を苦戦させる。利益目的のためにはテロ行為など卑劣な行動も辞さない。地下に大規模な空間を保有しているらしいが、組織の全貌は不明。
6年前、ロンドンでの鉄道爆破テロ――通称<サウザンド・キル>において、テログループを率いた過去がある。
[キャラクター]
<ASEE>
★ミオ・ヒスィ
本編における主人公。
ASEEの中でも、通常の指揮系統から離れた独立機動隊 "特務" 第5班に所属する17歳の少年。
現時点における「世界最強の操縦主」として君臨しており、その素性は名前や姿形を含めて外部から隠匿されている。統一連合から奪取した最新鋭機<オルウェントクランツ>を駆り、各地を転戦することになる。
無口で無愛想な少年であるが、実は単に人見知りの激しい性格。かつて強力な薬物投与や身体強化を受けた痕があり、それ以来、自身の心に厚い壁を持つようになった。長めの前髪が特徴的。
★レゼア・レクラム
主人公とともに "特務第5班" に所属している女性。どのようなことにおいても要領がよく、器用で頭の回転も早い。
翠色をしたロングヘアと瞳が特徴で、ミオにとっては5つ歳の離れた姉のような存在。支援向けに派生した量産型特機<ヴィーア>を駆り、支援・近接戦闘の両方に長ける。元は北欧部隊・旧ドイツ支部に所属。
★シロガネ・アツキ(白鐘・亜月)
南アフリカでミオと行動をともにする、"特務第7班" に所属する女性。セミロングの黒髪で痩躯、ガンマンのように鋭利な雰囲気を漂わせる。
喜望峰にある生体研究所からデータをサンプリングしている途中、謎の男に襲撃され行方不明になっていた。搭乗機は中距離戦に特化した機体、<ハガネシラヌイ>。愛煙家。
★カミナギ・ミツキ(神梛木・美月)
"特務第7班" に所属する17歳 。黒髪ツインテールで活発的な印象を持つ女の子。
亜月と同じく音信不通となっていたが、ケープタウンに派遣されたミオと合流して行動を共にする。統一連合に対して強い怨嗟を抱く。搭乗機は射撃・狙撃戦に向けた<鏡月N式>。
<統一連合>
★レナ・アーウィン
本作品におけるもう1人の主人公。17歳。
「連合二強」と称されるほどの優れた戦績と撃墜数を持ち、その名前は統一連合の中で広く知られる。幼い頃に両親と弟を亡くした経験と、その時に得た無力感から力に対して強い執着を見せるが、「弱い人のために戦う」ことを心に決めた心優しい少女。
赤色のロングヘアが特徴で活動的な性格。第六施設島で受領した新型機<アクトラントクランツ>を駆り、新たな戦場を駆け抜ける。
★イアル・マークタレス
18歳になる年上の青年。銀の短髪が特徴でなぜか酒好き。
実弾砲戦型に特化した機体<エーラント>を駆り、レナやフィエリアとパーティを組むことになる。軽率な態度が多い印象が強いものの、稀にキレのある発言を繰り出す。北米基地に妹が居るらしいが…?
★フィエリア・エルダ・ベルツヘルム
黒髪ショートで凛とした性格の17歳。旧ドイツで出生したものの分家によって育てられ、厳しい指導を受けて育った過去を持つ。近接戦闘型の<エーラント>を駆り、レナやイアルと行動を共にする。義兄が統一連合に所属し、エリトリア沖の海戦では共同戦線を張ることになる。
★キョウノミヤ・シライ
高速機動艦<フィリテ・リエラ>の艦長を務める女性。栗毛のショートヘアと眼鏡、白衣の組み合わせが特徴的。第4世代AOFの開発者でもあり、自ら戦線に立つ。三十路って言うと怒る。珈琲好き。
★フェルミ
レナと並ぶ"連合2強"として名が知られる少女。明るいオレンジ色をしたショートヘアが特徴の17歳だが、たまに男の子と間違われる気質を併せ持つ。
<その他>
★フレネット・セレン
ミオが喜望峰で出会った24歳。無類の本好き。
かつて留学していたフランスの大学では哲学と心理学を専攻し、首席で卒業した。浅黒い肌と金のブロンドヘアが特徴。温厚質実とした性格。執筆した無意識に関する論文が注目されてしまったため、世界の端で隠遁生活を送っている。
少年と交わした『嘘』を承知しつつも、彼女は最後まで共に居ることを望んだ。
[機体]
★[ASEE]
☆<オルウェントクランツ>
統一連合によって開発された第4世代AOF。漆黒に彩られた装甲と鋭角的なフォルムを持ち、機動性に重点を置いて設計された。
第六施設島に潜入したミオ・ヒスィによって奪取され、以降はASEEの機体として戦場へ投入される。試作的にマルチウェポンズ・システムといわれる複合武装を持っているが、諸般の理由により改修時に取り外された経緯がある。
☆<オルウェントクランツ・アフターリファイン>
ケニア/ナイロビでの戦闘で中破した機体を、レゼア・レクラムが独自の設計をもとに改修した機体。全体として性能に向上が見られ、最強の機体として確固たる存在となる。
もともと衛星用の迎撃武器であった超電磁砲、"ヴァジュラ・ヴリトラ" を装備し、凶悪なほどの火力を従えた機体。南アフリカへ投入された部隊を『単機で全て殲滅する』という驚くべき戦績を上げた。
☆<ヴィーア>
ASEEで開発され、量産ラインに乗せられている第3世代機体。ずんぐりと丸みを帯びた機体だが、背部フライトユニットによって高い機動性を得ており、見事な空中戦を実現した。
汎用性が高いために独自のカスタムを組むことが可能で、レゼア・レクラムは変形機構によって砲撃支援/近接戦闘という2種類のパックを装備している。
★[統一連合]
☆<アクトラントクランツ>
統一連合によって開発された第4世代AOFの最新鋭機。火力・機動性・装甲あらゆる面で安定した性能を誇り、全体としては<オルウェントクランツ>よりも高いスペックを得ている。
深紅の装甲と背部の羽根が特徴的で、第二形態時には純白の翼と残像による近接戦闘を可能にしている。もともとレナ・アーウィンの搭乗を想定して設計されていたものの、偶然にも彼女が受領することとなった。
☆<エーラント>
統一連合で開発された第3世代AOF。ASEEの量産機<ヴィーア>よりも若干高い性能を持つが、扱いきれる操縦主が少ないために、一機あたりの戦闘力は同程度となっている。
汎用性が高いため、イアル・マークタレスは砲撃装備、同僚のフィエリアは近接装備というスタイルを得ている。それ以外にも局地戦用のバックパック(砂漠や極地エリアなど)が開発されており、次々と新しいものがロールアウトされているようだ。
[用語解説]
☆第二形態
世界でも<アクトラントクランツ>、そして<オルウェントクランツ>の2機にしか搭載されていないシステム。操縦主の意識を仮想の圧縮領域へ叩き込むことで、機体の性能をフルに引き出すことが可能。高速戦闘において必要不可欠な反射、神経速度、あるいは空間把握能力が格段に跳ね上がるため、より高度な戦闘が可能となる。ただし操縦主の知覚が「無意識の海」へと投げ出されるため気絶してしまい、また記憶障害など一部では欠陥が指摘されている。
☆相対戦力係数(CRP)
自軍の総戦力を1としたときにおける相手の戦力を比で表したもの。たとえば自軍の戦力を1として相手の戦力が1.6倍だった場合、相対戦力係数は1.6(=不利)となる。機体ごとのパラメータを数値的に分析して評価するため、あくまでも目安だという意見も。
こんにちわ。ご訪問ありがとうございました。
本作「黎撃のインフィニティ」は、前作「マイナスゼロのある世界」をさらにブラッシュアップし、改稿したものです。
また、「まえがき」「あとがき」を読むだけで、大雑把ではありますがストーリーが把握できるよう務めております。本編というか中身と一緒に楽しんでいただけると思います。
感想・レビュー・指摘など、一言だけでも構いませんので、いつでもお待ちしております。