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昼の光 7

 母子手帳、正式には母子健康手帳という。


 出産までの妊婦の健康状況やアドバイス・そして出産時の大切な事項、出生日や時間・出生した施設・病院の名称等、出産後の予防接種や成長状況等を記入する。

 とインターネットで調べてみると、そんな言葉が出てきた。

 母子手帳なるものがあることは知っていた。初めて見たけど。いままで必要となったことがなかったから。

「なんでこんなものがここにあるの…?」

 よくわからないけど、大事なもののはず。須佐くんのかわたしのかはわからないけど、まるで隠してあるかのように置いておくものじゃない、と思う。

 大切な書類とか、通帳とか、ハンコとか、リビングの引き出しの中にしまわれている。そういうところにあるならわかるけど。

 ソファーに座って、ローテーブルの上に置いた母子手帳をじっと見る。かわいいキャラクターのイラストが描かれている。

 開いてみると真っ白だった。

 おかしい。たしかこれって予防接種とか生まれたときの身長とか体重とかが書かれているはず。それくらいは知っている。保健体育か家庭科かどこかで習った気がするから。

 出生の情報がまるでなかった。

「どういうこと?」

 もしかして無くしてしまって再発行してもらったのだろうか。さっき調べたら紛失したら再発行してくれるって書いてあったし。

 それにしてもこんなところにしまわれているのが気になる。

 どうしてわたしはそんなところに置いたのか。

 よくわからなかった。


 お惣菜を買って、りっちゃんの家に戻った。

 時計は8時を回っていた。スポーツクラブを出たのが3時だった。いつの間にか時間が過ぎていたようだった。

 買ってきたものをリビングのテーブルの上に置いて、お風呂のスイッチをいれる。

 そっと鞄から手帳を取り出す。持ってきてしまった。

 真っ白な母子手帳。

 深い意味は無く、考えすぎなのだろうか。

 わからないことだらけで、どうしていいかわからない。

「かーこ、帰ってきている?」

 突然廊下から声が聞こえてきて、振り返る。廊下とリビングをつなぐドアが開いて、りっちゃんが入ってきた。

 玄関の開く音がしなかったような気がして。それとも気づかなかっただけなのか。

 慌てて手帳を鞄の中に入れた。

「なに、りっちゃん」

「わ。この部屋寒いじゃないか。暖房をいれていいんだよ」

「あ、うん。いま帰ってきたから」

「遅かったね。残業?」

「うん。ちょっとね」

「いまお風呂いれたから、先にご飯を食べよう」

「わかった。着替えてくるよ」

 鞄をソファーの上に置いて、りっちゃんはリビングを出ていった。

 りっちゃんに聞いてみようか。いやでもなにを?

 わたし自身がよくわかっていないのに聞いたって、りっちゃんも困るだけの気がする。

 まるで隠していたようなものを、りっちゃんに話しているとは考えにくい。

 やめよう。考えたってわからないもにはわからない。

「かーこ、今日の夕飯はなに?」

「うん、今日はね」

 ビニール袋の中からお惣菜のパックを取り出していった。

 今夜は眠れない、そんな気がした。

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