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昼の光 6

 日記があるかもしれない。

 そう思ったら、居ても立っても居られなくなって、一度家に戻ることにした。


 スポーツクラブからそのまま自宅に戻る。

 一週間ぶりの我が家は、しんとしていた。

 空気を入れかえるために窓を開ける。暖かい日差しとともに、気持ちの良い風が入り込んでくる。

 りっちゃんに了承を得て今日はデパ地下のお惣菜が夕飯のおかずになる予定だ。夕飯を準備する時間を使って、簡単な掃除をしてしまう。

 ひとがいないけどほこりはたまるもので、掃除機をかけるときれいになった。

 掃除機を片付けながら、日記の内容を思い出す。

 お父さんたちが事故にあったあと、走り書きで手続きやお葬式の手配について書かれていた。

『かーこは、強かったよ』

 みんなの前では泣かなかったそうだ。りっちゃんの前ではたくさん泣いていたけど。

 優しいりっちゃんの家族に支えられて、しばらくりっちゃんの家でお世話になっていたそうだ。看護師になるために、大学を受け直すまで。

 そのころ、家を手放すことにした、と。

 ひとりで住むには広すぎるし、なにより思い出が多すぎてつらい、と。

 どんな気持ちで家を手放したのだろう。想像もできない。

 りっちゃんの家に行って気づいたけど、この須佐くんとの家には、結婚してからの写真しかなかった。

 全部処分したのかと思ったら、りっちゃんの家にあったのだ。

 まるでそれまでの思い出を捨てるかのように。

 新しい人生を歩むかのように。

 看護師を目指して勉強していたときは、講義内容についてメモされていた。結婚してからの日記はりっちゃんの家にはなかった。

 書いていないのかもしれない。でも。

 わたしの行動をわたしが読む。

 きっと大きくは変わっていないはず。

 りっちゃんの家では机の下にあった。この家で、机といえば。

 リビンクのテレビの横に置かれた簡易的なパソコン机。置かれているノートパソコンは、わたしは使ったことが無くて、そのままになっている。

 インターネットは須佐くんから借りているタブレットがあるし。

 壊したら嫌なので、掃除のときもあえて避けていた。

 折りたたみ式の椅子を壁側に移動して、机の下にもぐりこむ。プリンターの横にパソコン関係の本が数冊ある。

 その横に。

「あった…」

 りっちゃんの家で見つけたものと同じ形の手帳が何冊か見つかった。りっちゃんはわたしが大学生までプレゼントしていたという。働き始めてからも同じ手帳を使っていたようだった。

 一冊開いてみると、月のスケジュールには、びっしり時間が書かれていた。

「あ…」

 たしか看護師として働いていたはず。その勤務スケジュールかもしれない。よく見てみると、時間は3パターンに分かれていた。

 日記のページは何も書かれていなかった。忙しくてそれどころじゃなかったのかもしれない。

「あれ?」

 手帳と手帳の間、手帳よりも一回り小さくて、薄い冊子があること気がついた。

「なんだろう?」

 背表紙に手をかける。ぎゅっと指先に力を込めて、引き抜く。


 小さな冊子の表紙には、母子手帳、と書かれていた。

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