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「こんな魔法にかかっていなければ、絶対にこんな屈辱を味わうことはなかった……」
私がクリフの魔力を浄化し終えて、少ししてから彼は口を開いた。
そりゃそうだ。魔族が人間に黙ったまま浄化されるなんてことはありえない。彼らのプライドが許さないもんね。舌を食いちぎって死ぬのを選ぶと思う。……が、クリフはもう私の言いなり。そんなことできない。
私はバタンとその場に仰向けに倒れて、一息ついた。
はぁ~~~、今日は疲れた~~~。
「あの二人は? ボスのお前を置いて先に寝てるなんて薄情な奴だな」
「私、ボスじゃないよ」
私は天井を見つめながら答える。私の言葉に怪訝そうにクリフは返答する。
「……仲間だよな?」
「仲間、なのかな? ただ勝手についてきてるの。頼りにならないスネークマンと王子に勝手に付けられたオプション」
瓦礫にもたれて気持ちよさそうに眠っているレイとミミの方へと視線を向けた。……この依頼を終えれば、もう関係はなくなる。今だけの付き合い。
「ねぇ、いくつか聞いてもいい?」
「……俺に拒否権なんてないだろ」
「そうだったね」
私は思わず笑ってしまった。再び、私は天井へと視線を戻す。隣で膝を立てて座っているクリフに「魔王との関係は?」と聞いた。クリフは少し間を置いて、答えた。
「俺の祖母が、魔王の叔母の祖父ののはとこにあたるんだ」
「………………遠くね?」
私は思わず眉をひそめながら、その場に起き上がってクリフと目を合わした。
それ、親族っていうか遠縁じゃない?
クリフは私から目を逸らして、「うるせえよ」とばつの悪そうな顔を浮かべた。
「……まぁ、いっか。……聖女に浄化されたって魔王に知られちゃったら、どうなるの?」
「は? お前聖女なの?」
クリフは目を丸くして固まる。ラベンダー色の綺麗な瞳がよく見える。
あ、そうだった。私が聖女だってこと伝えそびれていた。てへ。
「うん、一応」
「……マジ? 大声出していい? 暴れていい?」
「ダメ。二人が起きちゃう」
私がそう言うと、代わりにクリフはガクッと肩を落として、長く盛大なため息を吐いた。
……わぁ、肺活量すご~い。
呑気にクリフを見ながら、彼の言葉を待った。片手で頭を抱えながら、クリフは再び私へと視線を向けた。
「通りであの並外れた強さか……」
「強いでしょ~私」
「しばくぞ」
ニコニコしている私にクリフは低音で言い放った。
そんな怖い顔しなくても、私はクリフを殺さないんだから、もっと喜んでほしいよ。




