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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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7

「あれは食用の小鳥だ」


 食用……!?

 私は王子の口から出た言葉に思わず顔を顰めて、口を開いてしまう。

 王族の世界は残酷って聞くけど、小鳥まで被害が遭ったとは……。


「というのも嘘だが」


 嘘なんだ!!

 私は心の中で大きな声を出してしまう。声に出さないだけで、表情には反応が出てしまっていると思う。

 王子は少し目を見開いて、興味深そうに私を見る。

 

「戦場で輝く『優しくない聖女』はもっと冷徹な女だと思っていたが……、なんというか、子どもだな」


 急な悪口!?

 トゲトゲ言葉が出てくるなんて全く心構えしていなかった。そういことは事前通告が必要ですよ、王子!

 私は頬を膨らませながら不服そうに「これでも二十二歳です」と言う。王子の瞳が更に大きくなるのが分かった。


「……驚いた、俺より年上か」


 え、私って王子よりも年上なの!? 

 私も驚いた、だよ! 

 

「あのぉ、ご年齢を聞いても?」

「十九だ」

 

 ティーンエージャーなの……。

 そっか、王子、私よりも三歳も年下なんだ。落ち着いた風格のおかげで十代には到底見えない。

 突如王宮に連行にされて、年下王子に「子どもっぽい」と言われて、もう心はへとへとだよ。

 顔から活力をなくし、肩をしゅんと落としたまま私は口を開いた。


「それで、どうして私は今日こんな場所に呼ばれたんでしょう」


 思わず、王宮のことを「こんな場所」って言っちゃったよ。……まぁ、私より年下の王子はきっと心も広いはず。年上を敬ってください。

 王子は私の様子を見てフッと口元を緩めた。

 …………あれ? 今、笑われた?


「父の頼みをいつも断っているそうだな」


 やっぱりそのことか。

 私は「はい」と気まずそうに答える。こういう時は悪いって思っていなくても、申し訳なさそうな表情をしておくのがポイントだよ。……王子にはこの技が全く効きそうにないけど。


「なぜだ?」

「……なぜだ、とは」

「世界を救うことなど誰にもできることじゃない。名誉なことであり、誇りに思うはずだ」

「名誉や誇りは私には必要ないので」

 

 私はにっこりと笑みを浮かべる。それに反応して、王子も朗らかに笑顔を作った。

 まさか、ここで棘を含んだにっこり対決が開催されてしまうとは……。


「そんなに嫌か」

「はいっ!」

「……なら世界なんて救わなくたっていい」


 …………え? 救わなくていい?

 まさかの言葉に私は耳を疑う。こういうことはもう一度聞いた方がいい。


「あの、今、なんと?」

「世界なんて救わなくていい、と言ったんだ」


 聞き間違いじゃない!!

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